ドキュメンタリー
ドラマや映画の面白さは、原作や脚本の良し悪しで決まります。視聴者は優れたストーリーに操られたいのですが、見る前にオチが分かるような貧弱な脚本は興ざめです。そこで、ドラマより面白いドキュメンタリー番組のオススメです。ドキュメントとは、元々記録や資料のことで、実際の記録による映画や番組はドキュメンタリーと呼ばれます。「事実は小説より奇なり」と言われるように、時に経験したことのない意外な現実、想定外の状況に直面します。例えば、トランプ氏が劇的な勝利を収めていったアメリカ大統領選挙の中継、東日本大震災での津波や原発事故の過酷な映像は、私たちに深い衝撃を与えました。オリンピック/パラリンピックでの息詰まる演技や、大自然に生きる動物の姿は、私たちを引きつけてやみません。ドキュメンタリーは予定調和的なオチのないドラマです。
こうしたドキュメンタリー番組には、NHKを除けばなかなかゴールデンタイム(19時~22時)ではお目にかかれません。しかし番組表の隅っこをみると、中京テレビでは日曜深夜25時(午前1時)30分から『NNNドキュメント』、CBCでは日曜23時から『情熱大陸』、同じく日曜25時55分から『伝える’16』、メ~テレはときどき『メ~テレ・ドキュメント』、東海テレビもたまに『ドキュメンタリー劇場』などの力作を放送しています。先日発表された今年度の、「放送文化基金賞」最優秀賞(放送文化基金)と「日本放送文化大賞」(民間放送連盟)は、東海テレビのドキュメンタリー「人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり」が受賞。高蔵寺ニュータウンを設計した津端修一さん夫妻の波乱の人生を描いたものです。また「放送文化基金賞」ラジオ部門最優秀賞は増えすぎた野生動物の駆除・殺処分を依頼された猟師たちの苦悩を追ったCBCの「贄の森(にえのもり)」でした。何気ないニュースの裏に潜んでいるものごとの真実や、人生の深い葛藤に迫るこれらの作品を見ると、思わず居住まいを正してしまいます。ところで、こんな面白い番組が、ほとんど深夜でしか放送されないのは何故でしょう?あまりスポンサーがつかないこと、私たちが見ようとしないので視聴率が低い、という悪循環です。これから年末は、芸術祭を狙ったドキュメンタリーの力作が出てくる季節です。あなたもちょっとハマッてみませんか?世の中捨てたモンじゃないなあ、と思えてくること請け合いです。
つだまさお・プロファイル
1943年金沢市生まれ。京都大学卒業後1966年~1995年NHK(福井・岐阜・名古屋・東京)で報道番組の制作・開発に従事する。その後東邦学園短大、立命館大学でメディアやジャーナリズムの在り方を教えたり、全国の市民メディアをつなぐ仕事に携わる。ぎふメディアコスモスの中から発信する市民による市民のための放送局「てにておラジオ」代表。