vol.226 熱中人 番外編

 先日、Soul Station というトリオ演奏があった。ベース:吉木(from東京)、ピアノ:祖田(from 大阪)、テナーサックス:森田(from長野)。年に数回集まってのコンサートツアーで、今回は名古屋、飯田、岐阜でした。岐阜は武芸川のアートギャラリー是。リハーサルの前に用意したご飯をご一緒させてもらった。その時話題となったのが「自然農」について。ミュージシャンと「農」の話でこんなに盛り上がるとは!
農薬を使わないこと、草刈りのし方、草に対する考え方、トンボの役割、ヤゴの研究をしている方のものすごい観察力とデータ、などなど、「農」に関することで話は尽きない。中でもベーシスト・吉木さんお薦めのドキュメンタリー映画「キス・ザ・グラウンド」。ネットフリックスで観られるとのこと。しかし!!な、なんと私のPCはバージョンが古くて観られない。残念!悔しいので映画について調べてみることにしました。      (み)

画期的な作品「キス・ザ・グラウンド:大地が救う地球の未来」は、気候危機に対する実現可能な解決策を明かす。世界中の土壌を再生することにより、地球の気候を安定させ、生態系を取り戻し、豊富な食糧供給を生み出すことが可能になる。説得力のある画像、そしてアメリカ航空宇宙局とアメリカ海洋大気庁の記録映像を用いて、待機中の炭素を取りこむ土壌が、気候問題を解く一手となることを解説するドキュメンタリー。2020年 アメリカ。

キーワードは「にらめっこ」が今まで特集してきたこととほぼリンクしています。オフィシャルサイト始め、さまざまな意見や感想を参考に編集してみました。

地球環境再生に大事な4つの要素
農業で地球環境を再生するという目的を持った場合、大事な4つの要素がある。それは、①耕さない農業②土壌を覆う植物を年中植えておく③植物を単一の植物じゃなくて、多様な植物をひとつの田畑で育てる④家畜を活かした草食動物の放牧。それは、家畜も農業のパートとして活かすということ。
土地を耕し、化学肥料をまいて、農薬で害虫駆除をして、収穫。そんな農業が実は環境にも地球温暖化にも悪影響を及ぼしていることに警鐘を鳴らしています。4つの要素を実践ことは、して実際に結果を出して、1エーカーあたりの売り上げが、メジャーな農法よりも高いという結果が出ている。それは、単にビジネス的に成功しているだけじゃなくて、なぜこれがいいのか?というのは、地球の再生に必要だから。これが映画のテーマ。
映画では「今、あなたが30歳くらいなら、生きている間にこの問題を解決できる」って断言してた。ちょっと希望が持てますよね。

炭素って悪者じゃない
大気にあるから悪者になるという話。二酸化炭素って全て悪いからいけないっていうふうに思いがち。でも土壌にきちんと返すことができれば、炭素っていうのはすごく栄養価をもたらしてくれる。
工業型農業の生みの親はドイツのフリッツ・ハーバー。この人が窒素肥料の製法と殺虫剤を発明した。で、食料生産を促進したヒーローって感じですが、実は、その殺虫剤は化学兵器の開発に繋がって、第二次世界大戦で使われたと。戦争が終わると、アメリカの薬品会社がこのハーバーの毒を入手して、殺虫剤として全米の農家に売り出した。戦争では敵がいたけど、戦争が終わって敵がいなくなって、次は虫だ!って。で、殺虫剤がバーッと使われ始めて、工業型の農業が始まっていく…。あと、肥料も。農家だけの問題じゃないっていうのが、改めて分かります。

炭素を土壌に戻すというのは自然の流れ
炭素定着、炭素隔離はめちゃくちゃ大きいテーマ。大気中の二酸化炭素を、光合成を通して植物が取り入れる。炭素を炭素化合物として土壌に送る。土壌にいる微生物がそれらを使って、植物に対してはミネラルを返す…。あとは、植物から送られた炭素を土壌に定着させる。これが、大気中の炭素を土壌に定着させるという一連の自然が行っている流れ。土壌を健康に保つことってめちゃくちゃ大事です。

土壌は驚異的な潜在能力をもつ
フランスの農業大臣が2015年のパリ気候サミット(COP21)でこう言ったそうです。
「皆様に伝えたい。全ての農地と森の土壌は驚異的な潜在能力をもつ。気候変動に対して現実的な対策が取れる。排出されるのと同じ量の炭素を吸収できる。千分の4構想は実践可能な解決策だ。」*千分の4構想とは、フランスにある欧州最大の農業研究所(約100年間土壌を研究し続けるINRA)が立ち上げたもの。世界の土壌炭素を毎年0.4%ずつ増やすのが目的。0.4%は毎年人類が排出する炭素量と同じ。自然の流れを絶ってしまうことで、大きな変動をもたらしてしまうことを、肝に銘じておかなければならないですね。