私が主に取材した、ベトナム戦争や中越戦争(中国とベトナムの戦争)を省みながら、写真とともにお伝えしていきます。
中越戦争(中国とベトナムの戦争)
1979年に中国が大部隊を抱えて国境を超えて、ベトナムに派遣し、ベトナム侵略をはじめた。ベトナム戦争中も、色々取材して来たんですが、日本は“戦争をできる国”どころか、“する国”に変貌してしまいました。
アメリカのベトナム戦争は21年間続きました。取材したこの二つの戦争を教訓として、侵略戦争と抵抗戦争について考えます。さらに「戦争をする国」とした日本の危うさを考えます。
ジャーナリストは狙われる
私と一緒に取材をしていた赤旗の高野功記者が、殺された。戦争の現場ではジャーナリストは狙われます。いかに敵がひどいことをやっているか、リアルに撮影し報道しているから、相手にとっては「敵」なんですね。殺された人間の悔しさも含めて、戦争というのはあっちゃいけないんだと伝えようと思っています。
中越戦争・どうして中国がベトナムに入り込んだか
中国は文化大革命があって、ポル・ポトと非常に親しかった。ポル・ポト派自国民(カンボジアで)170万人も虐殺。特にインテリ、ポル・ポトのやり方に反抗しそうな学校の先生、宗教者、学生とか、知識のある人を片っ端から殺しました。ポル・ポトの恐怖政治です。そのポル・ポトが中国の文化大革命を真似たんです。文化大革命は毛沢東が引き起こしたんですが、1,000万人もの中国人が死んだと言われています。
1979年にベトナム軍がポル・ポトを追い詰めて国境まで追い出しプノンペンを解放しました。そんなの中国(当時は鄧小平)としては許せないと、ベトナムに懲罰を与える!と。それでこの中越戦争がおきたのです。
捕まった中国軍の兵隊を見るとみんな若い。ベトナム兵に聞くと、上官からの命令は「なるべく殺さないで手足を打て」と。そうすると担いで帰らなきゃならない。助けてくれーという兵士を置いていくわけにはいかないから。そうすることで戦力は失われる。帰ってからも手当を続けなければいけないし、社会福祉制度も整え補償もしていかないということもあり、中国の負担になるということで、狙いは手足なんです。どういう戦いを挑めば相手は怯むのか、よくわきまえていましたね。(これが現実・非人道的な戦争の現場)
ベトナム戦争史を振り返る
ベトナムは、100年余りもフランスの植民地でしたが、45年にベトナム民主共和国を建国。しかし列強(第2時世界大戦で勝った、米・英・ソ連・フランス・中国という5大国)はジュネーブ会議でベトナムを南北に分断しました。
日本の侵略はその頃から始まった。1940年です。フランス軍と戦わないで、ベトナムを奪え、という形で日本軍は動きます。ハノイもサイゴンも日本軍の支配下に入り日本軍はベトナムの農民から徹底的に米を取り上げる。ベトナムの農民は次々と餓死します。実に200万人も死んでいるんです。
そして、1945年にポツダム宣言を受けて、日本が負けた。しかし、ベトナムは日本兵を皆殺しにしなかった。その代わり鉄砲を置いて行け、と。そしてホーチミンはハノイで独立宣言をし、ベトナム民主化はこの時に誕生しました。
<ベトナム独立宣言>
“1940年の秋、日本軍がインドシナを侵略し、フランスは日本に国を明け渡しました。以来、我が民族はフランスと日本という二重の枷をかけられたのです。私たちは日増しに困窮しました。その結果、年初めにはクアンチから北の200万人が餓死しました。日本が連合国に降伏した時、私たち民族は、フランスからではなく日本からベトナム国を取り戻したのです。”
ベトナム独立宣言の中に、「日本から独立した」と書いてある。このことを知らない日本人がいっぱいいる。近現代史を教えない日本の教育。このことに我々はもっと関心を持たなきゃならない。
<ベトナム戦争、民衆の抵抗>
ところが1953年に当時アイゼンハワー政権の副大統領・ニクソンがベトナムのフランス軍基地を訪問して激励した。それは東西冷戦を見越した、共産主義を封じ込めるんだという理由から。しかし、フランス軍はベトミン軍、農民軍にやられ降伏します。南北に分けられたベトナムの南はアメリカのものとし、まず傀儡政権を作りアメリカの大使がゴジンジェムを大統領に任命したんです。大使が大統領任命するなんて、あっていいのかっていうはなしですが、傀儡政権とはそういうものです。
しかし、民衆の抵抗がすごかった。ベトナムの民衆のほとんどが仏教徒。ティク・クアン・ドクという位の高いお坊さんがサイゴンで弟子にガソリンをかけさせて、戦争に対する抗議で焼身自殺しました。1963年です。時のケネディ大統領は「これはまずいぞ、こんな民衆の抵抗があると、それをまたみんな支持している姿を見ると、アメリカのベトナム侵略は、間違っているんじゃないか」とつぶやき始めた。そうしたらもう、アメリカの軍産複合体が「ケネディーはけしからん!」と大騒ぎ。ベトナムに撃退されたら、軍事全て飛んじゃいますから、軍部系統の企業も反対する。そうして11月にケネディーは暗殺されます。その犯人も連行されていく途中で何者かに殺された。ですから真相は闇の中。わからないままケネディ暗殺事件は葬られた。非常に謎の多い事件です。
また、相模原米軍補給艦での戦車阻止闘争では、社会党・共産党・ベ平連、学生・労働者の50日間にわたる座り込みで、米軍は1台の戦車もベトナムに送ることができなかった。歴史に残る大闘争でした。
非人道的兵器
ボール爆弾(新聞ではクラスター爆弾)野球のボールくらいの大きさで、中にびっしり鋼鉄の玉が入っている。ボールが爆発すると、これが四方八方に飛ぶ。だから近くにいる人間は蜂の巣のように穴が開けられるし、遠くにいても一発くらい当たるという爆弾です。イスラエルもロシアも使っています。ビルを壊すことはできない小さい爆弾ですが、人間を殺すためだけの対人殺傷爆弾です。
さらにアメリカは化学戦争をやった。軍上層部とメーカーは劇毒ダイオキシンの混入を知りつつ、枯葉作戦を遂行した。1961年から71年まで南ベトナムに対して10年間散布した。ジャングルを全部枯らしちゃえば、隠れる場所がなくなるからですね。
枯れ葉剤の影響はベトちゃん&ドクちゃんだけじゃなくて、いろんな症状を持った子がいっぱい生まれています。水頭症の子も多いですし、眼球症の子も多いです。
ベトナム戦争に行った米軍部隊、集団的自衛権の発動で韓国軍の兵士もベトナム最前線に送られた。彼らも、枯葉剤を浴びて帰ってきてガンになるなどの深刻な影響が出ています。
アメリカ政府はベトナムに従軍した延べ280万人のアメリカ兵全員が枯葉剤を浴びたとみなすと決定。疫学調査で、20種類近い疾病やがんを枯葉剤による疾病と認め、補償対象にしています。ただし、ベトナム兵がアメリカ兵と同じ基準でいいから、補償してくれという訴えを連邦地裁に起こすんですが、連邦最高裁は2009年に不受理。同盟国である韓国の兵隊からの訴えも、不受理です。日本はアメリカの傘下に入って、集団的安保を実現しようとしていますが、どんなことが起きてもアメリカは補償しません。
ちょっと突然話が飛びますけど、ウクライナの大虐殺が起きたキーウ。小学校や病院が常にターゲットになってミサイルが落とされています。あれは誤爆じゃなく意図的に徹底的に狙っています。ベトナム戦争でもそうですが、北爆で最初に狙われたのが病院です。病院と学校を集中的に狙う。どうしてか、恨みを持たないように殺しちゃえ!ということ。子どもたちはいずれ10年か20年経つと兵隊になるから。そういう発想です。ガザ地区でイスラエルがやっているのも同じ。子どもであろうが、病人であろうが、皆殺しです。必ず誤爆なんて言いますが大嘘です。
過去10年の日米共同訓練の回数
2013年24回 2022年 108回。「先制攻撃こそ圧倒的に有利」「敵基地攻撃能力をもたないといかん」と安倍さん。それを固めたのが岸田さん。問題はミサイルやら、次期戦闘機やら、すべてが閣議決定で決めたこと。全部憲法違反です。そんなことを我々は許しちゃいけない。
民間空港を軍事利用するということ。民間機が離着陸するところで自衛隊の戦闘機が離発着する。空港だけじゃなく港湾も軍艦が入れるようにされています。最近の話しでは、米軍が「日本の統合軍令部を自衛隊に置く」ともう決めたんですね。つい先月です。アメリカ軍の配下に日本の自衛隊が入ると、ということは、ベトナム戦争で韓国軍が背負ったような集団的自衛権があてにされ、どこへでも派遣される。アメリカの戦争では日本兵を使うということが起きるわけです。
戦争国家づくりを急ぐ日本政府
先日行われた日米安全保障協議委員会(2プラス2)は「日本をアメリカの軍事戦略に一体化させる」ことで合意した。米軍は統合軍司令部を日本に起き、自衛隊の統合作戦司令部との相互運用性を強化する。これは日本国憲法を足蹴にし、核を含む米軍の戦争態勢・ミサイル防衛システムに自衛隊を深く組み込むもの。ミサイルで敵基地攻撃をやるということを、日本が公然と言っている。アメリカの軍事アドバイザーは「アメリカが中国と対立する時、アメリカは前面に立つわけではない」と言っています。さらに米政府軍事アドバイザーは「前面に立つのは日本の自衛隊の若者だ、極東での戦争はアメリカ兵の命を失わせたくない」ということをベトナム戦争の時に言っています。アジアでの戦争はアジア人同士でやらせるべきだ。その準備を完成させたのが岸田さんです。
戦争で前線に立つのは誰?
自衛隊の若者です。台湾になんかあったとき、日本が中国軍と戦うことになるんです。その時、日本が一番気をつけなきゃならないのは原発です。そこにミサイルが打ち込まれたら、核分裂が始まり原子爆弾となってしまいます。核爆弾が来なくても、原発が狙われたら核分裂が始まる。つまり、核爆弾と同じ大爆発がおきる。そういうことを我々は知っておかなければいけない。大事なのは43兆円とかいう軍備を強化することではない!そんなことでは平和は実現できません。本当に安全を確保するには外交的な努力で、憲法をかざして、絶対に日本は戦争をしないんだ、と。だからあなたがたも戦争には手を出すな、という形で、外交交渉をするしかないんです。 文責・にらめっこ