vol.194 ぎむきょールーム ゲームのやりすぎは病気なの?

手放せない!やめられない‼
子どもの姿に「ゲーム障害」の不安がよぎったら

関 正樹(児童精神科医)×岡崎 勝(小学校教員)

「ゲーム障害」診断の基準は?

岡崎:子どもたちはゲームにかぎらずなんでも流行りものが好きですよね。相談でよくあるのは、不登校やひきこもりになってゲームばっかりやっているということ。
 ボクは「体が健康ならいいんじゃない?」というし、しばらく様子を見ていいと思うことがほとんどです。だけど、「ゲーム依存症」はキャッチーな言葉としてメディアにも流れてきているから煽られる部分はあると思います。
関:ネット依存、ゲーム依存については前からもいわれていましたが、2019年5月、WHO(世界保健機構)が作成する『ICD-11』という国際疾病分類で「ゲーム障害」が正式に認定されましたしね。この「ゲーム障害」、つまりみなさんが「ゲーム依存」と呼ぶものが、診断のガイドラインではどんな状態とされているかまずお話しします。
 「ゲーム障害」は、『ICD-11』で正式に収載されることに決まった診断名です。これは、行動の嗜癖といわれる状態のひとつであり、まず第一にゲームの「コントロール障害」があります。ゲームを始めるタイミングとか、終えるタイミングとか、時間のコントロールができなくなった状態になっている。なお、生活の中心がゲームになっていて、例えば対人関係上のトラブルなどが頻繁に起こってくる。それでもやめようとしない。こういう状態がわりと長い 期間(基準は12ヶ月間)続き、それが社会生活上の障害になる。つまり学校や会社に行けなくなったり、遅刻をしたりしてしまうということです。

「ハマる」というのがどういうことが考えてみると、その対象は周囲に認められやすいものからそうでないものまでいろいろあります。たとえば、大学教授が研究にハマって、それで収入を得て尊敬も得られている。囲碁や将棋にハマる人も賞賛されることがおおいかもしれません。しかし、ゲームにハマると、非常に冷ややかな視線を向けられることが多いかと思います。

専門家に相談する目安は?

岡崎:家族やまわりの大人が、ここまでは見守りましょうとか、ここからは治療が必要だとか、そういう線引きはできるものなのでしょうか。
関:難しい話ですね。家族とゲームのことがまったく話題にできないとかうるさいな、などといって本人が会話することを拒否しているとか、家庭内でひきこもるような状態になっているとしたら、家族が誰かに相談したいというニーズが出てくると思います。
岡崎:本人を精神科に連れていくのは難しい。本人が自覚していれば、助けを請うために専門家にある程度すがるのはひとつの過程としていいことだと思うけど。
関:家族が相談に行ったとしたら、それをオープンにして本人と話したりしてもらえると、そこに相談の意味があるように思います。

診断はみる医者によってちがう?

岡崎:ゲームにハマると、夜更かしになるとか生活のリズムが変わるから良くないと言われます。親の働き方や家庭の習慣もあるから、本人の努力ではどうにもならないこともある。
関:そのあたりは医者の主観によって、だいぶわかれると思います。
岡崎:発達障害でも、ほかの病気でもそうですが、医者によって診断が変わるというのは当然ありますね。
関:『ゲーム障害』に対するスタンスは医者によって違いますし、そのスタンスによって診断も変わってくるのではないか。かり作られて、その結果どういうデータが蓄積されていくかを見ていくことができることだと思います。

生活リズムの乱れが問題になるのは?

岡崎:一般的には学校で寝るのはまずいことだけど、本人にとってはそれが必要だから寝ているわけで、起こすのはまずいよねという意見もある。医学モデルと社会モデルの確執のようなものが教育の中ではすぐに出てしまうから、ボクが「早く起きろよ」というと、他の教員に「画一化していませんか?」みたいにいわれたりする。子どものゲーム依存のようなことは、体の心配もある一方、取り巻きの問題も大きいと思っています。
関:周りの大人がどんなふうに子どものゲームのことを考えているかによって、きりわけ方が変わってしまう。
岡崎:学校には、受験勉強で疲れて寝ている子もいるわけで、勉強だったら称賛される部分もある。すると、今「ゲーム依存」「ゲーム障害」と言われていることは、医学モデルの依存症とは随分距離があるかなと思います。

関:世の中ではゲームがまずいと思っている人の方が多数派だと思いますし、子ども目線でいえばゲームに対して肯定的な大人のほうが少ないと思います。バイオレンスなゲームが性格傾向として暴力的な人をつくるかという研究がクローズアップされたりしますが、最近はそれが否定される研究も出てきています。
岡崎:ゲームで乱暴になるなんてことはないですよ。暴力的になるのは、例えば人間関係がうまくいかないとか、ストレスやいら立ちがあるときで、それは逆にゲームをするとおちついたりもします。
関:そうですね。でも、うまくいかないと逆に怒りも出てきますが(苦笑)。

せき・まさき
1977年生まれ。児童精神科医として岐阜県の医療法人 仁誠会大湫病院児童精神医療センターに勤務。病院での臨床を重ねるかたわら、地域での子育て講座や各地での講演を行う。自身も子どもの頃からゲーム好きで、最近は「スプラクトーゥン2」にハマる。小3女児の父。休日は娘とゲームをすることや音楽活動にハマる。

おかざき・まさる
1952年生まれ。名古屋市公立小学校教員。<お・は>編集人。きょうだい誌<ち・お>編集協力人。「アーレの樹」理事。著書に『センセイは見た!「教育改革」の正体』(青土社)『子どもってワケわからん!』(批評社)他。ゲームは学生時代に「パックマン」にはまり、最近は孫の小2男児とWii Uを楽しむ。

ICD-11「ゲーム障害」の診断ガイドライン(草稿)
1-持続的または再発性のゲーム行動委パターン(インターネッ  トを介するオンラインまたはオフライン)で、以下のすべて  の特徴を示す。
 A:ゲームのコントロール障害(たとえば、開始、頻度、熱中度、  期間、終了、プレイ環境などにおいて)。
 B:他の日常生活の関心ごとや日々の活動よりゲームが先にく  るほどに、ゲームをますます優先。
 C:問題が起きているにもかかわらず、ゲームを継続または   さらにエスカレート(問題とはたとえば、反復する対人関係問題、仕事または学業上の問題、健康問題)。
2-ゲーム行動パターンは、持続的または挿話的かつ反  復的で、ある一定期間続く(たとえば、十二ヶ月)。
3-ゲーム行動パターンは、明らかな苦痛や個人、家族、社会、教育、職業やほかの重要な機能分野において著しい障害をひき起こしている。





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