“すべてのものがある森”の中で、
一緒に育ちあう喜びをわかちあおう!
一般社団法人 こどもの庭 代表理事 園田 智子さん
子どもたちは森でいろんなものを遊びへとつなげていく。石や木の枝を拾い集めてコレクションにしたり、四角い石でスマホごっこをしたり、木に登り虫を捕まえる…。大好きな冬いちごの実を見つけた時には「あった〜!」と叫び、少ししかないその赤い実を宝物のようにしてみんなで分け合って食べる。寒い冬、日なたや友だちとつないだ手の温かさに「あったかいねぇ!」と喜び、夏には木陰や吹く風に「涼しい〜!」と思わず声をあげる。小さなことにも喜びを見つける。
「子どもたちを見ていると。何もないところから遊びを作りだすたくましさ、日常のささやかな事にも喜びを感じられる豊かな感性を持っているなあと感じます。そういう力がこれからの時代、幸せに生きて行くための力になる、森ではそういう力が培っていけるんじゃないかなって思います」と代表の園田さんは語る。
園田さんが初めて「森のようちえん」の存在を知ったのは美濃市の「森のようちえん だんごむし」のパンフレットを手にしたとき。その後にらめっこ156号の記事で多治見市にも森のようちえん(森のわらべ)があると知り、そこでお散歩会に体験参加。その時見た娘の姿が印象的だった。
「娘がまるでスイッチが入ったように、すごく活き活きし始めて。森の中で折り重なった落ち葉で滑り台して遊んでいる姿を見て、彼女の中の何かがパッと開いた感じがしたんです。もう“私の子育てこれだ!”って思いました。」(笑)
とはいえ、自宅のある八百津から多治見や美濃市は毎日通うには距離がある。じゃあ自分でやってみようと、2015年、長女が年少になるタイミングで「森のようちえん 自然育児 こどもの庭」を立ち上げた。基本方針は、「答えは子どもの中にある」、「子どもと大人は人として対等である」というもの。最初の園児は長女ひとり。だがその後口コミなどで少しずつ広がり、今では17人の子どもたちが「こどもの庭」の園児として過ごす。
「こどもの庭では、毎日朝の会、帰りの会でみんなが集まリます。ここで大事なことを伝えるからちゃんと聞いてね。ということを徹底しています。また子どもが自分の身を守れるようにと、大人がルールを設けることもあります」。
大事なことというのは森で安全に過ごすためのルール。まずは大人が見えるところで遊ぶというのは鉄則。ハチ、マムシに出会った時の対処法。草むらに入るのは大人が確認してから。服装は必ず長袖長ズボン、靴下と靴をはいて、首にはバンダナ、など。ポイズンリムーバーも、自分たちで使えるように教えている。夏の熱中症対策など、園舎がないだけにとにかく子どもたちの安全には細心の注意が必要となる。
屋外だけでなく、フィールド内にある建物で、にじみ絵や羊毛を使った手仕事などをして過ごす日も。年長さんに教わりながら自分の縄跳びの縄を編むのは年中さん。今、年長さんは小学校の準備のために、自分でベンガラ染めをした布で手提げバックを手縫い中。そして、3学期にはナイフを贈呈式でもらう。鉛筆を削ったり森の中の枝で箸を作ったり。「縫い物もナイフも、今年はまだ早いかな?とか、その年の子どもたちの様子を見て時期を決めます」子どもとしっかり向き合っているからこその判断だ。高くまで木に登り、縫い物をし、ナイフを使う年長の姿は、年下の子にとって憧れ。年上の子の姿を見て、ああなりたい!と大きくなって行くことへの希望や夢がそこにある。また、虫嫌いだったお母さんが、子どもが捕まえたカナヘビのエサにと、夢中で虫を捕まえるということは珍しくない。お母さんも知らず知らずにたくましくなっていく。子どもに求めるだけでなく、大人も楽しみながらいろんな世界が見られる、森にはそんな力があるようだ。
「将来的には、園舎というかお家を持ちたいです。里山保育というか、お年寄りや地域の方とも交流して、手仕事や農作業を一緒にやったり。まわりには自然や畑があって、お母さんも畑仕事をしたりしながら子どもを育てるというような、昔農村でやっていた子育てみたいなものがやれたらいいなって。自然と子育てと暮らし、というものが一体になっているような、そんな場所をめざしたいです」園田さんの想いは広がる。 (加茂郡八百津町在住)
森のようちえん 自然育児 こどもの庭
「こどもの庭」のフィールドは4つ。可児市(久々利・西可児)、美濃加茂市、御嵩町のうちのいずれかがその日のフィールドで、子どもたちと当番のお母さんたちとスタッフが一緒に森で過ごす。
ようちえん(3~6歳)週4日…定員20名ほどの少人数異年齢保育
親子の会(0~3歳)週1回…小さなお子さんとそのお母さんのための活動
E-mail yao2koniwa@gmail.com