投稿者「にらめっこWeb版スタッフ」のアーカイブ

vol.202 連載-2 南の島よりハイタイ

花ブロックさんぽ

 沖縄に来て間もないころ、あちこちでブロックに模様の入った本土では見られない建物風景が目に留まりました。これを花ブロックと呼ばれることは、随分後になってから知りました。この花ブロックは、沖縄でコンクリート住宅が次々に建てられるようになったころ、
 アメリカ世(ゆ)、アメリカ政府による沖縄統治時代[1945年~1972年]の沖縄で生まれた建築工芸です。無粋なブロックに空けた丸や四角、菱形などを刻んだ穴を組み合わせ、素敵な幾何学的なデザインに積み上げていく。どこか琉球絣や花織の模様にも通じるものがあります。一般民家はもちろん、マンション、そして市役所、博物館などの公共建物にも多く使われています。平凡なブロック壁や塀にアクセントが付き、建物に個性が感じられます。花ブロックを探しながらウオーキングをするもよし、モノレールの車窓から見つけるのも楽しいものです。外観の美しさ、楽しさはもちろんのこと、心地よく暮らすために生まれた花ブロックは、機能的にもすぐれています。気温が高くて湿気の多い沖縄では、涼しく暮らすための工夫が必要です。太陽からの強い日差しを和らげ、同時に風を家の中に運ぶ優れもの。
 外から中が見えにくく、中から外の様子が分かります。花ブロックは昔の人が生んだ素敵な県産品です。
 最近では、建物の外だけではなく、インテリアとして室内に置かれたり、お店の店内の
 ディスプレイなどにも使われています。私事ですが、先日リノベーションした岐阜の実家の門に花ブロックを取り入れてみました。このおしゃれで機能的にも優れた花ブロックが、本土でも使われるようになったら・・・と、ひそかに願っています。


かとう まみ プロフィール
岐阜市生まれ。桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ専攻卒業 ・2015年5月:写真集「奥飛騨に響く種蔵の里」(岐阜新聞社)出版 ・2019年6月:写真集「ばあちゃんぼくが継ぐ」(岐阜新聞社)出版・個展3回 岐阜市美術展委嘱作家岐阜市美術展部会推進委員・岐阜県写真作家協会会員・二科会写真部岐阜支部委員・ギフフォトクラブ会員


vol.202 プレゼントコーナー

1- あなたの「省エネ夏の乗越え方」は?
今年も暑〜い夏がやってくる!でも、できれば省エネで過ごしたいですね。あなたの工夫教えてね。

2-気になるにらめっこ紙面での広告
3-気に入った記事、気に入らない記事の
 タイトル1つ・その理由もお書きください。
4-ご希望のプレゼント名(第1希望・第2希望を必ずお書きください)
 ※Dは編集室まで受け取りに来られる方。
5-本紙をどこで入手されましたか?
6-氏名、年齢、住所、郵便番号、電話番号、家族構成

ハガキまたはe-mailで、上記のアンケートを
1〜6までご記入の上、編集部・プレゼント係りまでお送りください。
〆切:7月25日 当日消印有効。
宛先 〒504-0855 各務原市蘇原新栄町3-15
e-mail: info@niramekko.com
※お寄せいただいた個人情報は、本紙プレゼントの発送に限り、 使用させていただきます。
※当選の発表は発送をもって代えさせていただきます。


A.CINEX 映画招待券 シネックス様より…ペア3組様

色とりどりに咲き誇るたくさんの花々、広がる青空…。大きな画面いっぱいに広がる映像美に魅せられながら、ストーリーに笑ったり涙を流したり。そんな映画館ならではのひとときをどうぞ。写真は映画「ローズメイカー」のひとこま。柳ヶ瀬のシネックスでご利用いただけます。


B.小冊子「タネは命 子供のために日本の種を守ろう!」 にらめっこより…5名様

一般社団法人心土不二発行の冊子。種子法と種苗法との違いは?家庭菜園はこれまで通り種取りをしても大丈夫?など、タネについての18の疑問に丁寧にわかりやすく答えています。B6サイズ18ページです。


C.シャボン玉 酸素系 漂白剤 引換券  和楽様より…3名様

漂白、除菌、消臭の効果がある酸素系漂白剤。色柄物の洗濯や染み抜きにも使えます。成分は過炭素ナトリウムなので、塩素系漂白剤のようなツーンとした臭いもなく、塩素ガスが発生する危険もありません。和楽さん(一宮市時之島丸先2-12)店頭でお受け取りください。


D.竹製のうちわ 2本セット にらめっこより…3名様

竹製の骨組みで作られた、日本伝統のうちわです。自然素材の味わいがあり、涼しい風を送ります。これからの季節、一本手元に置いてあると重宝です。柄が全部違うので、にらめっこ事務所で選んでくださいね。


vol.201 子育て・基本のき 子どもの人権を「守り」「育む」には

人権を考える―― それは想像力を働かせて
自分とは異なる人 の立場になってみること

子どもの権利って言うけれど、それってなに?必要なの?

 子育て中のわたしは、しつけと自認して叩いたことがあります。「体罰は是か非か」。子育て真っ最中の時にはそんなタイトルで特集しました。その時に取材をさせていただいた、長谷川博一さん(当時、東海女子大学人間関係学部心理学科教授)は、何があっても体罰は人権侵害にあたる、と断言されました。そうとわかっていても、言ってもわからない時期だからいいのではと勝手に正当化している自分がいました。それがしつけだと。その一方で、余裕のある時は子どものいたずらは大目に見ようと思ったり、翻ってちょっとイライラしているときは親の言うことには従がわせようとする。なんて一貫性のない…。今思えば、乳幼児期から人権を尊重する、ということが欠落していたのかな。子育ての一番奥深いところは、「子どもの人権」と言う人権感覚を持つかどうかです。それが子育てに大きく関わるんですね。
 赤ちゃんが生まれた時に泣くのは、「子どもの権利」と言う考え方。権利は当たり前の主張であって、生まれながらにして一人の人間として生きる存在であるという考えです。
 1062年、ルソーは『エミール』の中で、「人間を人間として考え、子どもを子どもとして考えなければならない」と言っています。「子ども」の発見です。また「子どもは大人と違う。だから子どもの大事な時代を豊かに過ごす。感覚機能が十分発達する時期だから、感覚を豊かに」と言っています。

おとなの子ども観が問われる

 「子どもの人権を守る」ということは、「一個の人格を持った存在」として子どもを尊重し、差別・ 貧困・虐待・戦争な
どの子どもの人権を脅かす事態から子どもを守るためにどうすべきなのかを考えることを意味しています。
 子どもは、社会の中で弱い立場にいます。そして、周囲の環境や社会の中にあるさまざまな矛盾の影響を直接的に受けやすい存在です。
 戦争の犠牲になるのは一番弱い立場にいる子どもたちですし、差別や貧困の結果、さまざまなしんどさを抱えさせられている子どもたちや、豊かな育ちの機会を奪われている子どもたちもいます。虐待や体罰を受けることによって、身体的にも、精神的にも傷ついている子どもたちもいます。そして、子どもたちをこうした状況に追い込んでしまうのは、他ならぬ「おとな」や「おとながつくっている社会」なのです。
 おとなが「子どもの人権を侵害する存在」ではなく、「子どもの人権を尊重し、守ることができる存在」となるためには、おとなの子どもに対する見方・とらえ方(子ども観)が問われます。「おとなが思いどおりにしてよい存在」「思いや主張など聞く必要はない存在」「言葉では分からないだろうからたたいて理解させないといけない存在」として子どもをとらえている中では、子どもの人権を尊重し、守ることはできません。
 子どもは「小さくても、1人のヒトとして尊敬される存在」であり、「自分の思い・意志をもった存在」であるととらえ、「尊敬の対象」として子どもを見ることが、おとなが、子どもの人権を尊重し、守ることができる存在になるための第一歩です。

 子どもは人権を守られる存在であると同時に、現在そして未来の「人権の担い手」、さまざまな人たちがともに暮らしていける「共生社会の担い手」でもあります。そうした力は乳幼児期から育まれていく必要があります。乳幼児は、社会的な偏見や差別とは無縁の存在ではありません。アメリカにおける研究では、「乳児は、早ければ6ヶ月頃から肌の色の違いに気づきはじめており、3歳頃までに肌の色への社会的偏見を吸収し、白い肌には肯定的に、黒い肌には否定的に反応するようになる(L.ダーマン・スパークス 1989 / 1994)」といった具体的な結果が示されているように、乳幼児は、社会的な偏見につながるような物事の見方、とらえ方を少しずつ吸収していきます。だからこそ、乳幼児期からの人権保育・教育が必要となるのです。

その子がいま感じている面白さが出発点

 「豊かな人権力」を育てるためには、遊びのおもしろさを十分に深めることが基本になります。おとなは、遊びから抜けてしまう子や遊びの中で脱線しそうな行動を取りがちな子に対して、わがまま、協調性がないなどと感じてしまうことがありますが、実際には、取り組んでいる遊びが、その子の遊びのおもしろさの発達に合致していない、別のおもしろさを感じている、といった理由からそうした行動につながっている例も多いのです。「その子が今、感じているおもしろさをつかみ、そこを出発点にしながら遊びのおもしろさを深めていく」という姿勢をおとなが持っていることが大切になります。

おとな自身も生き生きすることが大切

 もう1点、「子どもの人権を尊重し、守ることができる存在」になるためには、おとな自身が置かれた状況のありようも重要になります。子どもと共にいるおとな自身の人権が尊重されず、さまざまなしんどさを抱えさせられている中では、そのしんどさがより弱い存在である子どもに向いてしまうことも起こりえます。子どもとともにいるおとな自身が置かれた状況がより良いものとなり、人としての尊厳が守られ、生き生きとした状態にあることは、子どもの人権が守られるために必要な条件です。

子どもに育みたい「3つの人権力」

人間を尊敬する力(尊敬)

自分のことが好き」「仲間のことが好き」という気持ち。「自己への尊敬」「他者への尊敬」「生命への尊敬」 「言う力と聞く力を持つこと」の4点に整理されています。自分の命・他者の命・動植物の命を大切にできること、命を支えてくれる人の存在に気づいたり、命を大切にするために必要な行動ができることを意味しています。

公平性の獲得(公平)

「公平・不公平」の問題は、子どもたちの生活や遊びの中で、具体的な問題として存在しています。まず、遊びや生活の中で「自分はこうしたい」という自己主張をすること、そこでぶつかり合いが起こることが第一歩。自分たちなりの問題解決ができるようになることが大切です。

偏見をなくす力(反偏見)

 さまざまな人たちと「出会い」、その「思いを知ること」、人々が持つさまざまな違いを「正確に知ること」、さまざまな文化の「良さに出会うこと」などが重要になります。こうした「出会い」や「正しい理解」が、偏見がかった見方に出会ったときに、おかしいと指摘し、偏見をなくすために行動できる力の土台を形成します。


vol.201 子育て・基本のき 乳幼児の人権を考える

性教育は何歳が適齢期?

 娘が保育園に通っていた時のこと。ある日、園で絵本の読み聞かせがありました。本のタイトルは『ぼくどこからきたの?』

あるがままの いのちのはなし。
ごまかしなし さしえつき。
かいたのは ピーター・メイル。
えは アーサー・ロビンス
デザインは ポール・ウォルター
やくしたのは たにかわ しゅんたろう

 娘は帰ってくるなり、「わたしはどこからきたの?」って質問するではありませんか!私は、「性」に関しては、子どもが興味を持ったら、何か尋ねてきたら、その時が適齢期だと思っていたので、うわぁ〜、キタぁ〜って感じでした。でも、あまりに突然だったので正直びっくりしました。ちょっとドギマギしながらも、あの本を読んでもらったのならありのままに伝えなければと、頭をフル回転させながら話した記憶がありましす。「性教育」という概念がまだ今ほど定着してない頃の話です。

 娘が小学3年生の頃、授業参観がありました。授業は「性教育」でした。先生がどんなふうに子ども達に伝えてくださるのかとても関心をもって参観しました。ところが、内容は誠に残念な結果。授業内容は、男らしさや女らしさから始まり、男女の体の違い、男性の役割、女性の役割、でおしまい。しかも男性は外で働き、女性は家庭を守る役割だと・・・。
あたりまえのことを、あたりまえに話すことができない風潮は、差別や偏見を生みます。LGBTQの問題しかり、人種問題しかり、障がい者問題しかり。これすべて「人権」問題です。差別や偏見は人権を傷つけます。分断を生みます。

 さて、ジェンダー平等がオリンピックの基本理念となっている現在と、性教育が教育の現場に取り入れられた当時と比べると、かなりのギャップがあります。しかし、いまだに「性教育」をタブーとしている教育現場はたくさんあると聞きます。私は「性」を遠くに置いて「人権」は語れない、と思っています。本紙に連載中の「ここいくレポート」(P-19)でも、性教育は人権教育とはっきり示しています。
 性教育団体の「ここいく」(代表・中村暁子さん)は、幼稚園児から高校生に至るまで幅広い年齢層に「いのちの授業」を届けています。代表の中村さんにお話をうかがいました。

「あなたはあなたのままでいい。丸ごと受け止めることで安心感がうまれる」

 「いのちの授業」では、自分が今生きていることは奇跡!というメッセージを届けることを大切にしています。なぜ奇跡なのか。いのちの成り立ちを話せばみんな納得です。見えないところですごいドラマがあるからです。
 「約2〜3億個の中からたった一つの精子が、一個の卵子に出会って一緒になるの。そして、一つの命が生まれるんだよ。すごい奇跡だよね。それがいのちの始まりです。」低学年の子たちはこの話をすると目がキラキラ耀きます。中高生には、生まれてくるときや生まれてからの環境は千差万別だが、元気に生まれてきたこと、大切に育ててくれた人がいたから、今を生きていることを伝えます。授業の後はみんな、「生まれてきたよかった」「お母さんありがとう」っていう言葉が自然に出てきます。でも、この「いのちの成り立ち」を知らない人が多いので、命の稀少性に気付かず、「自分なんか」、「どうせ無理···」と思ってしまう、自己肯定感が育ちにくい。でも、自分の命は、奇跡のような確率で生まれたことを知ると、自分の命も人の命も大切にできると思います。

 性教育は「セックス」「性交」を抜きには始まりません。だって、精子と卵子はどうやって出会うのですか?まだ男性社会の影響が影を落としています。ジェンダーギャップ指数、日本は世界で何番目かご存知ですか?(日本の順位は156カ国中120位(2019年121位)と主要7カ国(G7)で最下位だっただけでなく、世界でも最低レベルをさまよっている。)当たり前のことを当たり前に話すこと。それができないのは、難しく考えすぎだからと思います。

 実は妊娠中から<性教育=人権教育>は始まっています。胎児への言葉がけから大事です。乳幼児にも、当たり前ですが人権はあります。モノが言えない小さな子は、自分の思うようになると思っている大人が多数いることも事実です。言葉がわからないと思うのは間違いで、ちゃんと言葉を受け取っていることを知っていて欲しいです。そういう人たちにこんな質問をします。「モノが言えない猫や犬を飼っている人、自分の伝えたいこと、伝わっている?」と聞くと、「はい」という人が多い。では赤ちゃんは?「あーそうか?」って・・・。

 乳幼児検診のこんな事例があります。4ヶ月で8kgの子—とりあえずノーマークです。でも、もしミルクだったら「与えすぎ」と言われます。5ヶ月で6kgの子—授乳の回数を増やす、又はミルクを足してと指導されます。大人はモノを言えない赤ちゃんの指導権を握っています。しかし、乳幼児にもちゃんと人権があります。検診に限らず、もっとその子の育ち、その子の個性を尊重して欲しいと思いますね。

最後に差別・偏見について
 誰しも自分の胸のうちに無意識の意識と言うのでしょうか、差別や偏見は抱いていると思います。なんと言うか、もやっとする感覚、あなたはありませんか?私は、もやっとした差別や偏見があってもいいと思うんです。大事なのは、なぜ自分はそのことに偏見を持ったり、差別感を抱くのだろうと考えることだと思います。誰もあなたの人権を侵害はしないし、もやっと感を持っていても他の誰かの人権を傷つけることにはなりません。ただ、そのもやっと感の原因を追求してみることは大事だと思います。

●COLUMN●
1992年は「性教育元年」とも呼ばれ、学習指導要領が改訂・施行されて、小学校段階から「性」を本格的に教えるようになりました。 また、教育現場では性教育の研究授業が盛んにおこなわれました。 子どもや保護者の要請も受けて、現場でさまざまな工夫がなされ、発展し始めた日本の性教育ですが、2000年代初めに状況は一変します。
 日本の性教育の歴史を振り返ると、1980年代のエイズ・パニックをきっかけとして、若者に性の知識を教えなければならないという意見が強まり、1990年代になって「性教育ブーム」が起こりました。しかし、「性教育バッシング」が湧き起こり、日本の性教育の発展はストップし、萎縮してしまったのです。そのきっかけとなったのは2003年、都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)で行われていた性教育を、一部保守系の都議が中心となって問題だと指弾し、メディアも「過激な性教育」とセンセーショナルに取り上げた結果、七生養護学校に関わる教育関係者が都の教育委員会によって処分され、その後も性教育バッシングが続く状況になってしまいました。
 翌2004年、都教育委員会は「性教育の手引き」を改訂し、小・中・高いずれの学習指導要領でも、そもそも「性交」は、子どもに理解させることは困難であるからとして、授業で示すことさえせず、中学校の保健体育でもコンドームの装着の方法を取り上げないなどと強調しました。さらに、このバッシングを受けた動きは国レベルにまで広がり、文科省の定める学習指導要領でも都教委の「手引き」同様、中学校で「性交」「セックス」は扱わないことになり、中学校保健体育の教科書では、「性交」ではなく「性的接触」という言葉を使うこととなったのです。COLUMN1992年は「性教育元年」とも呼ばれ、学習指導要領が改訂・施行されて、小学校段階から「性」を本格的に教えるようになりました。 また、教育現場では性教育の研究授業が盛んにおこなわれました。 子どもや保護者の要請も受けて、現場でさまざまな工夫がなされ、発展し始めた日本の性教育ですが、2000年代初めに状況は一変します。
 日本の性教育の歴史を振り返ると、1980年代のエイズ・パニックをきっかけとして、若者に性の知識を教えなければならないという意見が強まり、1990年代になって「性教育ブーム」が起こりました。しかし、「性教育バッシング」が湧き起こり、日本の性教育の発展はストップし、萎縮してしまったのです。そのきっかけとなったのは2003年、都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)で行われていた性教育を、一部保守系の都議が中心となって問題だと指弾し、メディアも「過激な性教育」とセンセーショナルに取り上げた結果、七生養護学校に関わる教育関係者が都の教育委員会によって処分され、その後も性教育バッシングが続く状況になってしまいました。
 翌2004年、都教育委員会は「性教育の手引き」を改訂し、小・中・高いずれの学習指導要領でも、そもそも「性交」は、子どもに理解させることは困難であるからとして、授業で示すことさえせず、中学校の保健体育でもコンドームの装着の方法を取り上げないなどと強調しました。さらに、このバッシングを受けた動きは国レベルにまで広がり、文科省の定める学習指導要領でも都教委の「手引き」同様、中学校で「性交」「セックス」は扱わないことになり、中学校保健体育の教科書では、「性交」ではなく「性的接触」という言葉を使うこととなったのです。


vol.201 アウトドア特集

 今後子育てをする人、まだ子どもが12歳になっていない人、また大人になっていても経験をしていないことがあれば「50のこと」を今からでもぜひトライしてみてはいかが?
 私が子どもだった頃を振り返ってみると、楽しかった記憶は外で遊んだ記憶ばかり。稲刈りが終わった田んぼ一面に咲くレンゲの花の絨毯で鬼ごっこしたこと、ハザかけの藁でかくれんぼしたこと、空き地に段ボールで隠れ家をつくったこと、防空壕と思わ
しき洞穴にロウソクを持って潜入したこと、しろつめ草のネックレスなら今でもつくり方を覚えていること…などなど。皆さんはいかがですか?

「冒険する」
 ①-木登りをする ②-ものすごく大きい丘を転げ落ちる ③-自然の中でキャンプをする ④-ほら穴をつくる ⑤-水切り遊びをする ※水面に向けて平たい石を投げる遊び(石切り)⑥-雨の中を走り回る ⑦-凧あげをする ⑧-網で魚を捕まえる ⑨-りんごを木からもいで食べる ⑩-どんぐりで遊ぶ。 
「冒険する」から始まり「発見する」「観察する」「追跡する」「探検する」などそれぞれのカテゴリーには10個の「しておくこと」があり、全部で50個あります。
 「手紙を書いて送ること」や「ねころがって星を見よう」など簡単にできることから「夜の自然を散策する」「植えて、育てて、食べる」など大人と一緒にするような項目もあります。 「目かくしをして街を歩こう」なんかはちょっと心配ですし、「廃墟を探検してみよう」はちょっと勇気がいりますね。詳しくは『Last Child in the Woods: Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder』(邦訳:『あなたの 子どもに自然が足りない』)という本を参照してみてください。「自然とほとんど意味のある接触がなく育った現代の子どもたちは身体的・精神的な問題を抱えやすい」と警笛を鳴らした本。(英国ナショナル・トラスト総監)

 本紙175号の特集「自然、足りていますか?」でも述べていますが、自然の中の一部である私たちは元々、自然の中にある音や季節感、雲や風、星の動き、朝昼夜の生活リズムなどを感覚的にとらえて生活してきました。それが特に都心部ではビルに囲まれ、土や木は慰め程度に存在するだけで、日常的に本当の自然に触れる機会が異常に少ないのが現状です。また子ども達は自然の中で遊ぶことが少なく、自宅でのゲームなどにいそしんで、むしろ外で遊ぶ事が危険視されている風潮さえあります。その都会的な生活が、遺伝子レベルに大きな影響や違和感を与えているといわれているのです。これは「自然欠乏症候群」と呼ばれ、心身に影響を与えています。

 視界に入ってくる自然をのんびりと見つめ、木々や土などのにおいを鼻から深く吸い込んでは吐き出してください。そして、街中に溢れる電子音やスピーカーから発せられる音ではなく、全方位から聞こえてくる草木のざわめき、鳥のさえずり、虫の音、川のせせらぎといった自然の音に耳を傾けてください。
 また、木に抱きついたり、優しく触れたり、葉をなでてみたり、自分の家族に接するように自然に触れることも大切です。さらに、その土地で採れるキノコや果実などをふんだんに使っているレストランや市場に立ち寄り、味覚にもアプローチしてみると一層楽しみが広がると思います。五感をフルに使う!それを意識して森林浴に臨んでみると良いかもしれません。
 全国的に暖かな陽気の日が増えてきました。寒さで縮こまった体や心をほぐしてあげるためにも、森林浴に行ってみてはいかがでしょうか。

 だ・か・ら・!外遊びのススメ。

 前述した「12歳までにしておくべき50のこと」を1から順に達成するのもいいし、自然の中に身をおくだけてもいい。自転車に乗ってちょっと遠出してもいいし、キャンプで野外観察をしてもいい。今回のおススメは、星座観測とキャンプファイヤー。星座なんて皆目見当もつかないという人も多いかもしれませんがご心配なく。星座早見表をかざすだけでわかるし、スマホを持っている方なら天文系のスマホアプリで解決。スマホを夜空に向けるだけで星座の名前がわかるアプリを始め、昔懐かしの「星座早見盤」を再現したアプリや、星空の撮影もこなせる夜間撮影カメラアプリなど、星空を見るのがますます楽しくなる逸品アプリがあります。便利なものはいくつもありますが、せっかくアウトドアライフを楽しむために、出かけてきたのであればここはひとつ、アナログで!
 星座早見表で夜空を眺めながら、星座当てゲームをしてみてはいかがでしょうか?


vol.201 続・ぎむきょールーム

「お手伝い」から「家事労働」までの道のりとヒント!

就学前後 生活のごちゃごちゃ感に「待つ」を混ぜる
       山下桂子(保育士)

 「いっしょに暮らす」ってどういうことなのかを生まれたての子どもたちは、肌感覚・におい・見る・聞く・話すなどといったことから吸収していきます。それもすごい勢いで。なんてたって、世のほとんどが「珍しい!」「これって、なに?」の連続なのです。

「完成」を目指さない
 大人たちの手仕事の料理、洗濯、掃除、赤ちゃんの世話、おじいちゃん、おばあちゃんのせわ、など限りがありません。この限りない家族の営みが自分たちのなかで成り立っていて、ごちゃごちゃ感に溢れていることが「お手伝いをする」ということのベースにないと、表面上だけのことになってしまうと思います。ハートが動く・・・そこが先です。
 「うまくいかない」のは、「完成」を目指してしまうから。この年齢の子供たちの「やってみたい」を尊重して、「ニンジン一本丸ごと預けて、ピーラーで皮をむきすぎて小さくなっちゃっても、それを使って料理しよう」と思うくらいの心がまえのほうが大事だと思います。

保育園園長:自然豊かな環境で、「みんないっしょにくらそうよ」をモットーに子どもが主役の保育を実施。

10歳前後 ここが分かれ目?
       岡崎 勝(小学校教員)

性差についての語り方       

男性の家事を頼りにできる日常があれば
母親にしてもらうことに慣れてしまうと・・・

 10歳の頃の子どもたちはある部分については家事への興味関心は高いので、いっしょにおかし作りなどをすることにはやりたい気持ちを持っています。大人と同じことができるという喜びだったり、親といっしょに過ごす時間が楽しかったりします。
 男性が家事労働を忌諱し、妻など女性にそれを「してもらう」ことに慣れてしまうと、あきらかに自立から遠ざかります。母親依存、妻依存という男子・男性にいいことはなにもありません。
 「お父さんが家事をしている日常」があれば、そのなかで育った男の子は、家事が好きかどうかは別ですが、「家事は家族誰であっても、やって当たり前」ということが理解できます。
 お父さんがいなくても、家族の協働性はとても大事です。「とても嬉しい」とか「大きくなったから助かる」と頼りにしていることをきちんと伝えるべきでしょう。イクメンなどという言葉が一人歩きしていますが、男が家事をやるのは普通の時代なのです。

<お・は>編集人/小学校教員

思春期前後 ここがこらえどき?
   山田 真(小児科医)

働ける環境をつくることから

 「昔の子どもはお手伝いをしていたのに、このごろの子どもはしない。お手伝いさせるべきだ」という人がいます。それで「お手伝い」が学校の宿題になったりします。宿題として出されると、お母さんが「何か手伝うことないかしらね」と探すことになります。親が手伝って欲しいと思っていないのに無理に手伝いをさせても、子どもが手伝った喜びを味わうこともないでしょうし、こんな手伝いに意味があるとも思えません。
 僕自身は田舎の開業医の一人っ子で、家族は三人でしたが、小学校の頃から食材の買い出しをしていました。このおかげで、ぼくは買い物が好きになりました。

子どもの仕事は勉強?

 子どもは労働などせず、勉強をしていればいい、子どもの仕事は勉強と考えられているのが、今のこの国の状況と思いますが、ぼくは少し違うと思います。
 中学生の年齢だったら、学校へ行きたくないとき、学校がつらくなったとき、働けるといいと思うのです。
 ですから、ぼくは「お手伝い」ではなく、子どもが対価がもらえるような「労働」をできるようにすることを提案しておきます。

やまだ・まこと:八王子診療所所長。「子供たちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表。

始めどきには「忍耐と時間」が必要
    内田 良子(心理カウンセラー)

親の笑顔がうれしくて

 以前は、乳幼児に向かって「〜をさせよう」と言う教育的発想をもつ大人はとても少なかったのです。けれど、今は就学前どころか、1〜2歳の頃から「小学校に入学して困らないように」「〜をさせよう」という親が多いことに驚きます。早期教育やしつけがあたりまえ、子どもの将来を考える親なら当然のこと、そんな風潮が主流になって疲労困憊する子どもたちのことが問題になっているにもかかわらず、その流れは強まる傾向にあります。
 就学前後のこの時期は、圧倒的に親の力が子どもに勝っていて、「〜をさせよう」と親が思えばたやすくでき、子どもは親の笑顔がうれしくてがんばってしまいます。ここで親や先生の意のままにならない子たちは、「発達障害」を疑われてしまうといったことすらあります。

多忙で両立は難しい

 もし、今の親子の時間を楽しみたい、家族の一員として暮らしをともにしたいと願うとしたら。お手伝いを「教育」や「しつけ」のように「させる」という発想はNGです。子どもは親のする家事をモデルにして「お手伝い」を始めます。
 ただし、そこには「忍耐を時間」が必要。遊び心で楽しむ子どもたちが、これならできると思うまでの時間。急かされることなく、試行錯誤で取り組む時間。親が自分の相手をしてくれる充実した空気が家の中に感じられる、その前提が必要です。さて、ここが現状では一番難しいところではないでしょうか。
就学前の「お手伝い」を習い事や親の多忙が邪魔をします。どう考えても両立は難しい。されどお手伝い。親の覚悟が必要なことになってしまっています。

うちだ・りょうこ:子ども相談室「モモの部屋」主宰。著書に『登園しぶり 登校しぶり』(小社刊)




vol.201 しょうがいをみつめるvol.12

多様で寛容な社会—映画ズートピアから

 「しょうがいをみつめる」というタイトルでこれまでは、学校現場でのことが中心でしたが、これからはもう少し広い視点で、日常生活の中で私が感じたことや考えたことなどを書いていきたいと思います。
 さて皆さん、「ズートピア」をご存知でしょうか。2016年に公開されたディズニー映画で、私のお気に入りの作品の一つ。愛らしいキャラクターに加え、分かりやすくテンポの良いストーリーで、子どもから大人まで楽しめる娯楽映画なのですが、実は「社会の多様性」について非常にうまく描かれた、考えさせられる作品でもあります。

 「だれにでも、なんにでもなれる」と謳われた街、ズートピア。そこにはネズミのように小さな動物からゾウやライオンなどの大型・肉食動物まで、さまざまな動物が住んでいます。多様な動物たちが快適に生きていけるよう12の地区が設けられ、主人公のジュディ(うさぎ)が上京する際に乗ってきたズートピアエキスプレスやセントラル駅には、あらゆる動物に配慮された工夫や仕掛けがいっぱい。
 そんな一見すると動物たちにとって楽園のようなズートピアですが、やはり問題もあります。それが、差別や偏見。
 小さなうさぎには無理だと言われながらも、諦めない心で初のうさぎ警察官になったジュディですが、憧れていた警察署には大型の動物ばかり。成績優秀で警察官になったにも関わらず、大きな仕事を任せてもらえません。うさぎだということだけで受ける職業差別といえるでしょう。
 さらに差別や偏見の厄介なところは、誰の心にも潜んでいて、それが何かの拍子に顕在化してしまうということもきっちり描かれています。
 キツネはたちは悪い動物だと決めつける父母に対して「それはギデオン(ジュディを幼少期いじめていたキツネ)が意地悪なだけでキツネは関係ない。意地悪なうさぎだっていっぱいいる。」と正論を返すジュディですら、キツネ避けスプレーを持ち歩き、悪意からではなく、肉食動物をヘイトするような発言をしてしまいます。
 いかに多様で寛容な社会を作ることが難しいか。私たちの住む現実世界をそっくりそのまま映し込んでいるようで、心が痛みます。困難な課題ではありますが、作中ではそれを乗り越えるためのヒントも提示されています。

 一つが、お互いを知ることを恐れないということです。上京する娘を前に不安を吐露する両親に「一番怖いのは、理由もなく怖がること」とジュディが言うように、差別や偏見は相手をよく知らないから起こる問題です。作中でも、キツネのニックはひょんなことからジュディを手伝うことになるのですが、自身のトラウマから、初めはジュディを蔑みます。しかし、同じ事件をともに追う中で、次第に信頼関係を築いていく様子が描かれます。
 そしてもう一つが、間違ってしまったら認め、謝罪するということです。先ほども述べたように、その気がなくても差別や偏見の芽が出てきてしまうことがあります。ジュディは自分の言葉でニックを傷つけてしまったことを素直に反省し、謝りました。容易にできることではありませんが、こういった誠実さこそが大切なのでしょう。ズートピアのテーマソング「try everything」の歌詞にもこうあります。

Nobody learns without getting it wrong(誰だって間違いながら学んでいくの)
I won’t give up, no I won’t give in till I reach the end(諦めない、降参しない、成し遂げるままで)

 多様で寛容な社会を作る、私たちが諦めなければ達成できると信じていきたいと思わせてくれる作品です。ぜひ一度ご鑑賞あれ。 S.I


vol.201 niramekkoGallery「空にさく花」

 りんかちゃんはとにかくよく笑う。一緒に通う兄といつもいっしょに遊びながら作品を仕上げていく。笑うけど、人一倍過敏なところもある。そして観察力も飛び抜けている。自分が創作する環境をちゃんと選べる感覚は、とても小学二年生とは思えない。
 りんかちゃんの作品は、自由奔放で観るものを楽しませてくれる。次はどんなものを作るんだろう、どんな絵を描くんだろう、と期待がふくらむ。アートの力ともいえる「ワクワク感・どきどき感」。その二つを併せ持っているりんかちゃん。
彼女の創作中、私はいつもワクワクしている。


vol.201 人生これから!

「やってみた」シリーズ 第6弾

パン作りにハマってみた
加藤晃裕さん(40代・男性)

 きっかけは勤務する会社のある日の朝礼のことだった。ひと言スピーチの女性社員の「最近パン作りが楽しいです。みなさんもぜひ挑戦してみてはどうでしょう」という言葉に、どれどれと生食パンにトライ。
 なるほど、小麦粉をこねる感触はもちもちと気持ちよく、発酵で膨らむ姿、オーブンで焼き上がる様子も面白い。いい匂いが漂う中、焼き上がったものは家族に大好評。「何これ、美味しい!」高校生の息子、中学生の娘も喜んで食べてくれた。パン好きで、今まで高級食パンをよく買っていた加藤家。だが、焼きたてほかほかの自家製パンの美味しさを知ってしまった。もう既製品には戻れない。
 以来、加藤さんは休日のたびにパンを焼く。ドライフルーツやナッツが入ったハード系、チョコレートなどの入った甘い系、ソーセージ入りの惣菜パンなどなど何にでもアタック。仕事から帰って、翌朝のパンがないとわかり、急遽シナモンロールを焼いた日も。
以前は趣味のキャンプによく出かけたが、諸事情で休日も出かけられず、ちょっと寂しい気もしていたが、これなら家に居て充実した時間を楽しむ事ができる。さらに娘はお菓子づくりが好きなこともあって、難しい年頃だというのに父と一緒にパン作りもするし、材料の買い出しにも同行もしてくれる。
 パンは小麦粉で作る事は知っていたが、全粒粉、ライ麦粉、準強力粉、など種類も銘柄も多岐にわたり、それぞれに持ち味が違う事も初めて知った。小麦粉を大量に買い、道具もあれが必要これも、とイロイロ買いそろえた。これはいわゆるハマった状態と言える。前述の女性社員とパンができる様子をLINEで報告しあい、試食を交換しあう。そんな情報交換も楽しい。
 ただ、初心者ゆえ成功ばかりではない。ある時は何故かカッチカチに焼き上がり、まるで食品サンプルのようだったし、ある時は膨らみが足りずしょんぼり。失敗作は当然のように子ども達は食べてくれず、ひたすら自分で消費した。
 だからこそ成功したときの喜びはひとしおだ。温かい焼きたてパンをほおばれるのは手作りならでは。そして家族が喜んでくれると本当に嬉しい。子ども達の「この前のあれ美味しかったからまた作ってよ」のリクエストに、自分の作りたいものは後回しにしてしまう。
 これから加藤さんが挑戦してみたいパン、それは長〜いフランスパン。そのための型を今度購入しなくては。こうして加藤さんのパン作りの腕はますます上がってゆく。

あなたの「やってみた」をご紹介させてください。掲載された方には人生これから!編集のライフデザインノート『ゼロの昇天』を進呈!

モノにもう一度命を吹き込む努力をする

3月18日(木)13:30〜 にらめっこフリースペース

3月の「えんぴつカフェ」は
不要なものをくるくるっとリユースしよう!

 私には不要となっても、誰が必要としてくれて、モノの命をつないでくれることができる、そんな0円マーケット。受付では持ち寄ったものにそれぞれの思いを付箋に書き込みます。「もらってください!」と手放す人の思いを一言。譲り受けた人は「ありがとう!譲り受けた理由を一言」。付箋をペアにして、ボードに貼って、みんなでシェアしました。モノの命がきちんとバトンタッチできて、めでたしめでたし。ここでは一切お金は存在しません。捨てることを潔しとせず、ものを大切にする気持ちで人と人が交流できることを目的としました。

0円マーケット参加者の感想
・ 電気ポットをいただきました。お茶の生産・販売をしているので重宝しそうです。和紙のブラインドも雰囲気がよくて気に入りました。(Na)
・ パステルカラーの鍋セットを一目見て気に入りました。他のものが目に入らなかったくらい。とっても嬉しいです。(Iti)
・ 深いおたまが欲しかったのでいただきました。今使っている難あるものを手放すきっかけができました。(Ino)
・ いつも押し寿司をタッパで作っていたので、押し寿司セットでちゃんと作れそうです。白い布を吊って代用していたところに、いただいた和紙のブラインドをつけたら部屋がちゃんとします。こんなに良い物本当にいらないの!?(O)
・ 木の温もりが大好きで、手彫りの器とお盆をいただきました。歩行器を持ってきましたが、子どもの物って使える期間は短いので、元気いっぱい使っていたのにほとんど傷みはなく、どなたかに使ってほしかったので良かったです。(Ni)
・ 歩行器を孫に欲しくて、人に聞いたり、買わなくちゃいけないと思っていたところだったので、いただけてラッキーでした。(S)
・ 娘が一人暮しを始めた時にかわいい鍋のセットを買ったのですが、娘は気に入らないと使ってくれず、そのまま眠っていました。使ってもらえて嬉しいです。いただいた物は額です。私の好きな色で、何を入れて飾ろうかとワクワクしています。(Naka)
・ 木の菓子鉢、すてきです。和紙のブラインドも雰囲気が良くてうれしいです。(T)
・ 香典袋、いつも慌てて買いに走るのでありがたいです。(K)
・ 手作りの布バック、刺繍もかわいらしく、娘が孫の物を入れるのに絶対気に入ります。小物入れもバックの中を整理するのに使います。(M)

モノを回した感想をひととおり述べた後は、フリートーク。
 来年岐阜市で開催される全国紅茶サミットの話し、学校給食をオーガニックにする署名について、などから、給食をオーガニックにするにはオーガニック食材を生産する農家、農家の収入を確保する為の販路が必要。無農薬と農薬不使用とオーガニックの違いとは?など、モノだけではなく、情報の交換もしました。また、次回のえんぴつカフェのテーマ「わたしのトリセツ」から自分を知るには?占いは?と話しは多岐にわたりました。
 参加者は手放したモノ、受け取ったモノだけでなく、多くの情報も交換することができました。今後も0円マーケットは定期的に開催します。みんなでモノの命も情報もくるくる回しましょう!

参加者の一人から、くるくる回る収納ボックスをこんな風に利用してます、とメールをいただきました。使う人が変わればモノの役割も変わりますね!Nさんありがとう!


vol.201 シニアポートレート撮影会のご案内

今だから写せるステキな表情、
今しか撮れない大切な一枚。
NPO人生これから!が「イエイ撮影会」第2弾を企画!

ヘアセット、ポイントメイク、込み
写真は伊勢和紙にプリントを1枚とデータ(USBスティック)を当日お渡しします。
料金 お一人4,500 円(税込み)

参加希望の方は、下記・「人生これから!」までご連絡をお願いいたします。担当・三上


えんぴつ・カフェとは・・・
毎月1回おしゃべりしながらライフデザインノート『ゼロの昇天』を書き込むために集うカフェです。お茶を飲みお 菓子をつまみながら、持ち寄った課題をみんなで考えます。話題は多岐にわたります。「人生これから!」を基本に、やがて迎えるであろう「そのとき」まで、 どう生きるかを念頭に置いて書き込んでいきます。ちっとも筆が進まない、というのが現状ですが、みんなの話を聞いて、回を重ねるごとに、少しづつイメージ が湧いてきます。そんなカフェです。

主催:NPO「人生これから!」
問い合わせ 090-5638-7044(田辺)・ 090-7854-4561(三上)


vol.201 熱中人  山田 航平さん

こころもからだも整える食事を

出張料理をメインに活動中の料理人
   山田 航平さん(山県市在住)

 野菜はできるかぎり農薬不使用の旬の作物。調味料も化学調味料に頼らないシンプルなもの。出張料理では、予め仕込んだ料理を持ち込み、出張先のキッチンで仕上げるスタイルだ。依頼を受けたらお客さんがどんな方たちなのかに思いを馳せ、素材やメニューを決めてゆく。
 「岩戸舞というイベントの時には、天岩戸をイメージして塩釜料理をお出ししたら、みなさんとても喜んでくださいました。自分の料理を目の前で食べていただき、美味しいと喜んでいただける、それが原動力になっています。」
 
 子どものころから食べる事が好きで、鬼まんじゅうや餃子を母とともに作り、年齢が上がるにつれ、食事も作るように。だから高校を調理学校に選択したのも自然ななりゆきだった。しかし、一年間の、店に住み込み働きながら学校へ通う、という研修制度は山田さんにはハードだった。
 「賄い以外の食事は自炊だったのですが、疲れて作れないことが多く、体調を崩してしまいました。その時に、食べる事は生きることなんだな、と実感しました」。
 心身ともにバランスを崩しながらも高校を卒業し、栄養学を学ぶため短大に。しかし体調は戻らず一年間の休学ののちに中退した。それからはカウンセリングを受けたり、メンタルクリニックに通ったりの日々。精神の病気の診断を受け、治りますよと出されたたくさんの薬も効果は現れず、苦しい日々が続く。思考が止まってしまい、集中力が続かない、やる気が出せない…。最終的には味覚障害にもなり料理の仕事を辞めざるをえなかった。
 「自分はこの先も定職に就く事ができない人間なのかもしれない…」

 ある日、「君の病気は気のせいだから」と言ってくれた人がいた。その言葉に山田さんの中で何かが外れた。「そうか、もう薬を飲まなくていいんだ」と心から思え薬をやめた。だんだんと失っていた味覚も戻り、そのときしていたホテルの接客業に、初めて仕事が楽しいと思えた。その出会いは彼の運命を大きく変えた。
 もう一つの出会い、それは昨年のこと。イベントを企画するので、そこで料理を出してくれないか、との依頼が持ちかけられた。イベントは成功し、そこから「美味しくておしゃれで身体にも優しい料理を作ってくれる人がいる」と口コミで広がった。それが出張料理人という仕事の始まりだ。出会いに恵まれ、今の自分があるという山田さんは、 「本当にそれまでの自分とガラリと変わりました。毎日のように仕事があっても、深夜2時まで及ぶ作業があっても、以前のように動けなくなることはもうないですね。」この仕事が自分にあっていることを実感している。
 「今回のこの取材もそうですが、仕事のお話しをいただくということは、『考える前に動け』ということなんだと思えるようになりました」。

 出張料理という仕事はまだ始まったばかり。だが、ゆくゆくは自分の拠点となるスペースがほしい、そこでイベントも開けたら、と思いは膨らむ。できたら携帯の電波が届かないようなところにある古民家が理想的。今も過敏症ぎみな山田さんは、香料、電磁波なども苦手という。
 「今は情報量が多すぎる社会。限りなくオフグリッドに近い場所に足を運んでもらって、のんびりくつろいでもらうのもいいんじゃないかと思うんです」
 多くの人に、心も身体も整えて健やかな日々を送ってほしい。自分の料理がささやかでもそのきっかけになれたら、と山田さんは今日も厨房に立つ。

写真上・毎月第1・3火曜日に開催される「行き当たりばったり食堂」(200号参照)に山田さんが参加した時の大根ステーキ。盛り付けが繊細。
写真下・栗と鶏肉のガランティーヌ 栗ソース和え。(秋の創作料理)

山田さんは食事の後には必ずコーヒーまたは紅茶・ハーブティーを淹れる。一期一会の心で、目の前の人に心を込めて。
「香り、味、時の流れが至福の極み。こういう時間が好き」、と依頼者は口をそろえる。取材の後にも淹れてもらった。彼の所作に見惚れた。

●やまだ こうへい
出張料理をメインに、イベント、マルシェなどで腕をふるう。料理のジャンルは主にイタリアン。少しフレンチ。たまに和食。オリジナリティ溢れる料理が多い。趣味は読書で、読書会にも参加。繊細で食べる人に優しい料理と口数少なく穏やかな人柄にリピーターも多く、「料理を哲学する料理人」と呼ぶ人も。インスタグラムは「料理人 山田航平」で検索。



vol.201 夢か悪夢かリニアが通る!vol.30

 大深度事故で「仮移転」

「国交省、議事録を改変 座長発言、説明せず大幅に」。静岡新聞は4月7日、国土交通省のリニア中央新幹線有識者会議の議事録の大幅な書き換えが行われていたことを報じました。問題になったのは2月28日の第9回会合の議事録。福岡捷二座長(中央大教授)の発言部分が趣旨が変わるほどに書き換えられていました。そもそもこの会議は、南アルプスを貫く巨大トンネル建設の影響で大井川の流量が減る問題などを話し合うため昨年4月スタート、10回の会合を重ねてきました。静岡県と約束した「会議の全面公開」の代わりに国交省は議事録を公開していますが、委員が匿名であることや座長が取材に応じないことが批判されてきました。今回はリニアの大深度地下工事でも起こる恐れがある陥没事故のその後をお伝えします。           井澤宏明・ジャーナリスト

50戸が対象に

 東京都調布市の住宅街で昨年10月に起きた高速道路「東京外郭環状道路」(外環道)の陥没事故。東日本高速道路(NEXCO東日本)は3月19日、陥没の原因となった地下シールドマシン工事により緩んだ地盤を補修するため、住民に「仮移転」を要請する方針を明らかにしました。多くの住民にとって「寝耳に水」の出来事でした。
 移転対象の家屋数について、NEXCO東日本関東支社の加藤健治・建設事業部長は記者会見で「調査をしていかないと、具体的な家屋数は出てこない」と明らかにしませんでしたが、説明を受けた住民らによると、約50戸が対象になるそうです。
 地盤補修工事には2年ほどかかるため、住民を「仮移転」させたうえで、住宅を壊して更地にし、工事後に住宅を再建して戻ってくださいという、人を食ったような話です。
 会見には、事故を受けてNEXCO東日本が設置した有識者委員会の小泉淳委員長(早稲田大学名誉教授)も同席。被害を受けた住宅地に、陥没を起こしたトンネルと並行してもう1本のトンネルを掘削する予定であることを不安視する質問に対し、「(地盤補修で)原状回復するといっても全く同じようにするわけではなく、セメント系のものを入れたりするので強くなる。お隣(のトンネル)を掘る場合には、強化された、地盤改良された土の中を掘ることになるので心配はしていない」と、住民をそっちのけにしたような回答で応じました。
 「地上には一切影響しない」ことを前提にした「大深度法」の改正が必要ではないかという問いに対しては、「思いません。リスクをゼロにすることはできません。リスクが大き過ぎるから、もう少しコストを上げようとか、リスクが少ないなら、もっとコストを下げていいだろう、そうすると大事な税金を他の工事に回せるとか。それを判断するのが我々技術屋だと思っている」とごう慢とも思える持論を展開しました。
 さらに、「『ゼロにはできない』と小泉委員長が言ったリスクを、住民が背負わされているのはおかしくないか」と問われると「それを言われると、すべての工事はできなくなる」と回答。昨年12月の会見と同じように、専門家の誇りは一片もうかがえませんでした。

強制移転の雰囲気

陥没事故を受けた住民説明会で補償や地盤補修の対象範囲が一方的に示された(4月3日、調布市立第四中学校で)

 NEXCO東日本は4月2日と3日、住民説明会を陥没地点に近い調布市立第四中学校で開きました。事故を受けた一連の説明会では初めて、報道陣の取材を受け付けましたが、目についたのは、陥没「事故」を「事象」と言い換える不誠実さ。住民への補償についても「個別に対応する」と繰り返し、住民が結成した団体との交渉をかたくなに拒絶する姿勢を見せました。
 説明会後、被害を受けた住民たちが作る「外環被害住民連絡会・調布」のメンバーは取材に応じ、「シールドマシンの掘削で緩められ壊された地盤は、わたしたちのものです。元通りに戻してください。私たちの平穏な暮らしを奪い、さらに地盤を補修するから『住民は立ち退け』などという事業者の勝手な論理は許されません」と声明を読み上げました。
 住民の中には新築に越してきたばかりという人もいます。共同代表の一人は「事業者が壊した、緩ませた地盤なのに、あたかも住民のために補修するから、ああしなさい、こうしなさいという雰囲気。強制的に移転しなくちゃいけないかのような雰囲気があります」と、やりきれない胸の内を訴えました。

説明会終了後に、苦しい胸の内を語る住民ら



vol.201 ボーダーレス社会をめざして vol.60

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

障がい者の人権

 「子どもを施設に入れたい」という若い親御さんに10年程前に、富山で出会いました。パネリストとして私は、地域で障がいのある人がいきいきと暮らすためにどうすればいいだろうか?グループホームではどのような暮らしをしているかを具体的に話していました。お子さんが小さいのに何故そんな早くから施設に入れることを考えるのだろうか?障がいのある人が、地域で何とか暮らせないだろうか?そればかりを考えていた私には、かなりショックでした。悔しくて涙がこぼれ、止まりませんでした。富山だからこんな考えをするのだろうか?と考えてみたり、障がいの重い軽いからくる考えなのだろうか?その会場では、入所施設で働いている人が、施設の内情を詳しく話してくれ、できれば地域で暮らそうという空気になりましたが、子どもとは言え一人の人として考えて欲しかった。
 今では、障がい者の「意思決定支援」が大切にされ、自分の思いを言葉にできない人の意思決定をどのようにしていくか、支援者、家族がすべてを決めてしまわないようになっています。厚生労働省はガイドラインを出し、最後の手段として本人の最善の利益を検討するようにしています。本人の人権を守るため、支援者は一生懸命取り組んでいます。
 そんな時代に、ある講演会で「あっちゃんの事、講師の人が話してたよ」と。何の連絡もなく、勝手に実名で息子のことが話されていました。障がい者の人権をどう思っているのでしょうか?障がい者を語る前に、障がい者についてどのような勉強をしてきた人なのでしょうか?他人の事を語る資格があるのか疑問です。
 私たちは、何か問題が起きると、まず立場を置き換えてみることをします。もし私が同じことをされたらどう思うのだろうか?今回は、明らかにNOです。知らない所で私の人生を語られるのって、どう考えてもおかしいでしょう。失礼極まりない話で、障がい者に関しては考えが甘いのでしょうか?頭の中では平等という事は分かっていても、無意識に差別をしてしまっていたのでしょう。小さい頃から障がいのある人についての教育を受けてきていない、また接してきていないから仕方がないことかもしれません。
 しかし、そんな事は言い訳にはなりません。普通に人権を考えたらとんでもない話なのです。抗議をし、本人に分かりやすい言葉で謝ってもらい、二度と息子の話はしないという約束をしましたが、釈然としないまま終止符がうたれました。
 私がこのコーナーで息子、娘の話を書きますが、二人ともに了解は得てあります。親子であっても別人格の2人なのですから、当然なのです。


vol.201 菌ちゃん野菜応援団 vol.22

春たけなわ 春をご賞味あれ‼

 どこを見ても春、春、春ー。美しい季節ですね。
菌ちゃん畑にも春の息吹がたくさん!!新しい1年が始まるんだなぁとわくわくします。
 普段は野菜を育てている私たちですが春はちょっと別。微生物たっぷりの畑には食べられる野草もたくさん生えてくるんです。

 よもぎ、のびる、からすのえんどう、はこべ、にら等々。これでもかこれでもか!と生えてくる野草たち。

 畑としては雑草だらけにみえてうんざりもするんですが、ぜーんぶ食べられるんですよ!食べなきゃもったいない!!もうもう、畑にいくたびにせっせと取っては食卓に乗せていきます。てんぷら、カレー、うどん、パスタ、おやつ。ありとあらゆる料理にすこしづつ、時にはたんまり
野草がはいります。
みつろうとあわせて保湿クリームを作ったり出きるのも手作りならではの醍醐味。
種をまいていないのに、耕してもいないのに、どんだけでも生えてくる野草達。逞しいなぁ、と思います。

この逞しさをいただいて私たちも夏に備えていきますよー。野草はあくがあるものも有りますので、油で揚げる、炒める、茹でるなどの下ごしらえをしてから使ってくださいね!よもぎは5月いっぱいは食べられますのでぜひ。血がきれいになりますよー。


vol.201 未来に続く暮しの学びPrt-42

Art with love foundation.

 ブリスベンにあるアートウェアハウス。Art with love foundation というところに行ってきました。誰もが無料で自由に絵が描けるとか。そこは広いウェアハウス(倉庫)だった。

 すでに30〜40人くらいの人たちが楽しそうにおしゃべりをしながら絵を描いていた。ここにあるものすべてを好きに使っていいのか?ととまどって見回していると、一人の女性が、「ここは初めてですか?イーゼル、キャンバス、アクリル絵の具、油絵具、筆などすべて、使いたいものを使っていいのよ」と。
さらに、創始者のStephenさんが6年前にこの倉庫を買って、6人ほどのアートクラスをはじめたという。そして「人々が集まって描きたい絵を好きに描ける空間を作りたい。気楽に集える場所を提供したい」という思いがつのりArt with love foundationという形になったと説明してくれた。

 キャンバスと絵具の色を選び、絵を描き始めるとStephenさんがみんなの周りを歩きまわりながら、コメントしたり、ちょっとした技法をアドバイスしたりしているのに気が付いた。彼はとっても気さくな人柄で、私たちを歓迎してくれた。「難しく考えずに、リラックスして描けばいいよ。質問があればなんでもしてね」と。なんてやさしくて、おおらかな人だろうと、こころを打たれた。

画材は何でも揃っている。すべて無料。

 私のような絵描きには夢のような空間で、人々が楽しく絵を描きながら交流をしているなんて、こんなにも平和で創造的な空間がこんな身近にあるなんて!ととても感動した。さらにすべて無料!私たちを含めここにいるすべての人は、Stephenさんの粋なはからいに敬意を表わさずにはいられない。

 自分の財を、社会と芸術のために使う…それは人々の精神によい影響をあたえ、かつ文化的・平和的なものになる。そんなことを改めて気づかせてもらったArt with love foundation 。この施設は週に2回。朝8:30〜11:30まで開いている。オーストラリアのほかにはイタリアのフローレンスにも施設がある。まさにアートは平和!     YAO


vol.201 子ども達の給食をオーガニックに

 昨年11月に安田節子※さんの講演会へ行き、給食をオーガニックにしたい!この想いを友達に伝えたい!と動き出してから、沢山の方と出会い、子どもたちのために給食のオーガニック化を目指す活動団体「未来をつくる給食♡ぎふ」として、大きく動き出しました!
 私たちはお母さんたちの集まり「子宝のさと」です。実現に向け署名を集め、今年12月の岐阜県議会に請願するため活動しています!
 子どもたちの心身の健やかな成長のために「安全な食べ物」はとても大切と思っています。昨今、急激な増加傾向にあるアレルギー、発達障害などの原因の一つとして食品に含まれる農薬や食品添加物が問題視されています。北半球の1/4のミツバチがいなくなった原因も農薬という事で決着したようです。関わって分かったことですが、既に日本各地で給食のオーガニック化が大きなうねりとなっています!
 千葉県いすみ市では全市立小中学校の給食のご飯は全量を農薬・化学肥料不使用の有機米です。いすみ市では2013年に「自然と共生する里づくり」の一環で、当初参加した農家さんは3人。そこから始まり、2017年には23人、約2300人分の給食を賄っています。この有機米はJAが販売しています。(韓国ソウル市でも2021年からすべての小中高校でオーガニック無償給食を全面実施と発表しています。) 
 そして、私たちが署名をはじめるきっかけになったのが、岡山県でお母さんたちが立ち上がり、オーガニック給食にするために1年で県内外で8000筆もの署名を集め、県の議会で採択されたこと!これなら私たちにもできる!この流れを岐阜県でも起こしたいと思いました。
 私が生まれ育った岐阜県で、すべての子どもたちが平等に食べられる給食をオーガニックへ段階的に切り替える!これは、激減している農家さんの安定した暮らしに繋がり、新規就農者を生み、省エネルギーで、環境に良く、地域に素晴らしい循環を生みます。この動きから子どもたち、お孫さんたちが安心して暮らせる岐阜県にしていきたいです!     (菱川智恵)

※食生活センタービジョン21代表。1990年〜2000年日本消費者連盟で、反原発運動、食の安全と食糧農業問題を担当。食の安全と食糧農業問題を担当。1996年~2000年市民団体「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」事務局長。表示や規制を求める全国運動を展開。2000年11月「食政策センター・ビジョン21」設立。情報誌『いのちの講座』を発行。埼玉大学非常勤講師などを歴任。著書『自殺する種子 アグロバイオ企業が職を支配する』ほか多数。


vol.201 ここいく日記 リレートーク はじめの18歩!

わたしとわたし ぼくとぼく

まずは授業の報告!!
 今年度最後の授業は、まだ小さなお子さんがいるお母さんグループからの依頼でした。参加の子どもたちの年齢は1歳~11歳と幅広く、反応もそれぞれですごく楽しかった~(^^♪
 最後のメッセージ、絵本の『おかあさん だいすきだよ』を読んでいると、「ママだいすきだよ」と小さな子のつぶやきが聞こえてきて、会場中がキューンとなりました。私も息子たちにもこんな時があったなぁ~、もっともっとぎゅっと抱きしめておけばよかった…と、お母さんたちと一緒に涙。私たちすぐ泣きます(笑)

そしてこの授業を見学しに来てくれた若者がいました。
 Rさんは、ここいく10周年記念公演で初めて「いのちの授業」を観て、偶然だったかもしれないけれど、ジェンダーの場面で女の子っぽい男の子役をやった私に声をかけてくれました。知らない人に声をかけるだけでも勇気がいっただろうに、女の子らしい服が嫌なこと、女らしさを求められたり、他人の目を気にしたりと辛かった自分のことを話してくれました。
 そんな彼女が見学の後の交流会で伝えてくれた「ここいくと出逢い、男らしく女らしくではなく、自分らしくでいいことが分かり、それだけで楽になった」と。嬉しくてまた泣きそうに…。「今、自分らしい好きな服が着られて、ファッションが楽しい~」と語る彼女の笑顔は輝いていました。

 その日の夜は、各務原子ども劇場の例会で、劇団うりんこ公演『わたしとわたし ぼくとぼく』を観てきました。

あらすじ    
 保育園に勤める30歳の健人は、男性保育士に対する保護者の偏見に落ち込み、ゲイである秘密を打ち明けられず引きこもってしまった。ある日、鏡を見ていると、1人の少女が現れて言った。「世界を救って欲しい」少女に導かれて1997年の教室へ。そこで10歳の自分と出会い…と、物語は進んでいく。

演劇の力って本当に凄い!
 人と違う自分はおかしい?誰でも一度は悩み苦しむ。普通ってなんだろう?体が違う、声が違う、考え方感じ方も違う。みんな違って当たり前なのに比べてしまう…。人との違いを受け入れ、違いを楽しむことができたら、「自分とは違う人」を大切にできる世界をつくることができるはず!!そんなうりんこさんの想いがずっしり伝わってくる作品でした。
 小学校での子どもたちのやり取りは、日常ありがちな光景で、とてもリアリティがあり、自分と重ねて観ていた子もいたと思う。自分らしくいることを理解されず苦しむ健人とみどりちゃんが自殺しようとするシーンは、胸が痛くなった。現実、若い人たちの自殺者が悲しいかな増えています。ここいくの授業でも「あなたはあなたのままでいいんだよ」と伝えますが、こうやって作品を通して想像したり、想いをはせる体験ってとても大切と思うので、ぜひ学校公演で取り組んでもらい、たくさんの子どもたちに届けて欲しいです。
 他にも心に残るシーンがたくさんありましたが…母親との関係で悩んでいるみどりちゃんに、おばあちゃんが言った「親は子どもの幸せを願うものなんだよ」という言葉に涙が溢れました。一緒に観てくれた保育士の長男にも、何か届いていたらいいなぁと思いました。

担当:ここいくメンバー・小田 佐知子でした。
ここいく☎090-3446-8061(中村)


vol.201 新連載 南の島よりハイタイ

めんそーりよ 沖縄(おいでなさいね)
ぐすーよー(皆様)ちゅーうがなびら(こんにちは)
加藤麻美やいびーん(です)

 夫の仕事の都合で思いがけなく沖縄と縁ができ、岐阜と沖縄を行き来して今年で12年目になります。皆さんは、沖縄にどのようなイメージを持っていらっしゃるでしょうか?

 私は、海の美しさに魅せられ、石垣島から船で30分ほどにある黒島に通った時期もありました。
 実際に沖縄に住んでみると、いろいろなことが見えてきました。現在も問題山積みですが、想像を絶する大変な過去を乗り越えてきた島であることを教えられました。地理的にも遠いので、「美しい海」以外大して関心を持っていませんでしたが、同じ日本人としてこの南の島にも、もっと思いを寄せたいと思うようになりました。特別な優しさを持っている、うちなーんちゅ(沖縄人)。そしてこの島に魅せられ、本土から移住して共に生活されている多くの人々。ワクワクさせられる魅力ある方々や場所。生き物たち。そして文化や行事など少しずつお伝え出来たらうれしいです。

 今回は、沖縄に来て間もないころ、秋に初めて見た赤い実に感動した月桃(サンニン)を紹介しましょう。庭に月桃を植えているお宅も目につきますが、道端などにも自生していて至る所で見ることができます。うりずん(春分から梅雨入りまでの過ごしやすい季節のこと)の頃、蘭に似たきれいな花を房状に垂らし多数咲かせます。名前の由来は蕾が桃のようだから、という説も。葉から採れる油は、アロマオイルや虫よけ、石鹼にもなります。さわやかな香りが心地よく、私も愛用しています。乾燥させた葉は月桃茶に。粉末にしてそばに練りこんだ月桃そばもとても美味で大好物です。また、沖縄では欠かすことのできないムーチーは、旧暦の12月8日に月桃の葉で包んだ餅を作り、お供えして子供の健康を祈願する行事があります。もちろん、スーパーでも販売されますが自宅の庭にある月桃の葉で各家庭秘伝の、ムーチーも作られます。そんなムーチーをいただくと、幸せな気持ちになります。


かとう まみ プロフィール
岐阜市生まれ。桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ専攻卒業 ・2015年5月:写真集「奥飛騨に響く種蔵の里」(岐阜新聞社)出版 ・2019年6月:写真集「ばあちゃんぼくが継ぐ」(岐阜新聞社)出版・個展3回 岐阜市美術展委嘱作家岐阜市美術展部会推進委員・岐阜県写真作家協会会員・二科会写真部岐阜支部委員・ギフフォトクラブ会員


vol.201 プレゼントコーナー

1-あなたが人の優しさを感じた時は?
何気ない、小さな出来事でもOK! あなたの温かくなった気持ち、教えてね。
2- 気になるにらめっこ紙面での広告
3- 気に入った記事、気に入らない記事の
 タイトル1つ・その理由もお書きください。
4- ご希望のプレゼント名
(第1希望・第2希望を必ずお書きください)
 ※B、Dは編集室まで受け取りに来られる方。
5- 本紙をどこで入手されましたか?
6- 氏名、年齢、住所、郵便番号、電話番号、家族構成

プレゼントご希望の方は
ハガキまたはe-mailで、上記のアンケートを1〜6までご記入の上、編集部・プレゼント係りまでお送りください。
〆切:5月25日 当日消印有効。

宛先
〒504-0855 各務原市蘇原新栄町3-15
e-mail: info@niramekko.com
※お寄せいただいた個人情報は、本紙プレゼントの発送に限り、 使用させていただきます。
※当選の発表は発送をもって代えさせていただきます。


A-シャボン玉 酸素系 漂白剤 引換券
和楽様より…3名様

漂白、除菌、消臭の効果がある酸素系漂白剤。色柄物の洗濯や染み抜きにも使えます。成分は過炭素ナトリウムなので、塩素系漂白剤のようなツーンとした臭いもなく、塩素ガスが発生する危険もありません。商品は引換券をお持ちの上、和楽さん(愛知県一宮市時之島丸先2-12)店頭でお受け取りください。


B-写真集「ばあちゃん ぼくが継ぐ」
  加藤 麻美様より…5名様

新連載の「南の島よりハイタイ」著者、加藤麻美さんの写真集。800年前から変わらぬ製法の山中和紙の手漉き職人、柏木一枝さん(83)とその家族の姿を追い続けました。にらめっこ編集室でお受け取りください。


C-CINEX 映画招待券
 シネックス様より…ペア3組様

本編前に流れる予告編、多くの映画チラシ、パンフレットなど、映画館ならではの楽しさをぜひ味わってみて!
写真は「旅立つ息子へ」より。柳ヶ瀬のシネックスでご利用になれます。


D-にらめっこ産 鞍掛豆(くらかけまめ)200g
にらめっこより…2名様

黒い模様が馬の背に掛けた鞍のような鞍掛豆。長野県の地方野菜で 希少とされている豆を、にらめっこ農園で化学肥料、農薬不使用で育てました。塩ゆでなどでいただけば、箸が止まりませんよ♪にらめっこ編集室でお受け取りください。


vol.200 子育て・基本のき ゴリラの子育て


Prologue
 私は何か落ち込むことがあると、東山動物園のゴリラに会いに行っていました。なぜだかわからないけれど、ふぅ〜と肩の力が抜け、ホッとするのです。その当時はイケメンゴリラ「シャバーニ」(写真・下)はおりませんが、そんなことはどうでもよくて、ゴリラと対面するとなんか包み込まれるような大きな力を感じられたのです。どっしりと構えて、向こうもこちらも見ています。まさに対面。私は自分の不甲斐なさや、自信喪失の原因を、一人でブツブツと対面してくれたゴリラに話しかけていたように思います。そして彼(彼女?)はちゃんと聞いてくれていたように思いました。そうすることで、なぜかスッキリして帰路につくことができたのです。

今、東山動物園の人気者・シャバーニ

 その後、各務原に住むようになり、「にらめっこ」を創刊したのが1987年。私自身が子育て真っ最中でリアルタイムにさまざまな問題が降って湧いてくる日常でした。そんな時、ゴリラの子育ては大いに学ぶべき要素が多いと聞き、犬山にある京都大学の霊長類研究所の山際寿一先生をたずねました。そこで、ゴリラについて色々なお話を伺ったのです。そしてこの話は、今まさに子育て真っ最中のお母さんたちにも聞いて欲しいと強く思い、山際先生の講演会を企画し先生にお願いをしました。快くお引き受けくださったお話の内容は、にらめっこVol.20号に掲載されています。約30年も前のこと!子連れでの講演会はとても賑やかで、山際先生もちょっと困惑顔でしたが、印象に残る話をここでおさらいをしてみたいと思います。
 ゴリラの子育ては「子育ての基本のキ」。30年経った今もその基本は変わらないと思いました。


 今日は「ゴリラの子育て」について話します。あとで子育て中の皆さんの感想を聞かせていただきたいと思っています。
 私がサルの研究をしているわけは、猿は人間が進化してきた道を知るのに都合のよい対象だからです。人間の過去の恋愛、社会、子育てを知る参考になるからです。
 現代の人間社会は高度に文明化されていてお互いに接触しあわないで生活できます。直接、面と向かって話したり、身振り、目などのコミュニケーションが家族の中で非常に大切であるにも関わらず、電話などに頼って忘れているように思います。人間の生活の中で過去から変わらない部分があると思うのです。そしてそれを失ってしまったら言葉で納得しても体が納得しないということがあるのではないか、とそんなことを考えながら私はゴリラの研究をしてきたのです。
 ゴリラはいままで考えられていたよりずっと穏やかであることがわかりました。

 一頭のオスのゴリラと数頭のメスのゴリラからできています。メスは乳児を持つゴリラと、持たないゴリラに分かれます。乳児を持つゴリラはその間、3年間発情しません。子どもは母ゴリラが発情期になると群れをでて行きます。
 オスは「ひとりゴリラ」になり、メスを見つけて新たに群れを作って行きます。メスは「ひとりゴリラ」にはならず、他の集団に入るか、またはひとりゴリラを一緒になります。

 ゴリラの社会では遊びは非常に重要な働きをしています。遊びを通じてお互いの社会関係を維持しています。ゴリラはよく笑います。笑うことによって相手に自分の喜びを伝えるのです。
 大きなゴリラが何か食べているところに、小さなゴリラがやってきて顔を見つめられたりするといたたまれなくなって食べ物を譲ってやることがあります。このように、大きなゴリラ、強いゴリラは遊びを通じて小さいもの、弱いものに同調することを覚え、社会関係がうまくいっているのではないかと思われます。
 また、大きなゴリラが、小さなゴリラに手を出したことを、第三者の小さなゴリラがいさめることもあります。その場合3頭は見つめ合うだけで、暴力はありません。大きなゴリラは小さなゴリラの仲裁を受け入れます。大きなゴリラほど自制心を持っているようです。

  動物の社会では父親が認知されていないため、例えば息子サルが大きくなると、大人のサル同士としてしか、認知できません。しかしゴリラ社会では父親が育児に参加するため、子どもたちは生涯父親を認識していると思われます。育児関係にあったオスとメス(母親と息子、父親と娘)は配偶者関係を持てません。

  ゴリラの一生は50年くらいですが、ある年齢に達するとオスのゴリラの背中に白い毛が生えてきます。そのため「シルバーバック」と呼ばれます。群れを率いるシルバーバックは、群れを守り、メスには優しくし、子どもの保護者となります。そして他の群れのオスに対しては恐ろしい存在でなくてはいけません。

 シルバーバックの子育ては、子どもと一緒に遊んでやり、子どもを保護するもので、母親のおっぱいを通じてのそれとは違っています。父と子が、必ずしも血縁関係があるとは限りません。
 しかし、これによりメスに過大な負担となっている子育てが分担され、メスは自由になり、出産、授乳などで失われた体力を回復することができます。あるいは乳離をした子を置いて他の集団に移ることもできます。
ゴリラの集団の中で、乳児の時に母親が死んだ場合、他のメスがおっぱいをやりますが、授乳期を終えた子どもはシルバーバックが面倒をみます。
 ゴリラは毎晩ベッドを作って寝ますが、5歳くらいまでは自分では作れません。母親のいない子は、シルバーバックが自分のベッドに入れ、そして抱きしめてやり、彼の大きなお腹で遊んでやります。小さい子には接触が必要で、足りないとフラストレーションを起こすのです。

 子どもがシルバーバックになつくには、メスの巧みな戦略もあります。成長した子どもは次第に重くなり、自分が食事に行く時に連れていけないので、シルバーバックのそばにそっと置いていくのです。他のメスも同じことをするので、シルバーバックの周りは保育所のようになります。初めは泣いていた子どももシルバーバックが優しく、よく遊んでくれるので次第に関心が母親からシルバーバックに移ります。そうするうちに夜もシルバーバックの周りにベッドを作るようになり、母離れしていきます。その後、シルバーバックと子どもたちは遊びながら、かなり長い間、大人になるまで親密な関係が続きます

   ゴリラの社会の中で、子どもたちが父親母親から独立していけるのは彼らが小さい時に非常に熱心なケアを受けているからではないかと思います。人間とゴリラ社会を一緒にすることはできませんが、人間が古い時代から持っていた親の子結びつき、別れといったものをゴリラ社会が譲り受けているのではないかと思うのです。

にらめっこvol.20に一部加筆したものです。


Epilogue
編集を通じていろいろな方にインタビューをさせていただきました。ゴリラと意思疎通は叶わなくても、対面するだけで気持ちが落ち着く…そう!この対面が重要なんですね。それはまさに「にらめっこ」です。笑ったら負けよ!あっぷっぷ〜、のにらめっこ。ネーミングの由来はここ。忙しくても1日に一度はちゃんと目と目を向き合って、話をしようって。200号という機に改めて子育ては自分育てであるとともに、社会が育つ一役を担うことだと、思うのです。


ゴリラはなぜ胸をたたくの

ドラミングの秘密
ゴリラといえば、2足で立ちあがってこぶしで胸をたたいている姿を想像しませんか。これはドラミングと呼ばれています。まるでドラム(太鼓)を叩いているように見えるし、音もぽこぽこ、ぽこぽことあたりに響きわたるからです。 でも、実はゴリラはこぶしで叩いてはいません。 よく見ると、手の平で叩いています。人間のドラマーだって太鼓をたたくときは手の平を使います。そのほうがいい音が出せるからです。
叩き方だけでなく、ドラミングは昔から大きな誤解を受けてきました。それは、ドラミングはゴリラが攻撃するときのサインだという考えです。
 19世紀の半ばごろに欧米人の探検家がアフリカで初めてゴリラに出会ったとき、勇壮なドラミングを見て肝をつぶし、ゴリラがとても暴力的な生き物だと誤解したのが始まりです。以来、100年以上もの間ゴリラは獰猛な野獣と見なされてきました。1930年代に製作されたキングコングという映画はゴリラがモデルになっていて、薄気味悪い笑いを浮かべて胸を叩きます。
でも20世紀の後半に野生のゴリラの研究が進むと、ドラミングは決して攻撃の前触れでではなく、むしろ相手と戦わずして引き分けるための表現であることがわかってきました。私もゴリラの群れの中で何度もドラミングを目撃しましたが、決して危険を感じることはありませんでした。
 胸をたたくとき、オスは慎重にあたりを見回して仲間にぶつからないように気を使っています。人間でも自己主張をしたいとき、机をドンとたたいたり、足をふみならしたり、腕を振り回したりします。ゴリラのドラミングも自己主張のために行われるのです。おとなのオスばかりでなく、まだ1歳になったばかりの子どもから大人のメスまであらゆる性・年齢のゴリラが胸を叩きます。ゴリラは生まれつき負けず嫌いです。胸に太鼓をもっていて、不満を感じるとすぐに胸を叩く。そう考えたら、ゴリラもドラミングも正しく理解できるだろうと思います。 (写真・文 山極 寿一)

Q&A 山際先生に聞いてみた!

Q:ゴリラを見ていてすごいと思うことは?
A:行動の美しさです。特にオスは自分の相手にどんな効果を与えるか、ちゃんと頭に入れて行動しています。ですから、全ての行動がピタリと型にはまって美しいのです。それが、相手に与えるインパクトは大きいと思います。人間も昔は自分の行動の効果を計算して生活していたと思いますが、現代では政治家か役者くらいです。こういうコミュニケーションというものを、人間は忘れてはいけないのではないかと思いました。

Q:6歳と3歳の男の子が母親にベッタリです。人間は甘やかしすぎですか?
A:ゴリラも個体差がすごくあります。母離れができないゴリラは遊びが下手です。あまり仲間と遊びません。多分、複数のゴリラとの間で、自分をコントロールする勉強ができていないのでしょう。

Q:動物園の動物が子育てをしなくなっているのと、今、人間の子育てがよく取り上げられ、問題とされるのは、同じ原因なのでしょうか?
A:動物園では早くから親から離すため、子育てを学習する場がないのです。学習する機会を与えれば上手にできます。1回目はうまくいかなくても2回目は大抵うまくできるようです。
人間の方はもっと複雑なことが原因と思います。ゴリラ社会で
は生活集団=家族です。人間社会では、他のいろんな集団遍歴をするときのベースになるのが家族です。人間の家族は単独では成り立たないのです。そういう中で問題が起きてきたということは、単に母親の資質、能力、経験といったものだけでなく、社会のネットワークそのものが崩れつつあるのではないかと思うのです。特に価値観です。「何が一番大事か」ということがわからないのです。昔は価値観がしっかりしていたから、それにそって子育てをしていけばよかったのです。しかし、今はそれぞれの社会習慣や生活様式によって色々な方法論があるため、完全なものを見つけ出すことが困難なのです。そこに問題があるのではないかと思います。  にらめっこvol.20に一部加筆したものです。


山極 寿一(やまぎわ じゅいち)
1952年、東京都生まれ。霊長類学・人類学者。京都大学総長。京都大学理学部卒、京大大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学、理学博士。ゴリラ研究の世界的権威。ルワンダ・カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンターのリサーチフェロー、京大霊長類研究所助手、京大大学院理学研究科助教授を経て同教授。2014年10月から京大総長、2017年6月から2019年6月まで国立大学協会会長、2017年10月から日本学術会議会長を兼任。『「サル化」する人間社会』(集英社インターナショナル)、『京大式おもろい勉強法』(朝日新聞出版)、『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』(毎日新聞出版)など著書多数。


vol.200 いきあたりばったり食堂

課題:フードロス、生ごみの循環を確立し堆肥に、捨てられる・もしくは土に埋め戻される規格外の野菜の価値を再認識したい。 
① 貧困をなくそう ② 飢餓をゼロに ⑪ 住み続けられるまちづくりを
⑰ パートナーシップで目標を達成しよう

いきあたりばったり食堂

捨てられてしまう運命だった野菜たちがこんなに見事に食卓に並びました。

 「いきあたりばったり食堂」が2021年1月19日にスタートしました。
 訳あり野菜(規格外、売れのこり、採れすぎ、自然災害や獣害などで出荷できない)から「創作料理」として食卓を豊かにできないか、そんな思いで開設された「いきあたりばったり食堂」。ネーミングの由来は、いつどんな形のお野菜が私たちの手元に回ってくるかわからないから、メニューも決まらないので、いきあたりばったり感覚で料理しよう!というもの。今回はスタートラインではあるが、準備の段階。調理要員とシュミレーションをかねて短時間に10品目をつくった。

 実際、訳あり野菜は・破棄される・加工品になる・安売りをする、というのが現状。農家さんの心情を思うと、この流れは回避したい。商品価値がないというだけで簡単に破棄されることが多い現実に、スタッフは心を痛める。
この循環を断ち切りたい、好転させたい!
 訳あり野菜の有用な使い道があれば商品価値は残るはず。いきあたりばったり食堂は、地元の「ソウルフード」を作るべく、みんなで素材を目の前にしてレシピを開発していきます。参加者が一緒につくることでレシピも覚えられ、食べ物の背景も知る機会にしたいとのこと。そんな一挙両得な食堂。しかも、無農薬野菜ばっかり!!!こんなすごい食堂、他にあんまりないんじゃない?とスタッフはちょっと誇らしげ。
 「いつかはランチ提供とお惣菜販売とかやれたら面白いかもね。」「ここには広縁があるので、えんがわカフェ!なんかもいいなぁ。」と未来に夢をつないでいく話は尽きない。

 初回は、大根、人参、小松菜、里芋、かぶ、じゃがいも、キャベツ、お米、賞味期限すれすれの油揚げ、もやし、頂き物のりんご…、いろんな食材が集まりました。それらの素材の旨みを生かそうと、調味料は最小限。バジル塩、ローゼル塩、甘酒、しょう油、麹などで味付け。
 「どうやって食品ロスをなくすか、人の意識を変えるか、SDGsの観点からも考えながら続けていきたい。」と「つくろ!の会」代表 各務亜紀さん。大きなテーマに見えるが、できることから始める。Think Globally Act Locally(地球規模で考え、足元から行動しよう)
がここにも芽生えています。

「いきあたりばったり食堂」は毎月第1•3火曜10時〜 にらめっこフリースペースにて 参加希望は、つくろ!の会まで

連絡先
ここね・つくろの会 代表 各務亜紀
☎ 070-2626-6675 Mail/inotitoegao@gmail.com
つくろの会 公式LINE thhp://lin.ee/i9wviWr
ライン登録すると「つくろの会」の最新情報が送られます。


vol.200 わたしのSDGs


1.2              (ベイべりー 今瀬 桂子)

① 理由:ものが溢れている。物が作られて消化されるまでの負担が軽視されている。
② 懸念:商品には作る責任も使う責任もあることを感じる。原材料から商品になり、梱包され(目に見えない梱包材などの商品)、移動しながら(エネルギーの消費)、購入してもらうためのパッケージがされ(時に過剰包装)、そして消費者が利用し消費(廃棄までのエネルギー)、在庫処分までもエネルギーが使われていく。今の商品の多くにはその点が重く受け止められていない。
③ 取組:素材を知る。商品を知る。商品の消費されるまでの一連の流れを読む。そして案内をして知ってもらう。必要な分を時に都合の良い容器に分けられる(素朴な)スタイル。包装が過剰にならないように心がけ、利用者さんにも持ち運びに気を配ってもらう事を提案することで、取り扱いの知恵や商品への気持ちを持っていただき「使う責任」を共に添いたいと思っている。


3.14.15        (開運プロデューサー 長岡 永峰)

① 理由:現代人の心と体の健康について心配。
② 懸念:いろんなことに依存している社会(薬物、ゲーム、ギャンブル、買い物等)。子どもの将来に危惧。(ゲーム、パソコンのブルーライトによる視力の悪化、依存、社会性の欠如)。保存料や添加物が人の体を蝕んでいると思う。産業廃棄物やゴミが世界中で大量に海に流れている。マイクロプラスティックやペットボトルの環境への問題。自然界に多大な影響を与え、生物の命が奪われている。発展途上国などの大量の森林伐採の問題。日本も便利さを追求し、大量に輸入している。何でも使い捨ての文化に危惧しています。
③ 取組:なるべくコンビニ食を避けるとか、物に依存しすぎないよう心がけている。添加物を避けた商品を扱っているお店を利用する様にしている。できることは少ないが、レジ袋削減、物の再利用、大事に使うことに心がけている。


1.2.3.4.5.8. 10. 12.13.14.15.16.17 (わらべ村 桜井 祐子)

① 理由・懸念:「この地球と、ここに生きるすべての生き物がいつまでも健やかで幸せでありますように。。。」創立当初からの変わらぬ想いです。コロナによる影響で、特に「社会的弱者」と呼ばれる方々の貧困や格差などが悪化していること。誰ひとり取り残すことなくSDGsの目標を達成するために、関心を持つ人、取り組む人がもっと増えていくことを願っています。
③ 取組:健全な生態系や水資源につながるオーガニックの食べ物や衣類、発展途上国の経済的自立や学校教育の促進につながるフェアトレード品、障がいのある人々の自立した生活の支援につながる福祉作業所の授産品、そうした製品と消費者さんをつなぎ、持続可能な消費を広げていくことを今後も大切に取り組んでいきたいです。


3.17            (ゆりかご助産院 赤塚 庸子)

① 理由:健康とは体だけではなく、心や精神状態も健康である状態が真の健康だと考えます。心も体も健康な時、人は自分以外の人や物や環境に配慮できるのではないかと思います。共生共存を考えた時、すべての人の健康と福祉は欠かせない大事な事のひとつだと思います。
依存ではなく支配でもない、強制でもなく我慢だけでもない。お互いがパートナーシップの精神をもって目標に向かった時、納得のいくゴールにたどりつけるのではないでしょうか。
② 懸念:自分の身体へのいたわりに配慮が少なく、頑張りすぎている方が多い様に感じます。誰かに管理され盲目的に従う、幼い頃からそうならないような思考のはぐくみ方が弱いのではないかと感じます。
③ 取組:開業助産師をしています。その方なりの健康を維持増進するためにどのようなサポートができるかを考えています。また、常に「あなたはどうしたいと考えていますか?」と問いかけをして対象者と一緒に考えていくということを意識しています。


7、11、12、13、14、15 (つくる みらいの会 今尾 幸子)

① 理由:環境汚染、資源の搾取、畜産や漁業による過度な開拓により、地球が今、悲鳴をあげている。一人一人が気づき、自分ごととしてとらえ、自然や動物、まわりの人にほんの少し優しくなることで、世界は変わっていくのではないかと思います。
② 懸念:今年、日本政府からもゼロカーボン宣言がなされました。CO2を減らしていくという動きはとても期待しますが、そのことにより、原子力発電を再稼働する方向にいかないことを願います。
③ 取組:まずは自分ができることを、自分の足元からということで、ごみ拾い、生ゴミ堆肥づくり、畑活、洗剤をなるべく使わない、マイボトル、マイバッグ、魚、肉類を減らす。買い物は投票だと思うので、販売元に注意してみるようにしています。


16       YAO(持続可能な暮らしのすすめ)

① 理由・懸念:人は平和の中に生きるために生まれてきたから。それぞれの意識がクリアになっていれば公平で、平和な人間関係のなかに生活していけると思う。でも現実は、見た目で人を判断したり、対等にかかわりあうことができていない。
③ 取組:先住民の人たちと話すことで、どんな肌の色であっても、どこから来たとしても、みな人間であるという意識をもって、かかわりあえる。たとえ合意ができなくても、おたがいを理解して、結論を出し合う。ACTIVE LISTENING, ACTIVE SPEAKING。積極的に聞き、積極的に話す。今に集中できるように意識しています。


4          (横山モータース 横山 智紀)

① 理由・取組:教育の本質は、幸せになること。そして幸せを感じられるには3つのポイントがあると思います。1つ目は、『人の役に立っている』と実感していること。お客様の役に立つ(ありがとう)をいただける活動を通して、この一つ目は手に入れる事が出来ます。2つ目は、『帰属意識』。仲間と共に作り上げる、人間関係が良好である状態の実現です。そのために選択理論心理学をベースにした教育を通して、良好な人間関係を実現し、仲間意識の芽生える組織づくりを行なっています。3つ目は、『自己成長』。9つのプロジェクトチームがあり、全て運営は社員主導で、自由に理念実現のための活動をするものになっています。積極的にチャレンジして経験を積む事で、社員の成長を支援しています。
③ 懸念:この3つのコンセプトへのコンセンサスが中々取りにくいというところです。


6、11     すべてに関心があるのですが…(匿名希望)

① 理由:6は私自身が教育に携わっているので。教育はより良い自分、より良い社会を創っていくのに不可欠だと信じています。11は今住んでいる街の風景や自然が気に入っているからです。
② 懸念:6は教育格差。11は街の過疎、高齢化。
③ 取組:6はより良い教育のため、私自身が学び続けていくことが大事。11は地域に還元される消費活動を心がけています。朝市で買う地元産の新鮮な野菜は身体も元気になる気がします。


読者から届いた「わたしのSDGs」

「13」 気候が大きく変わることで、私たちが生活しずらくなるのはもちろん、自然環境で生きている動植物たちにも大きな影響がある。これから先もずっと、きれいで美しい地球でいてほしい。 (各務原市 Yさん)

「11、12,14、15」 自然に関することは重要視したい。各務原は自然をこわし続けています。広い道路、大きなお店必要ない。境川から岐南への堤防の道路沿い、イオンの周辺、心が痛いです。 (各務原市 Oさん)

「1、4、8、10」 貧困が全ての元凶だと思います。そのためにどんな社会にするとよいかを、現状と理想を学校で教えることが大切。お金・働くこと・心穏やかに生活できる社会について、学校で教え、子どもたちで話し合える教育をすれば、世の中は変わると思います。「子どもこそ希望」だと思います。 (岐阜市 Nさん)

「1、2、3」 貧困、飢餓、健康と福祉。生きていく上での基本。すべての人に守られてほしい、お金ばかりでなく精神的なものも含めて。人と人とが繋がりにくい世の中へどんどん進んでいってしまっているので。(関市 Yさん)

「7、13」 原発はすぐに永久停止して欲しいです。気候変動が人為的というのは眉唾だと思っています。特にCO2が原因というのは原発推進に利用されてきたのではないでしょうか。小出先生、養老先生、等様々な方達もCO2は原因ではないと言っています。 (関市 Hさん)


vol.200 わたしたちのサスティナビリティ

東京大学 助教 工藤 尚悟

 サステイナビリティ(持続可能性)という言葉を耳にする機会が増えてきました。背景には国連が提唱する持続可能な開発目標(通称:SDGs)があり、目標時期の2030年が迫ってくるなかで、いよいよ本格的に動き出す必要があります。
 
 しかし、このサステイナビリティという言葉が意味するところについては、もやっとした掴みどころのなさを感じている方が多いのではないでしょうか。意味のところでひっかかってしまうので、実際の行動となるとますます距離を感じてしまうのではないでしょうか。
 
 ここでサステイナビリティの意味をその語源から確認したいと思います。サステイナビリティの語源はラテン語の”sustinere (to hold upright)”であり、その意味は「下から支える」です。ちょうど水をすくうために両手を広げたときのような格好で、何かを下から支え、手渡していくという意味です。
 
 さて、この広げた両手に何をのせて次世代へと手渡していきたいのでしょうか。またその実現のために、私たちは何をすればよいのでしょうか。こう考えることがサステイナビリティに取り組むことの本質です。
 
 サステイナビリティに取り組む時にもう1つ大事なことは、「どの主語で考えるか」ということです。私は、ここで「わたし」という個人ではなく、「わたしたち」という複数人の主語を用いることがとても重要だと考えています。
 
 なぜなら、「わたし」が大事にしたいものの追求は、時として他のわたし(=他人)が大事にしたいことと衝突してしまうからです。この時に起きがちなことは、どちらが正しいのかという正義の押し付け合いか、お互いを尊重するが故の不干渉です。これでは気候変動などすべての人々に関わる課題に取り組むことが困難となってしまいます。このような状況を回避するために、「わたしたち」という主語を用いて、次世代に手渡して行きたい物事や価値観を考えていくことが大切です。
 
 「わたしたち」という主語を使って、私たちがこれまで大事にしてきたことをまもりながら、次世代が暮らす社会において大切にされて欲しいことがきちんと大切にされるような仕組みをつくり、更にそのような考え方を次世代につなげていくこと。これが、わたしたちのサステイナビリティを実現していくことだと考えています。

工藤尚悟(くどうしょうご)プロフィール:秋田県出身。東京大学大学院新領域創成科学研究科・助教。サステイナビリティ学博士。研究テーマは「人口減少社会における持続可能な地域づくり」               https:///www.shogokudo.net


オンラインで、サステイナビリティ学博士工藤さんと対話しよう!この指とまれ〜

 私たちが住む地域をより良い形で次世代にバトンタッチしていくことを考え行動することが、サステイナビリティを実現していくことにつながります。前号の工藤さんのコメントの中にあった「まもる」「つくる」「つながる」をキーワードに、できることはたくさんあると思います。最低5人以上集まれば、「オンラインで工藤さんと対話する会」を実施したいと思います。
主催:つくる・みらいの会 (今尾)058-383-8666


vol.200 しょうがいをみつめる vol.11

共感すること、その人に向き合うこと

 音楽の授業で自分の好きな曲を紹介するコーナーを設けています。
 アニメの主題歌やガールズグループの踊れる曲、流行りの歌まで、毎回その子らしい個性豊かな音楽が紹介されます。聴いた後はその曲の好きなところ、いいなと思ったところを互いに発表し、素敵な曲を紹介してくれてありがとうとみんなで言って終わります。
 紹介する子はもちろんまわりの子たちも「今日は誰の番?」「どんな曲だろう?」とワクワクする、子どもたちにとって楽しみな時間になっています。

 ある時、先生たちのおすすめの曲を紹介するという日をつくってみました。
 洋楽や昭和から歌い継がれている名曲など、子どもたちが普段聴かないような曲が並びました。もちろん私も紹介しましたよ。改まって人に好きな曲を紹介することってちょっと照れますね。でも、真剣に聞いてくれる子どもたちの姿や「いい曲だね」と言ってもらえたことに、心がほっこりあたたかくなりました。
 ああ、自分の好きなことを知ってもらって、それを受け入れてもらえることってのは、こんなにも嬉しいことなんだ、と実感した瞬間でした。

 先日、研修を受けている時にこんな話を聞きました。
 「自閉症の子は人の心が分からないとよく言われる。それは、彼らが触覚過敏で抱っこされるのが苦手だったり、水の流れや換気扇の回転など特定のものに異常に固執したりと独特の感覚を持っていて、共感された経験が少ないから。自分を分かってくれる相手に出会った時、彼らも自分が好きなその相手のことを知りたいと思う」のだと。
  
 子どもの問題行動に直面すると、なんでこんなことをするのだろう、どうしたら言うことを聞いてくれるのだろう、と思ってしまいます。だけど本当に彼らが必要としているのは自分のことを分かってくれる相手なのかもしれません。
そしてそれは障がいの有る、無しに関わらないのではないのではないでしょうか。好きなことにイイねと言ってもらえて私が嬉しかったように、自分のことを分かってもらえるというのは、誰にとっても嬉しいこと、安心できることです。
 「障がいに向き合うのではない、人格に向き合うのだ」と元滋賀県立八日市養護学校の荒川智先生が教育実践の中で語ってらっしゃいます。
 理解しにくいことかもしれないけど、子どもの好きにイイねをしてあげること、ありのままの姿を認めてあげること、そこから関係をつくっていくことの大切さを学びました。  S.I



vol.200 niramekkoGallery「いれもの」

莉理子ちゃんは不思議な子。運動系のクラブチームに所属したので、時間通りには創作できない。なのに、いつの間にか完成してる。この日は作陶の色つけ。お重のお弁当箱のようにも見えるとっても楽しい造形に、内にも外側にも、底にも色をつけた。カラフルに絵付けされた作品は、お弁当箱?でもいいし、ペンケースにしてもいいなぁ、ちょっとした小物入れにもいいかも、と想像をかきたてられる。アートの原点は、想像力を誘導すること。落ち着いて創作したらどんな絵を描き、どんなものつくりをするのかしら…目が離せない!


vol.200 人生これから!

「やってみた」シリーズ第5弾

東奔西走!今日もバイク日和〜
    赤間 桂さん(60代)

落合集落(徳島県)

 バイク歴42年。とにかくタフな女性だ。通勤は自転車、遠出はバイク。四輪の免許を持たないがゆえに自然とそうなる。だから、冬だろうが、多少の雨でも、しっかり装備して走る。雨ニモマケズ、風ニモマケズ…走ることを本当に楽しんでいる。ただ、タフな彼女に付き合える人はそうそういない。それはそれでオーケー、ソロツーリングを楽しむと決めている。「ソロも気楽でいいですよ。でも4年前に紀伊半島一周をした時のこと。レディースプランでとっても豪華なホテルに格安で泊まれたの。瀟洒な建物で、ラウンジから見下ろす風景はナイスオーシャンビューでとてもロマンチック。時は夕暮れディナータイムじゃん。そこにポツンと私一人、フランス料理のフルコースを一人で味わうのは今回限りにしたいわ」と思ったそう。「やっぱり、美味しいね〜とか、夕日が綺麗!とか心の動きを共有できる人がいるとその旅は2倍も3倍も楽しめると思う」。というわけでバイク仲間ただいま募集中!と笑う。

UFOライン 瓶ヶ森林道(高知県)
四国カルスト(愛媛県)

 数年前、四国ソロツーリングを計画した。職場に休みを申請して、いざ出発という時に豪雨!で断念。数週間ずらしてリベンジ!しかし、まだ道路はズタズタで復旧しておらず、で断念。翌年、今年こそ念願の四国へ、と計画を練り直しいざ!という時に今度は台風。またしても走れなかった。西は鬼門か!?なんて冗談を飛ばしつつ、次の年、準備万端整え、職場の人に「行ってらっしゃい!お土産お願いね〜」と見送られて、気分はルンルン〜で出発。「やっと四国に行けるぞとはやる気持ちを抑えていつになく安全運転で走行していました。そろそろ神戸、そのあたりで、なんかおかしい、バイクの様子が変!路肩に止めて点検しようとしていたら、プスン、プスンとエンジンが悲しそうな音を立てて止まってしまった…ありゃりゃ?どうしたんだろう…」その後二度とエンジンはかかることはなかった。またしても断念か!したたる鼻水をすすりあげ、JAF に連絡してバイクをお見送り。自身は新幹線で帰る羽目に。

しょんべん小僧(徳島県)

 職場の人に「たらいま〜、とつぶやくと力が抜けちゃった。まったく、なんてこと!ここまで続くともう笑うしかないわ。」と高らかに笑う赤間さん。しかしついに昨年、四国ツーリングは実現した。おめでとうございます!!!実に七度目の正直。その時の写真が左。愛車にスリスリしながら、満面の笑み。(と言ってもヘルメットで笑みは見えませんが…)
 今年の計画は?と尋ねるとすかさず「北海道!」。バイカーなら一度は走りたい地である。
 取材後、彼女の愛車に乗って軽やかに走り去る姿を見送りました。北海道、私もご一緒させていただきま〜す。

募集中!

あなたの「やってみた」をご紹介させてください。掲載された方には人生これから!編集のライフデザインノート『ゼロの昇天』を進呈!


<手放したいけど手放せないものって?>

Shi) 密閉容器のフタだけがたくさんあります(笑)。いつか本体が出て来たら、と思うと処分できなくて。
Nishi)思い出、というか写真。本ももらってくれる人がいるならと、処分ができてません。一時期“収納”にはまっていたときがあって、収納ボックスをたくさん買いましたが、入れ物があると物が減らなくて。とりあえず何かあったときのために、家族に伝えたいもの、保険証書や通帳などは一つの箱に入れてあります。
I)古い年賀状や通帳が、個人情報が気になって捨てられずにいます。あと、母が残した着物もたくさんあって。私が着ようと思えば着られるし、いいものらしいから洋服にリメイクしてもいいな、とは思うのですが、なかなか。
Naka)物のない時代を経験してきた母が布切れや紙袋等を大事に保管していて、それが大量で困っています。
Ya)食器がたくさんあって。娘家族が来た時に要るし、お正月にはちょっといい食器を使いたい、と思うとなかなか整理できません。
Mi)写経したものを気安く捨てちゃダメと聞いて、どうしたものかと処分できずにいます。
Hashi)物に対する執着心がネックなのかな、なかなか処分できません。

<解決策は?>

Ta)大切な物はしまっておかずに使った方が、物も生きて喜ぶと聞いた事があります。ちょっといい食器も普段に使って、イマイチと思うものは処分したらいいと思います。
I)リサイクルショップに両親の食器をずいぶん買い取ってもらいました。以前、各務原市の広報に「あげます、ゆずります」というのを利用したこともあります。
Hase)昔のものは質が良い着物が多く、同じ品質のものは今ではなかなか手に入らないそうです。そんな着物を譲ってもらい、着物を勉強している若い人に渡して着てもらう、という方に寄付したことがあります。
Si)知っているキリスト教会が、古着を開発途上国に送る活動をされているので、そちらに届けることをしています。
Hashi)お嫁さんがメルカリであれこれ出品してくれて少しスッキリしました。

専門の方に聞きました。

長岡:何をどのように手放すかは、それぞれの感性ですよね。私としては、人形、印鑑、表札など、長年使っていた物は供養してから処分するのがお勧めです。印鑑のふちが欠けたら縁起が悪い、とよく言いますが、欠けたら持ち主に起る災いを印鑑が肩代わりしてくれた。でも一回は肩代わりしてくれても次はないです。ヒビが入ってしまった木の表札も、長年自分の代わりに家の表にいてくれた。そのように捉えると供養してから手放そう、と思いますよね。人形は、定期的に人形供養を受け付けている葬儀会社や神社などがありますから、そこで供養してもらうのもいいでしょう。ただ、中には人形供養の料金だけ受け取って供養せずにゴミ処理してしまうような業者もいますから、信頼できるところへ持って行く事が必要です。それには、こういう場に参加して情報交換することもいいですし、行政書士さんなどは業者さんと繋がりをもっている方も多いですから、そういう方に聞くのも方法と思います。写経したものも、処分してくれる神社やお寺があります。また、風水的には、手放す物を白い紙に包むと悪い気が外に出ないとされています。

 

            


vpl.200 えんぴつカフェ 3月は0円マーケット

日時:3月18日(木)13:30~15:30

にらめっこ フリースペースにて
(各務原市蘇原新栄町3-15)
 参加費500円
☆マイバッグをお持ちください。
☆駐車場は限りがあります。できるだけ乗り合わせてお越しください。
☆ご自分の持ち込み品が繰越しになる場合はお持ち帰りいただきます。


13:30
持ち寄り開始 品物を縁側に並べます。受付を済ませ、ポストイットに一言コメントを記入してから並べます。
14:00
参加者が揃ったら、 並べられた品物を物色します。気に入ったものを手に持った人はお礼のコメントを書いていただきボードに貼ります。椅子にかけて、皆さんが揃うまでお待ちいただきます。
14:30
お茶タイム品物を公開しおしゃべりします。ここは貴重な情報交換の場。手放したことで感じた気持ちや、手に入れて感じたことなど、シェアします。
15:00
ライフデザインノート『ゼロの昇天』のP-10に手放したもの、手放してもいいと思うものを書き込んでいく。
15:30
かたづけてお開き。

ここではお金を介さずに品物をシェアします。家にあるもので自分では使わなくなったもの、誰かに使ってほしいものを持ち寄ることができます。ここでは以下の3つをお約束いただきます。
・食品や開封済みの化粧品などはご遠慮いただきます。
・物々交換ではなく、ゼロ円でのシェアであること。
・みんなで楽しもうという心持ち。
集まったみなさんで、お話ししする時間を設けます。それまであまり話したことがない人でも、モノが間に入ることで話しかけやすくなるのでは? 「なにか面白いもの見つかりましたか?」など といったことからはじまる会話を楽しみたいと思っています。
大切なことは、物を通じて交流が生まれることです。

参加希望の方は、下記・「人生これから!」までご連絡をお願いいたします。担当・三上


えんぴつ・カフェとは・・・
毎月1回おしゃべりしながらライフデザインノート『ゼロの昇天』を書き込むために集うカフェです。お茶を飲みお 菓子をつまみながら、持ち寄った課題をみんなで考えます。話題は多岐にわたります。「人生これから!」を基本に、やがて迎えるであろう「そのとき」まで、 どう生きるかを念頭に置いて書き込んでいきます。ちっとも筆が進まない、というのが現状ですが、みんなの話を聞いて、回を重ねるごとに、少しづつイメージ が湧いてきます。そんなカフェです。

主催:NPO「人生これから!」
問い合わせ 090-5638-7044(田辺)・ 090-7854-4561(三上)


vol.200 熱中人 井上 愛さん

人•モノづくり•地域•つながる•広がる

愛知県豊山町にFLAM(フレーム・ 生活介護施設)を開設する
NPO法人motif理事長 井上 愛さん

 「まず最初に、この商品かわいい!って思ってもらって、調べてみたら、『あ、障害のある人が作り手だったんだ!』そんなふうにお客さんと作り手が自然な形でつながったらいいな」。
 福祉施設ではあるけれど、フレームは「モノづくり」が先にある。そうして生み出されたものをキチンと商品化し、社会に送り出していく。そんな生活介護施設「フレーム」での対象となるのは、18才以上の障害者手帳をもっている人。知的、身体、精神、発達、難病の支援区分3以上と、比較的重度とされる人たち。
 「生活介護事業というのは、就労とは違って、働いてもいいし働かなくてもいい。お話しに来るということでもいい。リハビリ的要素のある事業所もありますが、うちはモノづくりがまずあって、そこに障害のある人の手仕事を絡めていけたらいいな、と思っているんです」と井上さん。

思いがいっぱいの「FLAME」完成予想模型

 フレームに来られる人には、絵を描く人がいるかもしれない、染色、陶芸、刺繍などモノづくりをする人もいるだろう、などを想定してそれぞれスペースも設けた。
 「ギャラリースペースも用意しているので、地元の様々なジャンルの作家さんたちに展示や作品展などを開いていただこうと思っています。そして、あら、ここには障害のある人もいるの?では一緒にコラボレーションしようか、などと展開したり。そこに、思ってもいなかったような化学反応的な素敵なものが生まれたらいいな、と思っています」。
 地元作家だけではなく、障害の有無にかかわらずモノづくりが好きな人にも来てほしい。モノやアートを通して、多様な人たちと自然な形で関り、つながっていく空間にしていきたいという。さらに豊山町に住む障害のある人、若い人、学齢期の子を持つお母様たちに気軽に来ていただいて、相談できる場でもありたいという井上さんの強い思いがそこにある。
 そして、かねてより地場産業に興味があった井上さんは、尾州の毛織物などの地元の素材や技術、人、というのを大事につなげたいとも。ゆくゆくは有松絞りのような地元の産業、九州にある障害者施設で作られた木工など、各地の伝統産業や障害者施設ともつながって一つのブランドとして多くの人に手にとってもらえたら、と構想は広がる。

 障害のある人の生活を思った時に、選択肢が少ないと常々感じているという井上さん。本当はこんなこともできるよ、こういう物差しだってあるんだよという選択肢をたくさん用意したい。そんな思いから、モノづくりの好きな人が集える場所として生まれたフレームは、その中にたまたま福祉事業というサービスもやっている、そんな位置付けだ。
 「先を見通すのがすごく苦手という人も結構いて、障害の有無に限らず、いろいろなニーズにじっくり向き合いたいと思っているんです」。だからフレームは最初に人ありき。
 「始めに『こんなことをやります』ではなく、集まった人の思いをすくって、そこで私はなにが出来るか、集う人によって柔軟に対応できるようにしたい。一人ひとりの声を大事にしたいから。福祉に入ったきっかけがそんな思いなので。だから始めに来た人は得ですよ(笑)」
 人がモノやアートを目にしたとき、その作り手と背景に思いを馳せ、作り手とつながり共に広がってゆく…。そんな役割を果たしていくフレームは、今年6月に始動する。

NPO法人motifの事務所(名古屋市)に置かれた3Dプリンターで作られた自助具など。「障害のある人の、例えば『座る時にここがちょっと痛いんだよね』という声にみんなで『どうしたらいいんだろう』って考える。

★2021年3月〜5月☆クラウドファンディング・リリース!
★家で眠っている使わない職業用ミシン、アイロンがあったらお声かけください。

いのうえ あい
障害者入所施設勤務時代に手織りを趣味として始め、その後手織り教室を3年経営。NPO法人ひょうたんカフェを設立。手織りを仕事にするべくショップや作家、ブランドやメーカーなどに繋げる(ふりや)役割を担う。 2020年8月NPO法人motifを設立。2021年6月開設に向け愛知県豊山町にFLAMEを只今建設中。https://www.motif


vol.200 夢か悪夢かリニアが通る!vol.29

東京都調布市の住宅街で昨年10月18日、陥没事故が起きました。地表部分で約5メートル×約3メートル、深さ約5メートルの大穴が子どもたちも行き交う市道に開いたのです。地下47メートルの「大深度地下」ではほぼ1か月前、高速道路「東京外郭環状道路」(外環道)のトンネルを掘る直径16メートルの巨大なシールドマシンが通過、住民が振動や騒音などの被害を訴えていました。その後も3か所で空洞が見つかり、住民は不安な日々を送っています。NEXCO東日本は12月18日、工事との因果関係を認め謝罪しましたが、同じような被害はこれから進められるリニア中央新幹線の「大深度地下」工事でも起こる恐れがあるのです。                                井澤宏明・ジャーナリスト

大深度工事で陥没

住宅直下でも補償なく

調布市の陥没現場ではボーリング調査が行われ、物々しい雰囲気に包まれていた(2020年12月2日)

 今回陥没事故があった外環道工事は「大深度法」(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)という法律によって行われています。大深度地下とは、通常は使用されないおおむね深さ40メートル以深のこと。この法律により、国の認可を受ければ、事業者は地権者の同意を得たり、補償をしたりすることなく、住宅の真下であろうと大深度地下を使用することができます。
 リニア工事でも、大深度法によって東京、神奈川、愛知3都県の計約50キロの大深度地下工事が2018年、国に認可され、今春にも工事がスタートする予定です。騒音や振動、電磁波、地盤沈下や地下水への影響、地価の下落などが心配されていますが、JR東海は「問題になることはない」などと、これらを否定してきました。
 ところが、調布市の陥没事故の原因が大深度地下工事だったら、「大深度地下については、 通常は補償すべき損失が発生しないと考えられる」(国土交通省パンフレットより)という大深度法の前提が崩れ、リニア工事も見直しが必要になります。
 12月18日に開かれた記者会見では、事故を受けて設置された有識者委員会の小泉淳委員長(早稲田大学名誉教授)が中間報告を公表。「シールドトンネルの施工が、陥没箇所を含む空洞の要因の一つである可能性が高いと推定される」と、工事と陥没事故の因果関係を認めました。一方で、工事は「特殊な地盤条件下において行われた」という一文を入れることも忘れませんでした。

「特殊な地盤」と言い訳

陥没事故直後の様子(NEXCO東日本ホームページより)

 記者会見で小泉委員長に質問しました。「『特殊な地盤』 という言葉がたびたび出てきますが、言い訳にしか聞こえません。これを今回、先生方のような専門家が見抜くことができなかったんですよね」。「そういうことになりますね」と小泉委員長はうなずきました。
 小泉委員長は大深度地下の権威です。2009年に編者を務めた「地下利用学 豊かな生活環境を実現する地下ルネッサンス」で大深度法誕生の背景を次のように説明しています。「地下掘削技術の進歩により、大規模な構造物の地下であっても地上にほとんど支障を与えず、掘削可能となった」
 会見ではこの文を引用して尋ねました。「この認識は変えざるをえないですよね」。ところが小泉委員長から返ってきたのは「普通の地盤であれば、経験しているような地盤であれば、ということ」という答えでした。
 「それは言い訳にしか聞こえません」と畳みかける私に、「そう言われると、『自然をすべて説明しなさい』と言われているようなものですよ」と小泉委員長。たまりかねた私はこの日、最も聞きたかった問いを発しました。「(特殊な地盤が事前に予測できないの)であれば、大深度地下の工事を続けてはいけないんじゃないですか」。今後の外環道工事だけでなくリニア工事もストップしかねない問いに「権威」がどう答えるのか、固唾をのんで見守りましたが、その答えは呆れ返るようなものでした。「そうしたら、我々は地上に住んじゃいけないんじゃないですか。いつ星が落ちてくるか、いつ何が起こるかわかりませんよね」
 陥没事故があったのは、小説家の武者小路実篤が晩年を過ごし、記念館もある閑静な住宅街です。外環道工事がやって来るまでは平穏に過ごせていた土地です。「特殊な地盤」という言葉を繰り返し、住民が愛してきた土地を侮辱するかのような小泉委員長の発言には学者の「矜持」どころか「保身」しか感じられませんでした。




vol.200 ボーダーレス社会をめざして vol.59

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

生きがい見つけ?って

 障がい福祉の世界に、「障がいのある人に生きがいを見つけてあげなくては・・。」という流れが一時期ありました。しかし、ある講演会で「人の生きがいを見つけるなんてお節介だ」と言う人が現れました。長野県の福岡さんと言う人です。
 今まで生きがいを見つけてあげるということが、変だなと思ってきていましたので、その言葉はストンと腑に落ちました。それは、私にとっては衝撃的な事件で、今でもその時のことを思い出します。そうですよね。人の生きがいを見つけてあげるなんて、驕り以外何物でもない。上から目線ですし・・・。
 息子を見ていると次から次へと好きな事を見つけてきます。それは、いろいろな経験をしてきたからだと思うのですが、周りにいる人たちが、そのように経験ができる機会を作るという事が必要なのだろうと思います。私が働いているオープンハウスCANの会員さんの中には、乗馬、和太鼓、水泳、体操、陸上、劇、旅行、パソコンなど好きな事をやっていらっしゃる人が多いです。先日も「障がいのある人が行ける習いごとが、何かありませんか?」と尋ねられた人に、乗馬(ホースセラピー)がありますよと紹介したことがあります。実際にそこに通っている人にコンタクトを取り、連絡先などをお教えしましたら、すぐに予約され、乗馬を楽しまれたようです。
 このように親御さん、周りの人の行動力にかかっています。生きがい見つけではなく、何か障がいのある人の心にヒットするものはないか。親・周りの人の頑張りどころです。障がいある無しに関わらず、人には何か好きなものがあるという事が、人生に彩りをつけてくれます。
 では、私の生きがいは?正直、考えたことがありません。毎日淡々と暮らすことで十分だと思っています。ガンと向かい合った時も、何かのためにどうしても生きなければという思いは一切ありませんでした。しかし、がんで手術をした後に、願いが叶うのなら2、3か月だけでいいから、普通の体に戻して欲しいと思いました。なぜなら、障がいのある人に書道を教えていますが、何も彼らに言わずに書道教室をやめてしまうことはできない。せめて一言だけでもいいから、挨拶をしたいと思いました。その時、障がいのある人の書道教室が、私自身の心の中にウェイトを占めていることを知り、不思議な気持ちになりました。これは、生きがいではなく、やり残したことの一つだったのだと思います。
 今では、この書道教室も後継者作りを始めていて、次にバトンタッチできるようにしています。障がいのある人の笑顔が、いつまでも続くのが私の一番の願いです。


vol.200 半農半X  最終回

希望の種をまこう

 コロナ禍で大変な2020年でしたが、それでもどこか希望の芽を探したい。いつものように年末、「この1年の自分の出来事10」を振り返っていました。いくつか紹介すると、①新潟で3年に1度開催される「大地の芸術祭」作品公募に初応募②台湾と日本をつないでのフォーラムでオンライン初講演③中台韓日をつないでのオンライン東アジア地球村イベントで半農半Xトークに出演、といった感じです。今年の10個のリストアップを終えていた12月末、メールが届きました。ベトナムの出版社より、『半農半Xという生き方【決定版】』(ちくま文庫)を翻訳出版したいというオファーです。拙著が出たのは2003年のこと。半農半Xという種が入ったボトルレターが遠い国に流れ着いたって感じでしょうか。世界に半農半Xの仲間ができるって、とてもうれしいことですね。
 2014年4月、名古屋でおこなわれた「豊森なりわい塾」開講講座に講師として呼ばれました。テーマは「これからの社会のカタチ~シアワセをどこに求めるか」です。この場で「にらめっこ」の三上さんとお出会いをしたことがきっかけで、連載をさせていただくことになりました。「そろそろおいとまをしないと」と思っていたとき、200号のタイミングであることを知り、これを機に紙面も変わるかもと思い、失礼を申し出させていただきました。三上さん、にらめっこ読者のみなさま、いままでありがとうございました。拙い文を読んでくださり、感謝申し上げます。それにしても200号ってすばらしいですね。この間のご努力に、スタッフのみなさんの尊いエックスに、敬意を表する次第です。(半農半X研究所・塩見直紀)

 塩見さん、長い間、連載を心よくお引き受けくださり、本当にありがとうございました。思えば、7年前の講座を聞いて、この思想(もはや半農半Xは思想です、私の中では)を広めたい、知ってもらいたいと思う一心で、塩見さんに駆け寄って連載のお願いをしました。あれから早7年。にらめっこは200号を迎えました。今後は、塩見さんのご活躍をこころより応援させていただきます。  (三上)


塩見直紀(しおみなおき)半農半X研究所代表
1965年、京都府綾部市生まれ。20年前から「半農半X(エックス=天職)」コンセプトを提唱。半農半X本は翻訳されて、台湾、中国、韓国にもひろがる。著書に『半農半Xという生き方 実践編』など。

※半農半Xとは・・・半農は環境問題、半Xは天職問題(どう生きるか)を背景と する。持続可能な農のある小さな暮らしをベースに、天与の才を社会に活かす生き方、暮らし方。ex.半農半漁、半農半大工、半農半看護師、半農半カフェ、 半農半絵描き、半農半歌手、半農半鍼灸師、半農半カメラマンなどなど。


vol.200 未来に続く暮しの学びPrt-41

芸術がもたらす魔法

 創造力がもたらす力を、肌をとおして感じたことはありますか?先月、Creative Flow というワークショップを主催したときのことについて今回は書きたいと思います。
 このワークショップの意図は、創造する力はだれでも持っていて、だれでもアクセスできる。その力にアクセスする方法を共有することで、創造力の流れに乗る、というもの。
 インストラクターとともに、フリーダイビングとヨガの呼吸法を交え、まず精神を整える。科学的にいえば脳波のバランスを整える。そして、<私は絵が下手だ。絵が描けない。>という思い込みがちな自制心を外す。恐怖心と自己否定を外すことで、安心感が生まれ、気が流れ出します。
 何かを描こうではなく、意識を鉛筆と筆にもっていくことで、感覚的に描いてみる。少しずつその感覚に慣れてくると、だんだん描きたいものが潜在意識から出てきて、創造力の流れに乗って描きだしていく。最後のシェアリングサークルで、それぞれが体験したことを共有する。
 シェアリングサークルで参加者の体験を聞いていて感じたことは、流れに乗ったらすごく自由に感じられることや、たのしむことができた、ということだった。
 自己否定や自分には無理という判断は自分自身の内側でしかおこっていないことに気づいたり、恐怖心や期待は自分が自分に対して作りだしている。ということに気づきます。
 規制ばかりで、窮屈な世間や環境にいても、この創造力という力の自由さ、楽しさ、美しさ、自分自身とのつながりの仕方の方法を知っていれば、自由という広い空間を内側に感じることができる。これは私たちが生まれながらにして持っている能力なのですね。それを感じさせてくれるキッカケががまさに芸術であると私は思っています。


vol.200 菌ちゃん野菜応援団 vol.21

はーるよこい、はーやくこい

 はーるよこい、はーやくこい、な寒い日々が続いていますね。年明けからグッと寒くなり、漬け物が美味しく浸かるようになったけれど。寒くて畑にいきたくなーい、と寒がりな私はこもっていました。

 そんななか久しぶりに畑をのぞいたら。まぁ、ブロッコリーや菜花が美しい花芽をつけているじゃありませんか! 春に向けて蕾を作り、花を咲かせて、種を飛ばす。次の命ために自分の持てるすべての栄養を蕾に閉じ込めてじっと寒さに耐える様は愛おしくて美しく、また凛としていてジーンとしました。

 とは言いつつ食べるために育てたのですから。。「ありがとうね」といいつつザクッと鎌を入れて刈り取り。サッと茹でてマヨネーズをかけて食べたのでした。これから菜花が旬。食卓に華を添えてくれます。
 生を食べて生きる私達。多くの命に支えられているんだな、と実感する春はもうすぐそこですね。今回の1品は白菜の花芽。取り損ねたり巻きが甘かった白菜はそのまま畑においておくとどんどん花芽がでてきます。直売所などで見つけたら是非お買い求めください。
くせがなく、おひたし、てんぷら、煮浸し何にでも合います。
おすすめはサッとゆでて美味しいお醤油やマヨネーズをかけてそのままがぶり。
あ〜おいしっ!
春の息吹を感じる1品です。


vol.200 ここいく日記 リレートーク はじめの17歩!

今だからこそ、伝えたい!

 2020年度、このコロナ禍で、私たちここいくの「いのちの授業」を学校で行うことは ほぼ壊滅的となりました…

 連日聞こえてくる感染者の数、重症者の数、亡くなった人の数…そのような不安なニュースを耳にしていれば、大人も子どもも 知らず知らずのうちに心も体も疲弊していくのは当然のこと。
 コロナによって人との関わりが難しくなる中で、やっと始まった学校生活においても そのシワ寄せが 子ども達の心と体の成長に大きな影響を与えている…。その現状に危機感を抱いた先生や保護者の方から「今だからこそ、性教育が必要だ!!」と、授業依頼が来るようになりました。
関市の下有知小学校4年生の授業では、目をキラキラさせて食い入るように聞いてくれた子どもたち!!
感じる事は 人それぞれです。

〜アンケートより〜

※人と比べたりせず、自分らしく生きたらいいんだ
※僕たちが生まれてきたのは 奇跡!
※ご先祖さまが一人でも欠けていたら、私は生まれてこなかった。だから命を大切に守ろうと改めて感じました。
※お母さん、私を生んでくれて、育ててくれてありがとう!
※「なくなっていい命はない!」と言った時、ここいくさんはみんなのことを本当に大切にしているのだと分かりました。


  授業を終えた時の子どたちの晴れやかな表情に、私たちも大きなパワーをもらいました!  また、可児市のフリースクールでは「コロナ禍だからこそ『いのちの授業』が必要!!」と、先生の熱意で実施して下さいました。(ここは年間2回の授業を行い 4年経ちます)
 先生は「ここいくの授業を受けてから、子どもたちと恋愛や性のことを自然に話せるようになった。公教育で教えられてきた性教育とは比較にならない内容!これくらい丁寧に伝えることが、どの子にも絶対に必要!!」と、子ども達との関係性の変化も話して下さいました。
 そして、「ここいくさんの授業を受けさせていただく毎に、人としての在り方のブレをしっかり修正してもらえるような感覚になる。本当にありがたいと感じています。」とも仰って下さいました。嬉しくて 涙が出ました!ここいくが大事にしていること「性教育は人権教育」「みんな違って当たり前。自分らしく生きられる優しい社会を作っていく」ことを、コロナ禍だからこそ一人でも多くの子ども達に届けられる日が来ますように!!

担当:ここいくメンバー・横山 里美でした。
ここいく☎090-3446-8061(中村)


vol.200 トンガからこんにちは! 最終回

生き方を考える

トンガはキリスト教の敬虔な国です。日曜日の礼拝だけでなく、トンガ人の日常生活、考え方、能力、全てにおいてキリスト教の影響を大きく受けているように思います。宣教師が到来したときに、何がそんなにトンガ人の心を捉えたのかは分からないし、今まで会ってきたヨーロッパ人のキリスト教徒とも違うように感じるけれど、トンガ人の生き方は、素敵だと思います。

お祈りの歌を歌う

 朝のミーティングの前や授業の前、宴会の前など、必ずお祈りと聖歌の合唱があります。みんな歌が上手で、誰でもすぐにハモることができます。 音楽の授業がなくても自然にハモる歌唱力を養っているのは聖歌だし、文字を持たなかったトンガ人に読み書きの文化ができたのは聖書を理解するためではないかと感じています。子供のうちから最低週に1回の聖歌を人前で大声で歌っていたら上手くならないはずはありません。私は、月曜日のミーティングのたびに同僚の合唱に(特に男性の歌声に)感動してこっそりウルウルしてました。日本に帰ってきた今、一番恋しい時間の一つかもしれません。
 何と、お葬式でも音楽が欠かせません。お葬式前夜からご遺体をお墓に入れるまで2グループの音楽隊が音楽を絶やさないように交代で奏で続けます。お葬式関連の他の違いは火葬か土葬か、お別れのご挨拶に線香をあげるかキスをするかくらいな気がしますが、徹夜の合奏は見ものです。

 何と、家族の死後、1年間の喪の期間中、毎日毎日黒い服と特別なタオバラ(パンダナスの繊維で編んだ腰巻。男性は日常から。女性は特別なときに。)を身につけます。タオバラやキエキエ(同じく腰に巻く女性用のアクセサリー)はトンガ人のお洒落アイテムでもあり制服でもありと言った感じですが、タオバラにも喪用があるんです。そんなこんなで、街や職場、黒い服を来た人を見ない日はありません。こうして伝統工芸を生活から切り離せない使い方をしているということが伝統を継続させるポイントなのかもしれません。他にも、ご遺体を包む「タパ」(植物の繊維から作った布(見た目は和紙))があるのですが、赤ちゃんが生まれたら包んであげ、セレモニーのときには伝統舞踊のタオルンガの衣装にしたり、マットとして使ったり、と用途は多種多様。伝統が昔の特別なものではなく、「日常」に根付いています。

喪服の人

 そんな一見古風なトンガ人と今まで出会ったキリスト教徒との根本的な違いは、何とも他人任せ、、、いえ、全てが神様任せ!なことでしょうか。病気や死に対してもに「神様の決めたことだからしょうがない、、、」と明るく開き直ります。死は神様の元に行くことを意味することで、特に嫌な感情がないと言うのも聞いたことはありますが、そういう感情を通り越した力の抜け方があります。

 「神様のせいではないよ!生活態度で健康は手に入るんだよ!」と思うと声を張り上げたい時は何回もありました。ただ、その「死や病気を受け入れる」姿勢は、人の生き方として良いなと思う面もあります。例えば、糖尿病が悪化したからと言って透析をすることはありません。日本で透析をしたら約10年は余分に生きられると言われていますが、トンガ人は10年間病院に通い続けるという選択がありません。もちろん、途上国なので医療設備の不備、国や個人の経済的理由(トンガは医療費無料です)はあります。それでもやはりキリスト教の影響を考えると透析も延命になるのかなというのが、日本人同士で考えた答えです。 10年間で環境や経済に与える影響を考えたり、日々のトンガ人の明るい態度を見ていると、健康になることに無関心でもトンガ人みたいに過ごす人生、悪くないなと思えます。何を持って「命の操作」とするかは人によって違うだろうけれど、個人的には過度な医療介入は、道徳、環境、経済的に色々疑問が湧きます。これくらい死に対してさっぱりしているのも、いいなと思うようになりました。

底抜けに明るいトンガの人たち

加藤美希(かとうみき)農的暮らしに落ち着きたいと思いつつ、ついつい旅人人生を送っている管理栄養士です。旅するうちに、「伝統料理と健康の秘 密」が人生の研究課題に。今回のミッションはトンガで蔓延する肥満や生活習慣病の改善。伝統料理の推進と学校菜園を通して、将来トンガの人々が世界に有す る健康大国になることを願って日々奮闘中です。


vol.200 プレゼントコーナー

1- あなたが「まもりたいもの」とは?
 あなたが大切に思い、まもりたいもの、それはなんですか?そのためにしていることがあったら教えてくださいね。
2- 気になるにらめっこ紙面での広告
3- 気に入った記事、気に入らない記事の
 タイトル1つ・その理由もお書きください。
4- ご希望のプレゼント名
(第1希望・第2希望を必ずお書きください)
 ※Cは編集室まで受け取りに来られる方。
5- 本紙をどこで入手されましたか?
6- 氏名、年齢、住所、郵便番号、電話番号、家族構成

プレゼントご希望の方は
ハガキまたはe-mailで、上記のアンケートを1〜6までご記入の上、編集部・プレゼント係りまでお送りください。
〆切:3月25日 当日消印有効。

宛先
〒504-0855 各務原市蘇原新栄町3-15
e-mail: info@niramekko.com
※お寄せいただいた個人情報は、本紙プレゼントの発送に限り、 使用させていただきます。
※当選の発表は発送をもって代えさせていただきます。


A. CINEX 映画招待券
シネックス様より…ペア3組様

 友人と、家族と、恋人と、あるいはひとりで観ても、その場の観客みんなと映画の世界を味わえるのは映画館ならでは。写真は「天空の結婚式」より。柳ヶ瀬のシネックスでご利用ください。 


B. いにしえのお米(朔月)100g
  自然農縁 月とたね様より…2名様

農薬・肥料は不使用、源流一番水で育て、はざ掛け・天日干しの古代紅米です。卑弥呼様も食べていた最古のうるち米と言われています。普段のお米に混ぜて炊いてご利用ください。


C. 乾燥ローゼルの実5個
   にらめっこより…3名様

にらめっこの畑で収穫したローゼルの実には、1つに20粒前後の種が。4月〜5月に種蒔きすれば、秋に実が収穫でき、ハーブティーやジャムに利用できますよ。
にらめっこ編集室でお受け取りください。


D. 人生これから!Note
  人生これから!様より…3名様

NPO「人生これから!」が作成した“いきいき暮らすヒント”満載のハンドブック。食(薬膳)・運動(ゆる体操)・脳活(歌)・これからの生き方について、など。A5サイズ36ページです。


vol.199 そもそもSDGsってなに?

SDGsとは?

 SDGsとは、SDGs(Sustainable Development Goals)の略で、持続可能な開発のための国際目標で、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)。2015年国連サミットで採択後、2017年にダボス会議(政治経済のリーダーズ会議)にてSDGsの巨大な経済効果が発表されました。そこで当時の国連事務総長であった故コフィ・アナン氏がグローバルリーダーたちに人権、労働基準、環境という普遍的な価値観を支持し、企業活動に取り入れるよう呼びかけました。同時にダボス会議では、SDGsに取り組むことで12兆ドルの経済価値、3億8000万人の雇用という推計が発表されたのです。(日本円にして1,200兆円!※1ドル=100円の場合)。日本の企業は、これに驚き「SDGsへ取り組もう!」と、関心を持つようになりました。
 「SDGsに取り組んでいる」というだけで、世界へのビジネス展開もしやすくなる、SDGsへ取り組むことが経済的にプラスになるなら企業も取り組まないわけにはいかない、という流れができました。今は就活においても、SDGsは重要ワードになっています。一方、取り組んでいなければ「社会的責任を果たす意欲がない」と、マイナスイメージを与えてしまう可能性もあり、会社の経営、ブランディング(「ブランド」を形作るための様々な活動)にも大きく関わってきているのが、SDGsなのです。

SDGsの前にMDGsがありました。

 MDGsは開発途上国向けの目標、SDGsは先進国も含む開発目標といったところ。
 MDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標。順に①極度の貧困と飢餓の撲滅②初等教育の完全普及の達成③ジェンダー平等推進と女性の地位向上④乳児死亡率の削減⑤妊産婦の健康の改善⑥HIV/エイズ、マラリアその他の疾病の蔓延の防止⑦環境の持続可能性確保⑧開発のためのグローバルなパートナーシップの推進)は、貧しさに苦しむ国々の課題解決を目標にしたものでした。だから民間企業の関心が低くて、結局関わるのは外務省ばかり。資金面や技術面で、民間企業が入ってくることはとても大切なのに、実際は政府中心の取り組みになってしまいました。

 SDGsでは、先進国にも関係のある内容を大幅に追加しました。例えば、ダイバーシティ(多様な人材を積極的に活用しようという考え方)や環境問題など。
 見てみると分かりますが、全世界の人が“自分ごと”として取り組めるような、身近な課題もたくさん設置されています。政府以外の企業、投資家などにもアプローチをします。そして、ダボス会議で「経済価値がある」と発表されたことで、経済界も「SDGsを取り入れよう」という機運が高まったのです。それまでは投資は利益が出る企業に対して行うものでした。しかしコフィ・アナン氏は投資の世界に手を付け、株主を動かすことで企業を動かそうとしました。

消費者が企業を動かす

 市民や社会が声を上げなければ、企業は動きません。中でも環境問題、地球温暖化は早急に対策したければいけない課題。だからこそ、一般企業や市民のサポートは本当に欠かせない条件となってきたのです。企業活動が環境破壊などにつながっている場合、世界では消費者による不買運動がたびたび起こってきました。
 例えば、2010年、アブラヤシから取れるパーム油の調達が、熱帯雨林を破壊しているとして、ネスレの「キットカット」不買運動が起こりました。事態を重くみたネスレは調達先を変更しました。またスポーツブランドのナイキも、90年代に児童労働や強制労働に対して、世界的な不買運動が起こりました。ナイキが失った売上高は、5年間で1.3兆円にのぼると言われています。
 日本でも最近は、パワハラを行う企業に対する風当たりが強くなったり、日清カップヌードルのアニメCMで大坂なおみ選手の肌の色が「ホワイトウォッシュ」だと批判され、公開中止になりました。
 ブラック企業やジェンダー、人種差別などへの問題意識が高まり、企業が追随せざるを得ない状況になってきたのです。

健康な地球で、みんなが平等に平和に生きる。

 経済界の思惑や政治的な背景を感じつつ、SDGsは、私たちも取り組むべき課題であると思います。持続可能な社会であるために、私たちは何をすべきか、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。
SDGsは17の目標と169のターゲットを設定しました。
SDGsは、普遍的な目標として「誰も置き去りにしない」という約束を掲げています。なにかの目標達成の裏で、泣いている人がいないようにと、配慮する気持ちが込められています。例えば、「6. 安全な水とトイレを世界中に」などは、日本で問題になることはほとんどありませんが、世界の貧困地域では、とても重要な課題。日本は先進国として困っている国を助けなければいけない立場にもあることを覚えておきたい課題ですね。


vol.199 なんで今SDGs なのか?

 地球益・・・一つの国の力では解決できない地球規模の問題を抱えていることはみなさんご存知かと思います。今はコロナ禍で世界中が右往左往しています。それに加え、地球温暖化、オゾン層の破壊などの環境問題をはじめとして、民族紛争、核の脅威、南北間の経済格差、性・人種差別など、様々な地球規模の問題に直面している現状で、各国が国益だけを追求することは許されなくなっています。 地球社会が持続的に発展していくためにも、地球益に配慮した活動がどうしても欠かせない、ということです。そこには五つのキーワードがあります。

1)つながり を意識する

 たとえば、ローカル(地域)とグローバル(地球)といった空間的なつながり、 過去・現在・未来といった時間的なつながり、 環境・人権・平和・開発などの諸問題のつながり、 さらには、認識・感情・精神・身体などの個人の内面におけるつながりなど、様々なレベルで、ものごとのつながりを意識する。

2)ちがい を尊重する

ちがいを恐れずちがいを受け入れる力を十分に身につける。

3)未来 を展望する

 過去の事実や蓄積された知識は重要ですが、今私たちは、急速に変化する世界に暮らしています。過去-現在-未来のつながりを意識し、その上で未来を見つめることも大切。

4)プロセス を重視する

 一人ひとりの小さな「気づき」を大切に、「結果」にではなく「プロセス」に学ぶこと。

5)社会参加 を目指す

 現状を変える力、今の自分に何ができるか?自分自身に問いかけることを大切にする。 何も行動しないことでさえ、地球の未来に大きな影響をあたえているということを、私たちは自覚する必要がある。これからはグローバル教育を必要とします。
このようにとらえると、SDGsは必然です。

 持続可能な開発目標、といわれるとなんか難しく考えてしまいますが、自分ごととして捉えると、掲げられている17項目は日常生活の中に深く関わっています。この機会に何がどう自分に関わっているのか、「にらめっこ編集室の日々」から検証してみました。

編集室の1日は、窓を開け放ち空気入れ替え。今日はコーヒー豆を焙煎する日。訳あってこの事務所に置かれることになった焙煎機からはいい匂いが漂います。実はコーヒー豆の背景をたどるとコーヒー豆の産地があるアフリカや中南米では、大手企業など買い手の方が立場が強く、低い賃金で働かざるを得ないコーヒー農家。国際人権団体は経済的な不平等をなくし、「正当な価格」で取引するよう呼びかけています。「正当な価格」(フェアトレード)で取引された商品を選ぶことは、貧困をなくすことにつながります。5「ジェンダー平等を実現しよう」 1「貧困をなくそう」

 毎月第2と第4土曜日に「風の芸術村」という美術教室を開催。発達に凸凹のある方々が集い、創作活動を楽しみます。この創作の中にも、ジェンダーや差別に関わりがあることに気づきました。例えばクレヨンや色鉛筆で「はだいろ」と呼ばれていた色は、「うすだいだい」や「ペールオレンジ」と呼び名が変わりました。肌の色は人によってさまざま。特定の色を「はだいろ」とすると、肌の色による差別意識を助長しかねないためです。さらに「女の子は赤」「男の子は青」といった考え方も、性別による決めつけや差別を生みかねません。「男の子だから泣かない!」「女の子らしく気配りできるように」といった表現を使うのも同じです。また、生まれた時の体と心の性が違う人もいる。誰もが平等に、自分らしく生きることができる社会を、めざしたいですね。
10「人や国の不平等をなくそう」 5「ジェンダー平等を実現しよう」

にらめっこ編集室の庭には畑があります。蘇原新栄町内ですが2丁目から3丁目に引っ越して来て一年。生ごみ堆肥で作った土を畑に入れ野菜などを作っています。柑橘系の木では蝶や蛾の幼虫が葉っぱを食べている光景をずいぶん目にしました。スイレン鉢にはメダカ。このメダカは昔は田んぼや小川でよく見かけましたが、約20年前に国から「絶滅の危険が増している種」に指定されました。水が汚されたり、天敵となる外国の生き物が増えたりして、激減したためだそうです。多くの生き物、特にミツバチなどが失われることは、将来、十分な食料をつくれなくなることにつながります。目標15「陸の豊かさも守ろう」

お昼ご飯の準備でスーパーへ買い物に行きます。買い物では、環境や貧困につながる場面が多いことに気づきました。例えば、値引きされた食べ物や、消費期限の古い方から買うことや、無駄のない買い物をすることは、まだ食べられる食べ物を捨ててしまう「食品ロス」を減らすことになります。多くの人が食品ロスを減らせば、ごみが減るだけでなく、食べ物がなくて困っている人を支えることにもつながるんですよね。特にごみ問題は、前号にも特集で取り上げましたが、喫緊の問題です。プラスチックごみは年々増え続け、今やマイクロプラスチックとして海中に漂い続け海洋生物を脅かし、除去できないマイクロプラスチックを含む塩となって、食生活にも影響が及ぼしています。
12「つくる責任つかう責任」2「飢餓をゼロに」 14「海の豊かさを守ろう」

ニュースやSNSをチェック
 編集には情報は欠かせません。貧困、飢餓、戦争、気候変動、ゴミ問題、人種や男女の格差・・・。世界が直面するさまざまな問題について、気にかけたり、調べたり、話し合ったりすることは、「私たちに何ができるか」「自分には何ができるか」を考えることにつながります。実は、これがGoalにたどり着くはじめの一歩だと思っています。
17「パートナーシップで目標を達成しよう」

「知ること」≠「信じること」

 ただ、一つの情報源だけでなく、出来るだけ多方面にあたり、冷静に情報と向き合うことが大事です。何かを「知ること」とそれを「信じること」は全く別の問題。見聞きした情報の信憑生などを客観的に見極め、選択し、判断する。混沌とした今こそ、メディアリテラシーを高めることが重要です。
 偽情報や裏付けがない情報には一歩距離を置くのも大事。情報の事実確認は難しいこともあるので、色々な人と情報交換するのが望ましいのではないでしょうか。

「その場面もあの場面も、実はSDGs」 朝日新聞デジタルを一部参考。


vol.199 SDGs 私の思い

現在にらめっこ紙面に関わってくださっている方々に思いをうかがいました。(Noは特に関心のある項目)紙面に限りがあるので、次号にも掲載します。

12 (リビング デザイン本田)

①理由:お庭をつくることを生業として、つくる際には、いろんな資材も使うから。
②懸念:最近は、お庭を求める人たちが増えてきてありがたいが、供給する側の人材不足を感じます。特に若い職人や生産者が少ないです。お庭にも流行のようなものがあり、過ぎた後には、壊してゴミになってしまうこともあるので注意したい。③取組:お客さんにだけではなく、若い世代の働く人たちにもお庭にかかわる仕事が、魅力的な仕事であると感じられるようは発信を心がけたい。流行にとらわれずシンプルで長く愛されるデザインと、使う素材も年月を経て育っていくようなものを積極的に使っていきたいです


12  (ミライ工房 九野)

① 理由:VOC(揮発性有機化合物。揮発性があり、大気中で気体状となる有機化合物でほとんどが神経に異常をきたす物質)は知らないうちに身体に影響が出てしまう。健康に住める住宅を提供することは大切だと思うから。
② 懸念:アトピー、喘息などの原因にVOCが起因すると言われています。頭痛でお悩みの方もいらっしゃいます。
③ 取組:VOCを含んだ商品は極力使わず、無垢材、自然素材で内装を作る。耐久年数のある素材で外装を作る。24時間換気を必要としない家づくりをしている。


14、15  (竹炭のじねん屋 後藤)

① 理由:これからこの国を守る未来ある子どもたちに素晴らしい自然を残したい。
② 懸念:経済優先の考え方は飽くことを知らない。このままでは国栄えて山河なしになる。今ある物を利用せず、リニア問題や新築ビル、家が次々に建つ。その原材料はどこから?自然からは必ずしっぺ返しがくる。
③ 取組:もう終わったことですが、8年かけて、京や愛知、豊川の山にグループで炭を撒いてきました。海や山のために。木々は少しづつ蘇りました。人類がどうしようもならない時、人は炭を活用してきました。その時のために炭を貯えつつあります。


1  (コスモスふぁーむ 山岸 謡子)

① 理由:今日本の社会の緊急の課題は、貧困化を止めること。国民も企業もお金が使えなくなってきている。
② 懸念:消費者の需要(=企業の投資意欲)を高めるには消費税を廃止するのが近道です。また堤防や橋を修理し、保育所を充実させなど国がインフラ投資に力を入れれば、失業を減らして、経済の循環を好転させることができる
③ 取組:国を富ませる政策を政治家にやらせるために私に出来ることは声を上げ、正しい政策を掲げる候補者を選挙で当選させることです。そして私たちも学ぶことです。


3、4、10、11、12、16 (M・I)

① 理由:誰かの幸福が誰かの不幸を踏み台にしたものにならないように。
② 懸念:経済最優先のシステムで社会の分断が進み、人々の不寛容が進まないか?教育や文化など生産性で測れないものがますます切り捨てられていくのではないか?
③ 取組:異なる意見であっても、まず耳を傾ける。夢や目標を持っている若者を応援する。ポルトガル語を学ぶ。フェアトレードの商品、生産者の見える商品を積極的に購入する。


6、15   (アースプラン 松浦 利重)

① 理由:生命の水が今、危機的な状況で、今後どんどん豊かな日本でも減少していく可能性が高くなっている。
② 懸念:将来、水不足のために水戦争が起こることが考えられる。
③ 取組:豊かな奥山の水源地が植林や開発によって荒らされている。そのため奥山の森林が大切だということを多くの人に知らせ、復元・保全を行なっていきたい。


4、5、10、11、16 (まなカフェ 古川 明美)

① 理由:格差社会がどんどん広がり生きづらさを抱えた人が増え続け、人が豊かに生きる豊かさが問われている。人は皆自分らしく生きる権利がある。その基本的人権が守られるために何より教育が大切だと思うから。
② 懸念:小さい頃から人と比較され評価され競争の中で生きている。遊びも機械を通すことが多く、人と関わり想像する力がどんどん弱くなってる。子ども達の本来持っている育つ力の芽を摘んでいる。
③ 取組:大人の学び場。みんなで一緒に学び、まなざしを育む「まなカフェ]を定期的に開催。様々なテーマで今課題と思うことを楽しく語り合っています。今後は子ども達の声を聞く場、共に学ぶ場(子どもの権利など)も作っていきたい。


3、4、5、10、11、12、13、14、15、16、17
  各務 亜紀(菌ちゃん野菜応援団 東海支部 )

① 理由:自分の生活に直にかかわってくるものだと思うからです。本当は全部選んでもいいと思うけど、身近なことでやれることを、と思ったときに関われる観点で。
② 懸念:気候変動がどんどん進んでいるのに、それに気づいていない人、もしくは気づかないふりをしている人が多すぎる。人とのパートナーシップより自分のほうを優先する人が多すぎる。
③ 取組:持続可能な社会のために、循環型農業の発信、心と身体に優しい料理やおやつの発信、人とコミュニケーションをとっていくための具体的な視点の発信、医療費削減に向けての各方面からのアプローチの方法の発信、など。


8、9、10、11  塩見直紀(半農半X研究所/京都・綾部)

① 理由:20年ほど前、「使命多様性」ということばが私のなかに生まれました。みんな多様なミッション(生きがい、ライフワーク、特技、大好きなこと)を持っています。それを活かし合う世界になることを願っています。
② 懸念:日本にも、世界にもビジョンがないということ。
③ 取組:半農半Xコンセプトの発展形として、「1人1研究所社会」というビジョンを描いています。幼稚園のこどもから長老の方まで、自分のテーマ、大好きなこと、ライフワークをみんなが生涯探究していくイメージです。研究成果を独占せず、共有し合う世にしたい!


17   加藤美希(トンガからこんにちは!)

①理由:トンガで暮らしてみて、他国に頼って生きていくこともいいかもしれないなと思うようになったから。他国とより良い関係を結ぶことで、自国の問題も改善したり、強化したりする方法を探って行きたいと思うようになった。
② 懸念:コロナによって、国際情勢はどうなっていくのか。グローバル化が進みすぎて、すでに様々な国が他の国無くしては立ち行かなくなっているのに、ここまで「コロナ」に注力していいのだろうか?と思う。
③ 取組:トンガの暮らしから、先進国である私たちが学び取りたいなと思うことをまとめた絵本を製作中


10. 伊藤佐代子(ボーダーレス社会をめざして )

① 理由:障がい福祉の仕事に携わっており、常日頃感じているから。
② 懸念:障がいのある人は、何もできないのではないかと思われている。そうではない。得意な分野、苦手な分野があり、能力を見極めてもらえれば十分な戦力になる。ちょっとの手助けで一般の人と何も変わらない仕事ができる人が多くいる。障がい者を知らないという事が、まず差別を生む。同じ病名でも一人一人症状は違う。障がいのある人をひとりの人として知って欲しい。
③ 取組:・障がいのある人たちで団体を作り活動をしているが、このコロナ禍で活動は休止。・障がいのある人の書道教室を開き、展覧会を通じて魅力ある作品を発表している。障がいとは何か問いかけている。


4、5   中村 暁子 (性教育団体 ここいく)

① 理由:私たちは学校教育で性の正しい知識を教えるべきだと考えているが、今の現状はそれができていないと考えるから。性の多様性やジェンダー平等についても学ぶ機会が少ない。子ども達の知る権利、学ぶ権利が守られていない。
② 懸念:子ども達が性に関心を持つのは当たり前のことだが、学校でも家庭でも教えられないとなると、子ども達はSNSの情報から学んでしまうことが多い。自分の体と心、相手の体と心を守ることができない。被害者にも加害者にもなってしまう可能性がある。
③ 取組:子ども達に正しい知識と、人権教育をベースにした包括的性教育を伝える活動を行なっている。性教育には壁があり、「教えなくて良い」という考えも根強くあるので、そう思っている人たちへ、性教育の必要性も伝えていかなければいけないと思っています。


3、6、11、15   井澤 宏明(夢か悪夢かリニアが通る!)

① 理由:新型コロナ感染拡大の中、「移動」について考える機会が増えました。これまでは人やモノを「速く」「大量に」運べることが良いと思われてきましたが、その行きつく先が瞬く間のコロナの世界的な流行でした。速さを追い求めた一つの形がリニア中央新幹線です。「速さ」や「便利さ」と引き換えに犠牲にされるものを挙げました。
②懸念:最近、「無人駅」が全国の約5割に及んでいるという報道がありました。駅のホームから視覚障害者が転落し電車にはねられ亡くなる事故も相次いでいます。名鉄犬山線の快速特急に乗っていると、乗客の待つ駅を高速で通過し、ヒヤッとすることがあります。「速さ」や「便利さ」と引き換えに、「安全」が軽んじられていないでしょうか。
③取組:東京都調布市の住宅街で10月、陥没事故が起きました。地下では「東京外郭環状道路」のトンネルを掘っており、危険性が指摘されていました。同じことがリニア工事でも起こる可能性があります。どちらも「大深度地下法」により住民の同意を得ず深い地下を使うことができます。JR東海は「騒音・振動の影響はほとんどない」と説明していますが、そこに嘘はないのか、報じていきたいです。


1、2、3 ( カイロプラティック よつは 三戸)

① 理由:健康という土台があってこそ仕事ができる。収入を上げていくことで、貧困や飢餓をなくすことにつながっていくと思われるから。
② 懸念:生活習慣の悪化を放置せず、自分の体の不調に気づき、予防と健康維持に努めること。
③ 取組:体の土台となる、骨盤の歪みを整えて、自分が持つ自己治癒力を上げることで、病気の回復を目指してもらいます。その上で、自分で体のことを勉強してもらうことで、家族や周りの人を健康の向上を助けることができるようになりたい。


1、8、11    (大堀研磨工業所 ひこうきやさい 大堀恵三)

① 理由:1・年配者や 障がい者、病気の人でも働く環境をつくることで、貧困をなくしたい。8・いつもこの製品は、社会にどのように役立っているかを常に意識し、それを知ることで、働きがいとなり、心も豊かになり、品質・効率も良くなり、経済も成長します。11・仕事がなければ暮らせません。地元に根付いた企業でいることが必要です。
② 懸念:経済が、安さを追い求めることが懸念事項で、地産地消や社会への取り組みが価値になる必要があります。
③ 取組:本業とは別に、やさい工場を立ち上げ、メンバーに本業定年後の年配者や病気・障がい者の働き口をつくり、貧困、働きがいや住み続けられるまちづくりに貢献します。


5、17    (みんなのいえ 中村 暁子)

① 理由:男だから女だからという括りで人を見たり、その役割に縛られていることに疑問を感じている。夫婦間や家庭、職場などでも、柔軟に対等な関係で話し合いができれば、子育て、家事や仕事に対する考え方やあり方などが変化し、全ての人が自分らしく生きられる社会になると思うから。
② 懸念:男女の括りに限らず、○○であるべき、○○しなければのような、社会や家庭の中で決められていると思うルール?縛りのような思い込みがあることで、子育て、家事や仕事などの労働を辛く苦しいものと感じる人が多い気がする。
③ 取組:お母さんと子どもたちが集う居場所を毎月3回開催。そこで出会う親子と関わる中で、子育てや夫婦の関係性や仕事などの話題になれば、ジェンダー平等やパートナーシップについて、自分の考えや思いを伝えたり、オススメの本や講座などを紹介するように心がけている。


10、16  (ラボ・パーティ 荒川 明美)

① 理由:ことばは通じなくてもこころは通じ合えるという経験を通して、どんな人も人として尊重されることや、国と国に優劣はなくお互いを認め合って、人を平等に大切にすることに関心があります。
② 懸念:分断や対立は、相手のことをよく知らないことから起こることがよくあると思います。
③ 取組:さまざまな年代の子どもたちが一緒に活動することで、異なる見方や考え方に触れる機会を増やしています。自分も、自分以外の人も大切にし、ともによりよい社会を作り上げていきたいという気持ちを育てることが、平和で幸福に満ちた世界を作ると信じて。


vol.199 SDGs 主語はわたし。

 今回の特集で、サスティナブル(Sustainable・持続可能な)ということばから、どうしたら「自分ごと!」になるのか思いをめぐらせ考えてきました。調べると ① 持続[継続]可能な ② 環境を壊さず利用可能な ③ 〔資源など〕枯渇させず利用可能な…
このようなことばが並びます。でも、なんか持続可能ということばがしっくりこない。さらに調べを進めると、「サスティナブルの和訳!これこそ自分ごとと捉えられるアプローチだ」と思えるある方のコメントにたどり着きました。サスティナビリティ学の専門家、工藤尚悟氏です。(東京大学大学院新領域創成科学研究科サステイナビリティ学教育プログラム)さっそくコンタクトを取りました。その工藤さんからコメントをいただきました。

主語はわたし。

 「私たちが将来にわたって持続していきたいコトを考え、それを守ったり新しく創ったりすること」
 サステイナビリティとは、今まで私たちの社会のなかで大事にされてきたことをまもりながら、これから新しく私たちの社会のなかで大切にされて欲しいことをきちんと大切にできるような仕組みをつくり、更にそのような考え方を次世代につなげる、という概念であると言える思います。
 ここから、サステイナビリティの新しい和訳を考えると、それは「まもる・つくる・つなげる」がいいのではないでしょうか。

 まもるは、守るであり、護るです。
 大切なものを守り保全しながら、外から害を受けないようにかばい保護することです。

 つくるは、作るであり、創るです。
 物理的なものや仕組みを作ることであり、アイデアや価値を創ることです。

 つなげるは、繋げるであり、継承(継いで承る)です。 人々が繋がり「私たち」という主語を持つことであり、世代を超えたつながり・継いで承ることです。

 これまで「持続可能な開発」と言われてきたものも、今日からは「まもる・つくる・つなげる開発」や「まもってつくってつなげる開発」とかいう表現にしていきたいなと思っています。
 こうしておくと「何をまもり、何をつくり、何をつなげていくのか」について、「誰がやるのか」を考えやすくなり、そこには主語が発生します。 それは「私」でもいいでしょうし、「あなた」でもいいと思いますし、または「私たち」で考えてみてもいいと思うのです。


工藤 尚悟(くどう しょうご)
地域のサステイナビリティに取り組む研究者。日本とアフリカを行き来しながら、お互いの地域の風土から学び合うトランスローカル論の構築に取り組んでいる。


vol.199 SDGsを知ることができるオススメムービー

『地球が壊れる前に』
監督/フィッシャー・スティーヴンス 公開年/2016年 製作国/アメリカ 時間/95分 デジタル配信中(20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン)

俳優・環境活動家のレオナルド・ディカプリオが国連平和大使として世界をまわり、厳しい現状を視察。人々と対話する中で気候変動の今までとこれからを見つめる様子を追ったドキュメンタリー。オバマ大統領(当時)やローマ法王との対談も収録されている。


『コスタリカの奇跡
~積極的平和国家のつくり方~』
監督/マシュー・エディー、マイケル・ドレリング 公開年/2016年 製作国/アメリカ・コスタリカ 時間/90分 DVD 4000円+税(ユナイテッドピープル)

「積極的平和主義」を貫く、軍隊を持たない国、コスタリカ。しかも、世界で初めて「化石燃料ゼロ社会」を実現すると宣言した国でもある。1948年に軍隊を廃止し、軍事予算をゼロにする代わりに無料の教育・医療を実現し、環境保護に力を入れてきたコスタリカ。その奇跡はどのようにして起こったのか。元・大統領やジャーナリスト、学者へのインタビューでその過程に迫るドキュメンタリー。


『フード・インク』
監督/ロバート・ケナー 公開年/2008年 製作国/アメリカ時間/94分 DVDレンタル中(アンプラグド)

安くておいしい食べ物に潜む秘密を暴く、フード・ドキュメンタリー。モノのように大量生産される牛・豚・鶏、野菜より安いハンバーガー、遺伝子組み換え食品……。私たちにできることは?利益優先の裏で軽視されている健康面の配慮、そしてつくり手側に問われるのは命への尊厳です。製作国アメリカでは予想を超える大ヒットを記録し、大きな話題となった。


『いただきます』
監督/オオタヴィン 公開年/2016年 製作国/日本 時間/75分 詳細 http://itadakimasu-miso.jp(イーハトーヴスタジオ)


おいしそうに食べる子どもたちのキラキラした笑顔。健康食として世界でも注目されている和食の力を証明するかのように、本当に生き生きとした子どもたちに元気をもらえます。「私たちは日々何を食べることが幸せなのだろう?」「子どもたちにどんな食を残していくべきだろう?」という問いについて、改めて考えさせられた映画です。
 福岡県福岡市にある高取保育園で、味噌汁や納豆、玄米の給食を食べ、素足で園庭を走りまわる元気いっぱいの子どもたちの日々に寄り添ったドキュメンタリー。


『ALWAYS三丁目の夕日』

監督/山崎貴 公開年/2005年 製作国/日本 時間/133分 DVD 3800円+税(発売元:小学館、販売元:バップ)

 生活レベルは腹八分目くらい、生活に必要なものがどのように手に入るかが日々の体感で理解できる。助け合わなければ生きていけなかった大変な時代だけれど、家屋のデザインから生活習慣まで、日本という気候風土にあった「生きている!」と実感できる暮らし。この先、私たちが大切にしなければならない価値観は何か。そんな視点で観るのもおもしろいと思います。


『バベルの学校』
監督/ジュリー・ベルトゥチェリ 公開年/2013年 製作国/フランス 時間/89分 DVD 4000円+税(ユナイテッドピープル)


20の国からフランスの中学校の適応クラスにきた24名の生徒たち。このクラスでフランス語などの通常の授業を受け、通常クラスに行く準備をする彼らが、先生と共に葛藤を乗り越え、絆をつくっていく様子を追う。最後には、温かな涙が待っている。


『ソニータ』
監督/ロクサレ・ガエム・マガミ 公開年/2015年 製作国/スイス・ドイツ・イラン 時間/91分DVD 4000円+税(ユナイテッドピープル)

ラッパーを夢みるソニータは、アフガニスタンのタリバンから逃れ、イランで暮らす難民だ。しかし両親は慣習にのっとり、会ったこともない男性との結婚を迫る。ソニータの出した結論は? 歌うことで人生を切り開くソニータを見つめる、魂に響くドキュメンタリー。


vol.199 しょうがいをみつめる vol.10

ティーム・ティーチング

 特別支援学校ではティーム・ティーチング(以下、TTと略)と呼ばれる指導形態をとっていることがほとんどです。TTとは複数の教員が役割を分担し、協力し合いながら指導する方式のことで、今回はある年に担任したAくんと、関わった先生方の姿から、TTを考えてみたいと思います。

 Aくんは前年度、同じクラスだったBくんの嫌がることを繰り返し言ってトラブルを起こしていました。自閉スペクトラム症のAくんにとって、相手の立場に立って考えたり行動したりすることは苦手です。ADHD傾向もあり、その特徴の一つでもある衝動性も加わって、ダメだと分かっていても言ってしまうことが止められないのだと推測されました。Aくん自身も叱られることが増え、お互いに辛い思いを抱えていました。
 そんな二人ですが、実はアニメやゲームが好きという共通点もありました。子ども達の心を掴むのが上手なC先生は、二人の好きなアニメのキャラクターを描いたり、ゲームの話をしたりしていつも一緒に遊んでいました。どちらかと遊んでいると、関心のあることですから、もう一人も自然と近寄ってきます。そうしてC先生を介して二人が関わる姿が徐々に増えてきました。好きなことをして夢中で遊んでいるので、Aくんの嫌なことを言う姿はそこにはありません。今では二人だけで遊ぶ姿も見られるようになりました。

 Aくんはまた、さまざまなことに強いこだわりをもっています。例えば時間。授業が始まった途端、いつ終わるのかが気になって、そのことで頭がいっぱいになってしまいます。D先生は経験豊富なベテランです。「何時何分に終わる?」と繰り返し聞くAくんに、「終わった時に終わるよ」と、優しくも淡々と答えます。白黒はっきりさせなきゃ気が済まないAくんに、敢えてグレーで返し続けるD先生。Aくんならばその曖昧さを受け入れられるようになると踏んでの支援です。

 ほかに、勝ち負けや順番にもこだわります。図工で作品を作ると「誰のが一番だった?」と聞くし、「なんで僕を一番に当ててくれないの」と怒ります。生活のあらゆることを競ってしまうAくんですので、体育や遊びなどで勝敗がつくことは大の苦手。かけっこで何度やっても勝てない時には、「自分は足が遅い、どうせ勝てないんだ」とパニックに。そんなAくんにE先生は言います。「負けて悔しい気持ちになるのはみんな同じ。それを次、頑張る気持ちに繋げることが大事だよ」。スポーツをずっと続けてきたE先生らしい言葉です。
 E先生が言い続けてきたこのメッセージはAくんの中で魔法の言葉となり、悔しいことがあると、自分で唱え、たかぶってしまう気持ちを落ち着かせようとする姿が見られるようになりました。ある時には、同じように前に進めず泣く友達に対して、この魔法の言葉をかけてあげるという出来事もありました。

 TTを効果的に機能させるにはそれなりに大変なことも多いのですが、このように教員それぞれの個性を生かして幅のある対応ができるのが良いところでもあります。また複数の目で子どもを見ることで、子どもの良さをより多く見つけ、伸ばしていくこともできます。私自身、周りの先生方から学ぶことがたくさんあります。「TTを生かす」ことは、私たち教員の大事な力の一つです。   S.I


vol.199  niramekkoGallery「さかな」

まぁ君、今日も全力です。真っ白い紙にサインペンで描く。スラスラ、サラサラと淀みなく描く。しかも輪郭から描かない。口とか目のパーツから先に描く。それでちゃんとバランスが取れている。一度見たものは記憶に残り、あっという間にいろんな動物たちが揃い、まるで「さあ、これからみんなで記念撮影だよ」って感じの絵になったりする。たまには水彩で「さかな」を描いたりもする。それもあっという間に完成。どこで見たのか、空想なのか?!だとしたらまぁ君、快挙だ!これまでと違った作風に一同感嘆!


vol.199 人生これから!イエイ撮影会

11月18日(水)「いい遺影の日」えんぴつカフェでは“記念日”に撮影をしよう!」と勉強会を重ね、撮影会を開催しました。

ヘアメイクのミサさんに整えてもらい、フォトグラファーのちいほさんに褒められて、どの人もみるみる表情が輝いていきました。それぞれの個性を引き出してくれるちいほさんの言葉がけに反応する参加者に「すてき!」「うわぁ!」とみんなが楽しい声をあげ、素敵な空気が満ちた撮影会となりました。

※伊勢和紙:神宮御用紙奉製所(伊勢神宮のお神礼など全て伊勢和紙)三重県指定伝統工芸に指定されている。
大豊和紙工業株式会社
特徴:柔らかく温かみを感じる風合い。手に持った時、被写体や温度の感情が伝わる(ちいほ・談)

フォトグラファー:田中ちいほさん
ヘアメイク:鈴木 美沙さん(すずこ美容室)
場所:にらめっこフリースペース

参加者の感想

・ ワクワクしてとても楽しい時間でした。自分を引き出してもらえた感じがします。私ってきれいに撮ってもらうことって好きなんだと実感しました。ちいほさんにお褒めの言葉をいただいて自信が持てました。(Fu)
・ 最近コロナの影響で人と触れ合う事が少なかったので、メイクも撮影もしていただいて、人に触れ合う心地良さを久しぶりに感じました。また、自分を変えるチャンスもいただき、ありがとうございました。(Tsu)
・ ドキドキ感たっぷりのひとときでした。こんな風に撮影してもらったことがなかったので、自分が元気なうちに撮ってもらえて良かったです。(Ama)
・ ちいほさんに撮影してもらい、モデルになった気分でした。メイクも自分ではなかなかできないですが、人にやっていただくと気分が違いますね。演劇部にいた昔を思い出しました。(Hase)
・ ちいほさんに「いいよ〜、いいねぇ」などと言葉をかけてもらううちに、自然にモデルバージョンになって笑顔になれました。良い経験でした。(Ta)
・ 楽しく過ごさせてもらいました。写真を見てビックリ仰天でした。(ka)
・ ちいほさんに言われた通りのポーズや目線をとるのが難しかったです。自分じゃないような、不思議な感じでした。(Sa)
・ 今年70才になったので、今日は2度目の七五三かな。いい記念になりました。次は着物姿を撮ってもらおうかな。(Ha)
・ 楽しかった!初めての事ばかりでなんだか恥ずかしかったけど、メイクさんもちいほさんも、その人らしさを判断するのが早くてさすがと思いました。今、いろんなことにチャレンジしようと思っていて、今日も参加させてもらいました。(Hashi)
・ メイクをしてもらったのは自分の結婚式以来。私は天然パーマの髪がずっと欠点だと思っていましたが、メイクさんが髪のくせを活かしたヘアスタイルにしてくださり、みなさんに褒めていただいてすごく嬉しかったです。(Sato)
・ ちいほさんや他の参加者から「素敵」とか褒められて、テンションが上がりました。プリントしていただいた写真を密かに眺めてはにんまりしております。(Ko)


募集中!!

今号の「やってみた」コーナーはお休みします。
あなたの「やってみた」をご紹介させてください。掲載された方には人生これから!編集のライフデザインノート『ゼロの昇天』を進呈!


vol.199 えんぴつカフェ

2021年 1月21日(木)
時間:13:30〜15:30
場所:にらめっこフリースペース
参加費:500円(茶菓子つき)

 不要な物を手放して始末をしたい、そう思っても簡単には捨てにくいものって、ありませんか? 例えば、人形、ぬいぐるみ、印鑑、写真、写経の用紙…など。

 気になりつつ捨てられない時って、なんだか負のエネルギーも一緒に溜めてる?上手な手放し方を知っておきたいですね。
 次回のえんぴつ・カフェでは、専門の方のアドバイスをいただきながら、気になる「手放したいもの」について意見交換をします。

自分の人生の後始末…?ちょっと待てよ、人生は終わってないから、後始末じゃなくて、先始末と言うべきかも。いずれにしても、いろいろなものを先始末して、後世にその処分のために、大変なエネルギーの負担を押し付け迷惑をかけたくないですね。

し‐まつ【始末】物事の締めくくりをつけること。後片付けをすること。処理。

断捨離は人生の先始末!!ヨーガの行法である
・断行(だんぎょう)・捨行(しゃぎょう)・離行(りぎょう)不要な物を断ち、捨てることで、物への執着から離れ、
自身で作り出している重荷からの解放を図り、
身軽で快適な生活と人生を手に入れることが目的です。


えんぴつ・カフェとは・・・
毎月1回おしゃべりしながらライフデザインノート『ゼロの昇天』を書き込むために集うカフェです。お茶を飲みお 菓子をつまみながら、持ち寄った課題をみんなで考えます。話題は多岐にわたります。「人生これから!」を基本に、やがて迎えるであろう「そのとき」まで、 どう生きるかを念頭に置いて書き込んでいきます。ちっとも筆が進まない、というのが現状ですが、みんなの話を聞いて、回を重ねるごとに、少しづつイメージ が湧いてきます。そんなカフェです。

参加ご希望の方は、ご連絡ください
主催:NPO「人生これから!」
問い合わせ 090-5638-7044(田辺)・ 090-7854-4561(三上)





vol.199 熱中人 大明◎さん

反骨精神と向上心を胸に
   作品を生み出し続けるアーティスト

大明◎(ひろあきえん)さん(安城市在住)

 アーティストとして本格的に始動し14年目の今年、第1回安城市若手芸術家応援プログラム「大明◎展(ひろあきえんてん)」で7回目の個展を迎える。これは今までの集大成ともいえるもので、大明◎さんは準備に余念がない。
 「今回の個展では、僕の作品(玉石の明かり)と、6人のアーティストそれぞれの作品とのコラボレーションがメインです。これには大きな意味があって、作家同士って考え方が全然違うけど、一つの枠にあてはめることによって意見の違いだって一つの作品として完成させることができるよ、と」
 言い換えれば、意見の違いから始まる世界各地の戦争や紛争、対立も、多様な存在をそのままに尊重したら、平和な世界としてまとまることができるのでは、ということにもなる。
 時代の流れ、世の中の風潮に対して「それでいいのか?」と自分なりの視点を大切にするアーティストでありたい、それは「反骨精神」とも言えるもので、大明◎さんのどの作品にも表現されている。
 「なので、僕の作品はイメージ的で重く哲学的。観る人の想像力に任せて絵だけで説明できるのが本来なんだけど、本質的なものは伝わりにくいです。だからもう一歩踏み込んで作品を楽しみたい方のために、今度の個展では説明文を多めにします」

 3才頃から絵を描いていたという大明◎さんだが、深い思いを作品に生み出すアーティストとなった今は、絵を描く事がしんどいと言う。
 「しんどいけど絵を描く事を辞めないのは、作品をつくる意義、これはすごく大きい。作品をつくるからいろんな人に会えるし、話しもできる。自分の主張も伝えこともできるし、自分が存在している証明にもなるし、周りの人を楽しませるとか、作品をつくる意義はいっぱいあるじゃないですか。制作中ってたくさん考えるから、その時間はすごく大切だし。絵を描いているその瞬間は辛くしんどいけれど、それ以上にやる意義がある。それに、パートナーと知り合えたのも絵を描いていたからだし」と語る大明◎さんの表情が緩む。
 「それに、絵って描けば描く程うまくなる。自分の成長がわかるからもう辞められないですね。僕は向上心のかたまりというか、ひたすらどんどん良くして行こうという気持ちが強いので、そういう意味でももの作りが性格にあっているのかもしれないです。向上心が止まらないです」(笑)

 反骨精神を持ちながら、アートの世界の開拓者でありたい、という大明◎さんだが、開拓者の後に続くひとりでもあるという。
 「いろんな人たちがいろいろ変えてきたものを僕が受け継いでいるという部分もあるんです。誰かがすごくいい流れをつくっても、他の誰かがそれをがやらないと、止まっちゃうじゃないですか。それを続けていかなくちゃ、という気持ちはすごくあるんです」
 「あきらめないこと、かな。辞めないで続ける」
継ぎ足すように出された言葉に、アーティストであり続ける厳しさ、大明◎さんの覚悟が見えた。

大明◎・ひろあきえん
幼少期より漫画や兄の影響で絵を描き始める。
2006年よりエアブラシを、2013年より油絵を始める。また動画配信や、漫画形式のブログなど、web上での作品も多数制作。現在はそれらの混合技術を用いて、作品を制作・発信している


vol.199  夢か悪夢かリニアが通る!vol.28

リニア中央新幹線を建設しているのはJR東海ですが、全国新幹線鉄道整備法による国の認可を受けて事業を行っています。この認可の取り消しを求め沿線の住民ら781人が国を相手取って4年前に起こした「ストップ・リニア!訴訟」の中間判決が12月1日、東京地方裁判所で言い渡されました。古田孝夫裁判長(市原義孝裁判長が代読)は、原告の約7 割に当たる532人について、裁判を起こす資格のある「原告適格」を認めず訴えを却下、残りの249人の原告適格を認め、裁判は継続されることになりました。        井澤宏明・ジャーナリスト

ずさんアセスを追認

7割を「門前払い」

中間判決を受けて、「不当判決」の旗を掲げる原告弁護団ら(12月1日、東京地裁前で)

 原告らは「原告適格」として次のように主張していました。 ①乗客として安全な輸送の提供を受ける利益 ②南アルプスや自分の住む地域の自然環境を享受する利益や、自然環境の保全を求め、自然と触れ合う権利③ルート上や近辺にある土地、建物、借地、借家、立木トラストなどの権利 ④工事や開業後のリニアの走行による大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤沈下、日照阻害、交通混雑、高架橋や駅舎などの設置に起因する景観阻害による健康や生活環境への被害を受けない権利。
 中間判決は、 ①について「乗客になる可能性は潜在的、抽象的なもの」 ②について「主観的な評価によって左右される性質のもので、どのような侵害なら良好な自然環境が毀損されたといえるかを客観的に明らかにすることは困難」 ③について「直ちに利益に制限が加えられるものではなく、『土地収用』も必ず行われるものではない」――として原告適格を否定しました。
 一方、 ④については判断が分かれました。判決は工事や開業後のリニアの走行による大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤沈下、日照阻害などにより「健康や生活環境に著しい被害を受ける恐れがあると想定される地域に住んでいる」として、環境影響評価(環境アセス)の対象となった水源の水を飲料水、生活用水、農業用水として利用している地域など一定の範囲の住民249人の原告適格を認めました。

原告団長の川村さん(右奥)や弁護団が記者会見を開き、「なぜ原告を切り捨てるのか」と訴えた(12月1日、東京都内で)

 最も理不尽なのは、今も多くの置き場が決まっていない工事による残土についてです。判決は、JR東海が作成した環境影響評価書には残土運搬車両の運行経路や頻度が明らかにされておらず、国の認可でも運搬車両による騒音、振動、大気汚染が審査の対象になっていなかったとし、「被害を受ける恐れがあると想定される地域に住んでいるか否かを認定するための目安やその他の手がかりを欠いている」ことを理由に適格を認めなかったのです。原告側は裁判で、残土置き場や運搬の経路を明らかにしないまま行った環境影響評価の違法性を再三にわたって指摘し、それを認可した国を批判してきましたが、裁判所はこのようなJR東海や国のずさんなやり方を「追認」してしまいました。
 自身も原告適格を否定された原告団長の川村晃生・慶応義塾大学名誉教授は中間判決後の記者会見で「裁判はこれから証人申請をして立証していく段階。その中で、南アルプスがどういう被害を受けるか、乗客の安全性が守られているのか、原告として立証しようとしていた矢先に、そういう問題ではこの裁判は維持させないんだと裁判官から答えを突き付けられた。極めて不当な判決だ」と怒りを露わにしました。532人は控訴する予定です。

「命の水」巡り静岡でも

提訴のため静岡地裁に入る原告団(10月30日、静岡市内で)

 話は前後しますが、中間判決で東京地裁が被害の恐れを認めた「水」の問題を巡って静岡県の住民も立ち上がりました。 南アルプストンネル建設により大井川流域約62万人の「命の水」が減らされるのは生活を脅かす非常事態だとして10月30日、JR東海を相手取り静岡県内の工事(10・7キロ)差し止めを求める裁判を静岡地裁に起こしたのです。
 原告は、茶農家など大井川の利水者ら107人。提訴後の記者会見で原告の茶農家大石和央さん(65)(牧之原市)は「牧之原市はすべての水を大井川に頼っている。大茶園に欠かせない水を断固として守りたい」と話し、コメ農家櫻井和好さん(70)(島田市)は「水が枯れても、トンネルを掘った影響かどうか証明できない」と訴えました。





vol.199 ボーダーレス社会をめざして vol.58

NPO法人オープンハウスCAN 理事長 伊藤佐代子

書道への思い入れ

 私は障がいのある人と一緒に書道を行っています。現在の私の段位は師範です。長い間かかって取得した資格です。障がいのある人に対しても、一般の方に対してもしっかりした基礎がない事には教えることができません。書道の歴史、文房四宝と言われる「筆」「墨」「硯」「紙」についてそれなりに知っていることが必要だと思っています。筆は色々な種類の毛からできています。羊毛、馬、鼬などなど、これらが使われている筆をいろいろ使ってみて、書く時の感触を知っていなくてはいけません。この感触を知った上で、障がいのある人の筆力、書き方などを考慮し、展覧会の時には、より良い作品を作るため筆を選びます。また、紙も同様です。薄い・厚い和紙、滲む・滲まない紙などさまざまあります。運筆の速さを見て、どの和紙なら合うのか選びます。力が強い人は、紙が破れてしまいます。試行錯誤するのですが、紙もいろいろな種類のものを持っていることが必要になります。旅行に行き、紙屋さんがあるとついつい立ち寄って紙を買ってしまい、大きな包みを持って帰宅するというのは常でした。岐阜県は、幸いにも美濃市があり恵まれた環境にあります。展覧会がある・作品を作るとなると、まず美濃市に行ってそんなに高価ではないもので魅力的なものはないか探します。私がいくら良いと思っても、実際に書かれる人が購入されるので高価なものは用意できません。一般の方は、紙、筆が高価であることをご存知ないのが実情です。障がいのある人の書道教室と謳っている以上は、しっかりとした書を皆さんに見ていただきたい。そのためには労力は惜しみません。最近はお母様たちを巻き込んで、展覧会の展示などをどのようにするのか、知ってもらうため協力をお願いしています。また裏打ちと言って、和紙をピンとさせるために、アイロンで簡単にできる方法がありそれも伝えています。ご家族が子どものために展覧会が出来るように準備をしています。私がいなければ展覧会ができないのでは困ります。ご家族も書道に興味を持って頂き、自分たちである程度まで展覧会ができる力をつけてもらいたいと思っています。書道教室を行っている意義は、何か?自問自答している昨今です。
このコロナ禍の中、書道展を開催します。12月16日(水)~27日(日)JR岐阜駅隣ハートフルスクエアーG1階図書館前壁面(12月22日は閉館日)です。よろしかったらご覧ください。


vol.199 半農半X vol.40

いつか旅したいところリスト

 今年の1月末、佐賀県庁の方が講演に招いてくださいました。依頼内容は半農半Xについての話と、集落の魅力をAtoZでまとめる手法について。僕は半農半Xに関する講演で「47都道府県制覇」が小さな夢の1つです。佐賀の講演を無事終え、「未踏の県」は残り8県(青森、岩手、秋田、山形、長崎、熊本、鹿児島、沖縄)となりました。

 新型コロナウイルス第3波。旅もまたしばらく控えたほうがよさそうです。今夏、草刈りをしていたら、こんなひらめきがありました。「いつか行きたいところリスト」を作ったらいいかも、と。
 僕の場合は、何でもA~Zのキーワードで表をつくります。C=父母ヶ浜(香川)、N=投入堂(鳥取)という感じです。そういえば、O=尾瀬も、N=日光東照宮も行ったことがありません。F=富士山も!名前が同じなので南アルプスの塩見岳(3000M級)もいつか登りたい山です(つれあいからは禁止と言われていますが 笑)。
 みなさんは「いつか行きたいところ」はどこですか?いまは行けなくても、その日が来たら行きたいところを書いてみると、そのメモからいろいろ気づきがあります。自分の行きたいところはこういう傾向があるなとか。僕は未来の旅を「天職観光」と呼んでいます。人生のヒントを与えくれる場所、人、もの、風景を訪ねる旅です。そんな旅ができる日が早く来ますように。            (半農半X研究所・塩見直紀)


塩見直紀(しおみなおき)半農半X研究所代表
1965年、京都府綾部市生まれ。20年前から「半農半X(エックス=天職)」コンセプトを提唱。半農半X本は翻訳されて、台湾、中国、韓国にもひろがる。著書に『半農半Xという生き方 実践編』など。

※半農半Xとは・・・半農は環境問題、半Xは天職問題(どう生きるか)を背景と する。持続可能な農のある小さな暮らしをベースに、天与の才を社会に活かす生き方、暮らし方。ex.半農半漁、半農半大工、半農半看護師、半農半カフェ、 半農半絵描き、半農半歌手、半農半鍼灸師、半農半カメラマンなどなど。


vol.199 未来に続く暮しの学びPrt-40

アート・文化・福祉

 オーストラリアでは、州の境界がようやく開き始め行き来がスムースになりました。半年間、芸術鑑賞やコンサートに制限があったため、人々の反応は「芸術に飢えていた」という感じ。今回は2つのコンサートについてリポートします。

 1つ目は、ダウン症の生徒たちの、コンテンポラリーダンス。テーマは、o,How I dreamt of things Impossible. 不可能なことを、どうやって自分が夢見ることができるのか。
 私が心動かされたのは、ダンサーたちの自由な表現力と観客を引き込むダイナミックさ。表現することの楽しさ、喜び、などが伝わってきて、これぞライブならではの臨場感です。それぞれのソロパートでは、個性、色、雰囲気がとても美しく表現されとても感動しました。踊りを通して表現を共有しあう。なんて平和なコミュニケーションだろう!

 2つ目は、文章のない絵本に、ミニオーケストラがサウンドトラックをつけるというコンサート。
 モノクロで書かれた絵本に、音楽が色として加わり、お話の世界に観客を引き込んでいくという構成。絵の持つメッセージ性と雰囲気。ライブ演奏がその人物の感情を引き出し、風景に色付けをし、とても感覚的な体験でした。

 社会的に不安定でその不安を煽るようなニュースばかりのこのごろ。2つのコンサートをとおして感じたことは、アートは社会に中和をもたらすということ。かたよらずに穏やかであれ、と。気持ちが救われる体験となりました。

 芸術がなぜ私たちの暮らしに欠かせないのか。それは、私たち人間が作り出す「美」を全ての人が共有できるからだと思います。四季折々の自然が織りなすアートに触れて心が癒されるのと同じように、人が作りだすアートに触れることでも、私たちの心は十分ほぐれるのだと、改めて芸術のもつ力を深く認識する体験となりました!