vol.196 熱中人 岡田 千穂さん

その人の人生の節目に立ち会える
 一瞬を切り取る写真は、伝えるためのツールともなる

写真家 岡田 千穂(おかだ ちいほ)さん

基本「人」を撮るのが好き

 「私にとって写真は伝えるためのツールです。思っていることを人にうまく伝えられなくて…写真が代弁してくれたことはたくさんありました。自分の視点と考え方、想い、感情を通して写真になっています。」と語るちいほさんは、大学は人文学部でコミュニケーション学科を専攻だった。授業ではメディアリテラシーの講義が多かった。情報を読み解く、鵜呑みはしないとか。それを通じて自分が発信する力を身につけるという授業内容は興味深かかったが、自身はコミュニケーションに興味があった。写真を撮るのはセッションだというちいほさん。対話をしながら、その人の顔の表情や声、何気ないしぐさから、その人らしさを引き出すのが自分の役割だと。

 卒業してから三重県亀山市の写真館で働き始める。結婚式の写真を撮る仕事でいきなり現場に放り込まれた。さまざまな現場に通い撮影を学んでいった。ライブハウス、クラブ、フェスなどの撮影も多く、人の動きを追っかけたり、暗いところでも撮影した。映像とか照明とかのシチュエーションを整えたりもした。徹底した現場主義。その経験が今すごく活きているという。
 「写真は独学です。カメラは全てマニュアル設定。自分が大切にしていることは『臨場感』かな。ライブでは撮影しているのを気づかれないようこっそり撮っていましたね。ファインダーをのぞいていると、撮られてるって思われますし、そうすると緊張してしまいますから。今、この瞬間!ありのままを大事にしたいので。」
 相手が撮られているのが気持ちいいと思ってもらえるような雰囲気を作ってきた。基本的には、気づかれていない間に撮ることを心がけている。

 今、津市内で「10×10展」を開催している。10店舗に自分の写真を置いてもらう。一ヶ月ごとに写真を入れ替え、10ヶ月間続けるというプロジェクト。お金を介さないで、お店の商品や、三重の風景など、そのお店を醸し出す写真を撮っている。それはお店とのセッションとなり、そこに来る人を想像して撮る写真ともいえる。そこから来店された人とつながることができる。とても学びの多い企画だ。
 「津市内で展覧会をしている気分です。今はコロナの影響でお休みのお店もあり展示できないことはありますが、昔ながらのお店とか、年配のオーナーさんは何一つ変わらない。何があっても動じない。肝が座っているというか、お店はその方の人生の一部なんですね。」

たいようをおとづれた人を撮影しギャラリーに展示。

カメラとの楽しい時間

 さらに新しい試みも。愛知県春日井市の、たいようhuman connection naturalで、CPWの新しい写真展「『ポートレイト』/インスタレーション作品と撮影会」を5月6日にスタートした。たいようで出会った人の写真を撮影させてもらい、その場でプリント。ギャラリースペースにいっぱい飾って繋いでひとつにした。30日のクロージングにはインスタレーション作品は見事にたいようの形になった。(写真)
 「ポートレートの撮影は、その人の人生の節目、それまでの自分を封じ込めることもできる。そういう瞬間に携わることで、撮影者である自分が次のステップへ後押しをしている感じで、その方の内面に触れセッションしている感覚になります。」
 「ある時、『仕事を辞めて、今までの自分と違う自分になりたい、何も纏わないあるがままの自分を取ってほしい』という依頼がありました。写真を撮ることで、自分を客観的に見ること、見えること、自分って結構いいじゃんって思えること、コンプレックスとか、その人のエネルギーとか、気持ちいい、元気になれる…。そんな側面があるのが写真です。美しさも大切だけど、その人らしさが映り込むよう努力をしています。」と、当時を回想するちいほさんは、未来を見据えた表情になった。

今後は “ 写真でセッション”を世界で繰り広げたい。

 これからは本当にやりたいことだけをやろうと決めた。そのために独立した。
 セッションは対話。言葉ではなくても、写真というツールでコミュニケーションを取り続けるのが、ちいほ流写真なのだろう。


おかだ ちいほ
1989年生まれ。三重県出身。フォトグラファー。
写真活動10年目にして
写真ユニット「Chiiho photography&works」(CPW)を2019年より始動。
愛とエネルギーの伝わる人物写真を得意とする。





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