vol.224 続・しょうがいをみつめる vol.6

自立するということ

“自立”という言葉の意味を考えたことがありますか。
辞書で調べてみると「自分以外のものの助けなしで、または支配を受けずに、自分の力で物事をやっていくこと」とあります。

かつて勤めていた特別支援学校には、障害による困難を改善・克服することを目的とした自立活動という授業があり、一人ひとりの状態に応じて、例えば階段の昇降の練習をしたり、コミュニケーションスキルを学んだりという学習がおこなわれていました。
わたし自身も、”自立”とは一人でできることを増やすことと考え、「身の回りのことが自分でできるように」とか「自分から気持ちを伝えられるように」など一人ひとりに目標を設定し、(自分で言うのも何なのですが)結構熱心に指導支援してきました。

小児科医で自身も脳性麻痺の障害をもつ東京大学先端科学技術研究センター教授の熊谷晋一郎先生はインタビューで自立についてこのように語っています。
少し長くなりますが、以下に一部抜粋して掲載します。


一般的に「自立」の反対語は「依存」だと勘違いされていますが、人間は物であったり人であったり、さまざまなものに依存しないと生きていけないんですよ。

ー中略ー

“障害者”というのは「依存先が限られてしまっている人たち」のこと。健常者は何にも頼らずに自立していて、障害者はいろいろなものに頼らないと生きていけない人だと勘違いされている。けれども真実は逆で、健常者はさまざまなものに依存できていて、障害者は限られたものにしか依存できていない。依存先を増やして、一つひとつへの依存度を浅くすると、何にも依存していないかのように錯覚できます。“健常者である”というのはまさにそういうことなのです。

実は膨大なものに依存しているのに、「私は何にも依存していない」と感じられる状態こそが“自立”といわれる状態なのだと思います。だから自立を目指すなら、むしろ依存先を増やさないといけない。

「TOKYO人権 第56号(平成24年11月27日発行)」
https://www.tokyo-jinken.or.jp/site/tokyojinken/tj-56-interview.html


みなさん、どのように思われましたか?
わたしはこのインタビューを読み、自立に対する見方が全く変わったんです。
「できることを増やさなければ、頑張らせ続けないと、自立できないんじゃないか」という無意識のプレッシャーから解放され、わたしが助けることもその人にとっての自立であり、わたしに依存してもらった後はほかに依存できる人やものを見つけていけばいいんだって、自分の、そして障害のある本人の今の姿をありのまま肯定できるようになった気がします。