vol.226 続・しょうがいをみつめるvol.8

あらゆる動物が共に生きる理想の文明都市

映画『ズートピア』

2016年に公開されたディズニー映画「ズートピア」。その作り込まれた世界観に、ワクワクな展開、そして現代社会にも通ずる深いメッセージが込められた内容に、子どもはもちろん大人にも響く魅力的な作品です。

 舞台はあらゆる動物が共に生きる理想の文明都市ズートピア。主人公のジュディ(ウサギ)は世の中を良くしたいという小さい頃からの夢を叶え、警察官として憧れのズートピアで働き始めることに。その頃、ズートピアでは肉食動物ばかりの連続行方不明事件が発生し、ジュディはひょんなことから詐欺師のニック(キツネ)とともに事件の解明を目指すことになって…というお話です。

小さいながらも強い意志と努力によって、ウサギで初めての警察官になったジュディ。
故郷を離れる際に父親から「都会は怖い!中でもキツネは最悪だ!」と忠告を受けますが、「キツネ全部がイジワルじゃない。性格の悪いウサギだっているわ」と言い返します。
警察署で出会った受付のクロウハウザー(チーター)から「かわいい」と言われた際には、「同じウサギに言われるのはいいけど、他の動物に言われるのはちょっと…」と見た目のことを言われたことに不快感を示します。
こういったエピソードからも、ジュディが差別や偏見を嫌う正義感溢れるキャラクターだということがわかります。

ですが、そんなジュディもやはり気づかないうちに差別や偏見をしていました。中でも、連続行方不明事件を解決したジュディが「なぜ肉食動物だけが凶暴化したのか?」という記者たちからの質問に「DNAが…」などと、真偽不確かなコメントをしてしまい、恐怖を煽られたズートピアでは肉食動物と草食動物の分断が起きてしまいます。
相棒のように思っていたニックからの信頼も失い、ジュディは初めて自身の無意識にある差別や偏見に気づき、ひどく落ち込みます。

しかし、ジュディはこれで終わりません。「無知で無責任で偏見をもってた。肉食動物の苦痛は私のせい」と強く反省し、正直に謝ります。
そして再びニックとともに事件の真相を解明し、無事に肉食動物への疑惑が晴れてハッピーエンドとなります。

最後のシーンでジュディは語ります。

「現実はとても厳しい。誰にも限界はあるし、過ちを犯します。
でも だからこそ共感し合えるんです。
互いを理解しようとすれば、もっとみんなが輝けます。
でも努力しないと。より良い世界のために。
世の中を変えるには、まずあなたから。そして私から」

差別や偏見は誰しもがもっているもの。それは意図せず誰かを傷つけてしまうかもしれない。だからこそ自分の中に潜む無意識の差別や偏見に敏感になり、決めつけずにただ目の前の人を理解しようと努力する姿勢こそがより良い社会を作っていく。これこそが本作で最も伝えたかったメッセージなのではないかと思います。

年末には待望の「ズートピア2」が公開予定だそうです。次はどんなストーリーが待っているのでしょうか。