家庭レベルで浄水をすること
自分の暮らしを自分で良くする。その意識を育てながら、人々の暮らしを良くするようなプロジェクトを考えたい。そんな思いで2年間、JICA青年海外協力隊と言う立場で活動していました。その集大成的な活動は「水の浄水実験」となりました。コミュニティに入り、家庭レベルで浄水をすることで、健康や農耕の状態を良くする、そんな活動は結局資金不足でできませんでしたが、多くの人がその重要性に賛成してくれました。
水、私たちの生活になくてはならない物です。日本にいれば、ほぼ100%の地域で水道の蛇口をひねれば飲料水にできる水が出てき、山から清流が湧き出ている地域もあります。しかし、モザンビークでは、綺麗な水の水源が少なく、その水を原因として病気も多発しています。5歳以下の子どもの死因の第3位に下痢が入っており、水源、綺麗な水、水に対する注意などの不足が予想できます。雨で水溜りができれば、子どもたちは泥水の中でプールのように遊んでいます。川上で洗濯をしていても川下で食器洗いする人もいます。井戸はどの地域でも掘れるわけではありません。
そこで、私が考えたのは、石と砂利を通して、微生物の生物活性による浄水で、川や湖などの自然の水をより安全にすることと、生活排水を生活用水や農業用水にすることです。
目的は二つです。一つ目はもちろん、地域の素材を使って水の質を高めて生活改善すること。二つ目は、自分で水の循環を作ることで、自分の生きる地域を自分たちで守れるという意識を作ることです。初めはグレーウォーター(料理からの水。対してブラックウォーターは洗濯水やトイレの汚水)を家庭内で飲料水まで持っていくことを考えました。モリンガの種に浄水効果があると聞き、モリンガの種を集めて実験もしました。
しかし、なかなか排水は綺麗になりませんでした。いいかな?と思うと、急に緑の水が出てきたり、全く変化が見られなかったりの繰り返し。世界中の専門家に聞いても、良い方法は得られませんでした。そこで、飲水用の浄水と農業用水の浄水を二手に分けることにしました。農薬の使いすぎの防止もできるし、農薬が買えないから作物が沢山育てられないという人への慰めにもなるのでは!?と。
安全性への責任という意味でも安心でした。色々な人に話し、意見をもらう度にこの国にはこれが必要だから頑張って!と言われたのにも関わらず、最後は資金不足の壁。水が当たり前のように手にできる日本に生まれたことを、奇跡のようにも感じたし、その日本が世界の水事情の改善を牽引していかなければという気持ちにもなりました。