許されるミス、許されない作為
市内で初めて防災集団移転の土地造成(7区画)が終わった登米沢という地区で「強度不足」が発覚した。気仙沼市は法律の基準を満たすか検査して市民に引き渡したが、家を建てる業者が補強しないと何かあった時のための保険に入れないと主張したため、一部の市民は自費で地盤強化工事をせざるを得なかった。 議会でこの問題が取り上げられると、市は「調べる」と答弁。そのうち仕組みが分かってきた。地盤の強さが数字上で基準を上回っても、土を盛ってから1年未満など特殊な場合は、保険会社が個々に大丈夫かどうか判断する。不動産業界では当たり前らしいが、市民はそうそう家を新築しないので知らない。市にすると、戸建ての宅地を作る業務自体が平時はないから、こちらも知識なし。「強度不足」かと思ったら、市の勉強・説明が足りないだけだった。 こうして新しい宅地は少しずつできているけれど、物件はまだ足りない。百数十世帯が復興事業のために立ち退かなければならないため、市は「仮住まい」を新築する。プレハブではない。集合住宅とはいえ、かなり立派な建物だ。震災から何年もたてば民間アパートが空くだろうから、立ち退き対象者には自分で当座の住み家を探してもらい、家賃を移転補償として市が払う、はずだった。ところが3年8カ月たっても空きがない。 仮設住宅に移ればと思うが、「自宅を補修して住んでいた人に、あまり差のある暮らしはさせられない」との理由で新築する。費用は十数億円。復興事業が一段落すれば取り壊す物件もある。これは、予想・認識不足じゃないのか。
利用される被災地支援の実績
11月8日、離島の大島で自衛隊と米豪両軍による「災害訓練」があった。3国合同も東北でのオスプレイ使用も初。当日の現場では、ひっそり抗議する人もいた。けれど、気仙沼は小野寺五典・元防衛大臣の出身地。まして大島は震災後の孤立状態を米海兵隊に助けられた経緯がある。島民に話を聞くと「頼もしい」とオスプレイに好意的な人が多い。「落ちるなら自分の家でもいいんだよ」とまで言われると、反論できなかった。理由の真偽はともかく、展示が中止になった各務原市とは相当の温度差だ。 それにしても、何度も墜落している機材で災害時にけが人を運ぶ、という論理には無理がある。はっきり軍事訓練だと言われたら、大島の人たちは受け入れたのだろうか。復興を巡る市の力不足は情けないが、悪意がない分まだ救いがある。「災害訓練」と称して軍事訓練をやるのは、被災時の支援実績をたてにしているだけに、卑劣きわまりない。
現役新聞記者(宮城県・気仙沼在住) 私の居る事務所県住居は、1階の浸水のみですみましたが、3軒隣の警察署も、少し離れた小学校も解体です。節電といわずと、家の周辺は真っ暗。人がいないから…街灯もいらないわけで……これから、気仙沼で自分の視たまま感じたままをお届けします。