今年5月18日、関市のアートギャラリー是で開催された「おとなの音あそび」。出演者は、サックスやオカリナ、ピアノ、マリンバなど、さまざまな楽器をたしなんでいるおとなのみなさん。その中に、ピアノを弾く近藤さんの姿がありました。
「2年前の88歳の時に、妹に勧められてピアノを始めました。キーボードまで買って持ってくるもんだから断りきれなくて。うまく弾けるかわからないけど、聞いてください」。会場に近藤さんの弾く“バイエル80番”のしらべが心地よく響きました。
その妹さんとは、にらめっこ213号本欄で登場した大澤桂子さん。近藤さんの2歳下で、同じ市内に住んでいます。
「妹は昔から音楽に関わってきたけど、私はそれもないし、米寿を過ぎてからのことで、最初、いくらなんでも20年遅いと思ったんです」
88歳から始める初めてのピアノ。先生も快く受け入れてくださって、月に一度のピアノ教室通いが始まりました。楽譜は、息子さんが昔使っていた古いバイエルの楽譜を使うことに。「先生はなじみのある歌の方が楽しめるんじゃない?バイエルでいいんですかって。でも、基本をしっかりやりたかったから、私がこれをやりますって選んだのね。本当に何もできない全くの初心者です。右手と左手と違うからちっとも覚えられないし、なかなか手も思うように動かないけど、まあしょうがないわと思って」
先生は本当に優しくて大目にみてくださるから、少しずつやっていこうかなって思ったそう。そんな近藤さんですが、ピアノには以前から惹かれるものがあったとか。
「ピアノにすごく惹かれていました。だから、大正琴とかのお誘いがあっても話にはのらなかったですね。やっぱりピアノが一番いいかなと。今の住まいに越してきたのは1950年。あの頃は、道を歩いていても、あちこちの家から子どもさんが弾くピアノの音が聞こえていました。そういう時、私はよく立ち止まって聞いていたのね」。
今、楽しみながらも四苦八苦するピアノの練習。「頭が痛くても、たとえ5分でも毎日練習はするの。おかげさまでここまでできるようになりました」
今回の「おとなの音あそび」出演も、先生からやってみたら?という一押しが。皆の前で演奏することは、恥かしさもあるけれど、練習量も増え、上達する良い機会になりました。「今後?81番、82番と、続けてやっていきますよ」「私、忙しいの。やりたいことがいっぱいあって。旅立ちの準備もしなあかんし(笑)」。